Mahler 交響曲第4番ト長調
(ハルトムート・ヘンヒェン/オランダ・フィル)


BRILLIANT 99549ー5
Mahler

交響曲第4番ト長調
+「花の章」

アレクサンドラ・コーク(s)/ハルトムート・ヘンヒェン/オランダ・フィルハーモニー

BRILLIANT 99549ー5 1991年録音 11枚組4,290円で購入したウチの一枚

 再聴です。BERLLIANTの寄せ集め全集は、スリムな紙パックとなって再発売中。ワタシは2006/7/8年と多くのMahler (CD)を処分したが、これは棚中に生き残っておりました。なんせ得難いノイマン(ゲヴァントハウス)とか、ホーレンシュタインが含まれておりますし。  

素直で、透明。静謐。平明。オーケストラが思いの外、洗練されていて、ニュアンスも細かくて、アンサンブルに集中力
とは4年前のコメントであります。残響豊かな音質もあって、作品の素の姿を味わうには良いものでしょう。しかし、この作品表現は難しい。演奏者の素の実力がモロに出てしまって、自分なりの色で説得力を示すのは、けっこうたいへんだと思います。

 第1楽章はヘンヒェンなりに、うねりとか動きを作ろうとしているが、オーケストラの響きがやや薄かったり、線が細かったり、で、繊細とは思うんだけれど、強靱なメリハリと変化が足りない。音楽が弱い。第2楽章も素直過ぎて、さらさらと流れ去る美しき旋律達。洗練されているし、アンサンブルも上々だけれど、あまりに常識的で印象に残らない。悪魔のようなヴァイオリン・ソロ(死神)も大人し過ぎ。悪くない演奏と思うんだけれど、微妙なイライラ感があるんです。

 第3楽章は静謐なる天上サウンドの変奏曲だけれど、まさに”素直で、透明。静謐。平明”〜だけれど、弱い。弦も、控え目な木管も、技術的にどうの(破綻なし)ではなく、個性とか灰汁(あく)とか苦みが足りない。強烈なアクセントになるべき金管の突入も、同印象なんです。ちょっともどかしくも爆発が足りない。21分お付き合いすると少々厭きます。

 終楽章は軽妙であり、コークの声にもクセがなく、そしてニュアンスにも不足はない。けっしてヘロ演奏ではないが、”弱い”という印象から抜け出せません。色彩も足りない。全曲通して「隔靴掻痒」状態から抜け出せない感じ。この名曲の”神髄”から少々遠いですな。全集セットになってなかったら売り払っていたな、きっと。残響豊かな録音は極上です。

 「花の章」のフィル・アップは配慮されたものだと思います。トランペットによる牧歌的な旋律は、爽やかな高原を吹き抜ける涼風のよう。交響曲第1番ニ長調に共通する、青春の息吹を感じさせる名曲です。あまり耳にする機会が少ないから、演奏云々するほどのこともないでしょう。”素直で、透明。静謐。平明”〜でも、まず作品を拝聴することが肝要ですから。

(2008年8月22日)
 

 BRILLIANT記念碑的寄せ集め廉価Mahler 全集中の一枚。Capriccio原盤。これもなかなかの優秀録音です。第4番って、難しい作品だと思います。つまり、これをおもしろく聴かせよう、個性的に味付けしようとして成功する確率が低い、ということか。せいぜいメンゲルベルクくらいかな?とことんいじくって決まっているのは。

 じゃ、もう「無為」系で、というのも一理あって、ワタシ、この曲最初に聴いたのがハイティンク/コンセルトヘボウ盤(1970年)でした。次がクーベリックでしょ?ああ、こういうのも悪くないな、と。牧歌的で、第2楽章はちょっと不安げで、第3楽章の静謐なる安らぎ、終楽章の天上の声・ソプラノ・・・

 で、ヘンヒェンさんは?ああ、コレもずいぶん優秀録音だ。素直で、透明。静謐。平明。オーケストラが思いの外、洗練されていて、ニュアンスも細かくて、アンサンブルに集中力もあります。ああ、第4番ってこんな曲だったな、ちょっと切ない深夜に一人、傷心を抱えながら、息を潜めて聴くべき音楽。ココロのなかの澱(おり)が、ゆっくりと雲散していくような・・・

 正直、ホルン(をはじめとする金管)の音色には少々不満を感じるのは、先のコンセルトヘボウとか、バイエルン放響の印象が残っているからでしょう(贅沢な!)。コンマスの怪しげソロの外しかたも、大胆さが足りないか。でも、木管やら弦のスッキリとした響きに不満などないんです。やや全体に線が細くても、この作品だったら不満は少ない。

 第3楽章の寂しげで、静謐なる味わいもしみじみ上出来。大音量で響きが濁らないのもありがたい。アレクサンドラ・コークのソプラノ(この人、ARTE-NOVAでの「エリア」〜カンプルラン盤に出ている)も、静かに静かに全曲を締め括るにに相応しい、伸びやかでしっとりとした味わい有。これで良いんじゃない、と。特異なる個性など必要なし・・・

 「花の章」は、交響曲第1番の原典版のお余りだったはず。トランペットの柔らかな旋律が魅力的な、忘れ去られるにはもったいない名曲。(2004年3月17日)

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written by wabisuke hayashi