Mahler 交響曲第4番ト長調(キリル・コンドラシン/モスクワ・フィルハーモニー/ピサレンコ(ms))


BMG/MELODIYA BVCX-37008 Mahler

交響曲第4番ト長調

キリル・コンドラシン/モスクワ・フィルハーモニー/ガリーナ・ピサレンコ(ms)

1972年録音(終楽章ロシア語)1973年録音(終楽章ドイツ語)
BMG/MELODYIA BVCX-37008

 コンドラシンの露西亜時代のMahler 選集は現役のようだけれど、少々お高いですね。VENEZIAレーベルのは廃盤でしょうか。旧ソヴィエット時代の録音は一般によろしくないけれど、この第4番は残響豊かに骨太なオーケストラのサウンドを捉えていると思います。やや肌理が粗いが。ドイツ語による終楽章一年後の再録音は、音の印象が少々変わって軽くなっているのもご愛敬。Mahler 大好きなワタシでも、この作品だけは、ややつかみどころがなくて、それは全編緩叙楽章的穏健な作風だからでしょう。

 コンドラシンもMahler 普及の先駆者であって、第9番日本初演は彼だったんですね(CD化成っている/未聴)。第1楽章「中庸の速さで、速すぎずに(Bedachtig, nicht eilen)」〜鈴の響きも明快であって、全体としてオーケストラの響きがかなり強靱で明快。彼は所謂露西亜風爆演とは違う個性だと思うんだけれど、メリハリ付けたサウンドは”夢見るような・・・”的イメージとはかなり異なります。モスクワ・フィルの金管のアクのある太さというか、朗々と鳴り渡って洗練されない響きは、作品のイメージを一変させております。粗雑で乱暴なアンサンブルということではないけれど、曖昧さ皆無。各パートの主張がはっきりしております。とてもわかりやすい。

 第1楽章ラスト辺りでホルンが素晴らしいソロを取るじゃないですか、あれはかなりのスムースな技巧であります。第2楽章「落ち着いたテンポで、慌ただしくなく(In gemachlicher Bewegung, ohne Hast)」〜そうか、スケルツォ楽章だったんだ、ここ。ヴァイオリン・ソロ、ホルン(やたらと目立つ/協奏曲みたい)、そして木管、弦も堂々と自信と硬質なる色彩に充ちて押し出しが凄い。デリカシーないワケじゃないが、少なくとも”床しい抑制”とは無縁でしょう。陰影とか微細ニュアンス方面じゃない。4:40秒辺りのトランペットど迫力も衝撃的。クラリネットの切れ味も凄い。上手いオーケストラですよ。

 第3楽章「静かに、少しゆるやかに(Ruhevoll, poco adagio)」は静謐なる変奏曲であります。ほんまの緩叙楽章也。弦は充分に縦線が合って美しいんだけれど、ウィーン・フィルとかチェコ・フィル辺りを思い出せば、ずいぶんと”異なる美しさ”〜もっと強いというか、硬質の美というか。弱音に間違いないんだけれど、”弱い”印象はないんです。むしろ、濃厚そのもの。この楽章最終盤、勝利の大爆発が来るじゃないですか、これほどの大音量で炸裂したのは初体験じゃないか。

 終楽章「非常に心地よく(Sehr behaglich)」〜ピサレンコのロシア語は、声質だけではない硬質な印象をいっそう際立たせます。天国の楽しさを歌っているはずだけれど、「そんなに甘いもんやおまへんで」的厳しいお姉さんの歌。鈴がとても目立ちますね。アンサンブルは集中力とリズム感に優れ、コンドラシンの指示が徹底されております。木管がとても上手い。途中途中で入る切迫したラッシュでは金管が存在を主張します。

 ドイツ語版終楽章が収録されるのも配慮だけれど、響きが明るく軽快となります。録音会場が違うのかも。サウンドは洗練度を増しております。ピサレンコ姉さんも先ほどより、ずっと優しくて表情も柔和。やっぱオリジナルだな、言語(その響きニュアンス)も含めて音楽なんだ。わかりやすいMahler でした。

(2010年3月19日)


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written by wabisuke hayashi