Mahler 交響曲第1番ニ長調(アントン・ナヌート/リュブリャナ交響楽団)


Mahler

交響曲第1番ニ長調「巨人」

ナヌート/リュブリャナ交響楽団(放響のことか?)

GMS 500073  1980年代の録音?  2枚組1,600円で購入したうちの一枚

 2002年再聴です。ここ数年、ワタシの演奏嗜好はまったく変化してしまって、わずか4年ほど前の自分のコメントを読むに耐えません。モウレツな「熱狂的入れ込み系」(誰の演奏とは言わんが)も、「圧倒的物量系」(これも誰のとは言わんけど)もダメで、「天然素朴ナチュラル派」に宗旨替え〜これは、ワタシの加齢によるものでしょうか。

 ま、結論的に言えばクーベリック/バイエルン放響(スタジオ録音)とか、ハイティンク/コンセルトヘボウの1990年前後、そしてノイマン/チェコ・フィル(旧録音)辺りになっちゃうんですよね。ナヌート/リュブリャナ(旧ライバッハ〜Mahler 縁の地ですよね)の全集は数年前徳島で見かけたが、買う勇気が出ませんでした。(価格は安かった〜6,000円?)

 「金管あたりのヘタクソさがやや気になり」「安全運転ぎみで変化に乏しいのが弱点」「工夫もやや足りない」〜なんたる言い草!誰だ!こんな乱暴なこと言ったやつは、出てこい>って、ワタシ。「アンサンブルもまとも、暖かい音色」「オーケストラの音色も地味目」→これを(岡山県児島在住の)体操服屋の若旦那は「濡れたようなオーケストラの音色が個性的」と評価しましたね。人格の奥深さが評論に出ている。

 いえ、前日まで「ナヌートは怪しすぎて、とても買えません」なんて、ほざいていたんですけどね。(ワタシの説得に負けて購入)これ、まずオーケストラの響きが草原の香りがするような、素朴な味わい。しかも朝露に濡れて瑞々しい。バイエルン/コンセルヘボウ辺りの名人芸オーケストラとは違うけれど、虚飾ない表現の中からジンワリと「青春の痛み」が漂うところは魅力充分。

 「工夫もやや足りない」〜嗚呼、馬鹿野郎!(>ワタシ)主張は明確であるに越したことはないが、人生大切なのは素材と隠し味ですよ。「足りない」んじゃなくて、わざと抑制するのが大人でしょ。モウレツに惚れた女性を追いかけ回したらストーカーだけれど、胸に秘めたる思いで彼女の幸せを祈る〜これが中年おじさんの美学(ツラいところ)。

 第1楽章は、少々たどたどしいというか、流麗でないのがヨロシ。フルートのちょっと湿っぽい音色を始めとして、飾りと色気の少ない木管には、奥行きが感じられます。気負いとか、威圧とは縁が薄くて、金管にも刺激はないんです。もの凄く上手い、ことはないがこれぞ味わい系。第2楽章も、田舎の楽しげな祭りをイメージさせて喜ばしい。

 第3楽章も相変わらずで、刺激と変化を求める若者には物足りない表現かも知れません。この葬列は思い入れが少なくて、淡々としていて、細部のニュアンス勝負。中間部の弦と木管の絡みなんか、絶品と思うんですけどね。

 「金管あたりのヘタクソさ」って、きっと終楽章のことでしょうね、当時のワタシの説は。でも、この楽章はあまりスッパリ(巧みに)演奏しちゃうと、軽薄になるんですよ。いま聴けば「ヘタクソ」とは思わないし、しっかりユルリ目のテンポで、旋律の美しさを確認するような金管であることが理解できました。

 Mahler の交響曲は「オーケストラの機能性」に目が行くことが多いけれど、正直、お気に入りのハイティンクにしてもベルリン・フィルとの一番新しい録音にはガッカリしたものです。「上手いだけ」では音楽にならない。(2002年7月26日)


4年前のコメント〜嗚呼、ハズカしい)

 一時「ナヌート」は廉価盤、怪しげ激安輸入盤に大量の録音を供給しておりました。どのレーベルか忘れましたが(VOX系のストラディヴァリウス?)国内盤も数枚出ていたはずです。そこから類推すると、「リュブリャナ響」は「リュブリャナ放響」のはず。でも、もしかしたらベルリンみたいに「交響楽団」も「放送交響楽団」も存在して、ナヌートはその両方の指揮をしている・・・・のかもしれない。

 録音は、しっとりとしたバランスのとれたもの。オーケストラは金管あたりのヘタクソさがやや気になりますが、この類の廉価盤にありがちな「薄くヒステリックな響き」ではありません。全体としてアンサンブルもまとも、暖かい音色で、けっこう「聴ける」演奏に仕上がっています。わるくありません。ま、マーラー縁の地のオーケストラとしての入れ込みもあるのかも。

 少々安全運転ぎみで変化に乏しいのが弱点か。マーラーの旋律って一種エキセントリックな魅力があるじゃないですか。ナヌートは、どこもかしこも素直で、というか工夫もやや足りない感じ。オーケストラの音色も地味目。

 爽快な「爆発」もない。スケールが小さめで、盛り上がりはいまひとつ、というかMahler 特有の狂気を感じさせない・・・・・といいつつ、ホルヴァートの「復活」とは必ずいっしょに聴きます。

 音も良いし、素直な演奏なので、はじめてこの曲を聴く人や、子どもにもお勧めできます。ナヌートには全集もあります。(5,000円で見かけた)メール情報によると、PILZの激安2枚組の「ペトローショフ/フィルハモニック・シンフォニー・オーケストラ」と同一音源だそうです。(但し、左右逆収録の問題盤)

(1998年)


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