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オトナ買いの功罪


フルトヴェングラーもクナッパーツブッシュも、カルロス・クライバーも好きですよ。カラヤンにも興味があるし、ムラヴィンスキーだって悪くない。アシュケナージもバレンボイムも、佐渡裕だって、ティーレマンの新録音だって、CDや演奏会の価格がリーズナブルであれば、楽しむことは吝(やぶさ)かではない。ピアニストでも、チェリストでもこだわりはない、なんでも良いんです。演奏の質に好き嫌いはあるけど、好みは変遷するし、「至高の名演奏」を探す趣味はない。

世評も全然気にならない、というより、そんなもの時代の変遷でどんどん変わっているじゃないですか。ワタシはローティーンの頃から「レコード芸術」(評論雑誌)を愛読していたけれど、結論的に「音楽論評に絶対真理など存在しないのだ」ということを学んだに過ぎません。ワタシがこども時代の1970年頃、LPレコードは2,000円の贅沢品で、1,000円の廉価盤しか買えず、それは知名度的には低かったが存分に楽しい演奏だった。

・・・やがてワタシは、音楽を楽しむため厳格なる廉価盤原理主義者(ビンボー症ともいう)として成長した、ということは千度サイト上に書きました。喜びも悲しみも幾年月〜インターネット時代となった21世紀、LPの次世代媒体であるCDは信じられない価格崩壊を引き起こして市場に流出しております。閑話休題(それはさておき)。


YBOX10CD5(10枚組税込3,460円) フツウのお給料をいただける中年サラリーマンになったので、少年時代の夢であった音源を、湯水のごとく購入するようになりました。「オトナ買い」という罰当たり行為ですな。YedangClassicsという韓国のレーベルが、米PIPELINE社を原盤にロシアの放送用音源を格安でCD化して下さいました。そのひとつ YBOX10CD5(10枚組税込3,460円)2004年12月13日に岡山タワーレコードで購入、とレシートが残っております。新品CDが@350でっせ。恐ろしい時代だ。

もちろん、Mahler 交響曲第5番 嬰ハ短調(1973年)/Bruckner 交響曲第8番ハ短調〜ロジェストヴェンスキーの演奏にも興味ありますよ。オイストラフ指揮ヴィシネフスカヤ(s)のMahler 交響曲第4番ト長調(1967年)は聴いたことがあるが、意外とフツウの演奏だった記憶もある・・・でも、注目した一枚はもっと別な音源でした。

「ヴィクトール・ピカイゼン」 「ヴィクトール・ピカイゼン」(昨年2004年に来日したばかりのヴァイオリニスト)と題した一枚(YCC-0068)でして、必ずしも題名と内容が一致しないのがこのシリーズの特徴なんです。

Sarasate カルメン幻想曲 作品25(1972年)
WIENIAWSKY モスクワの思い出 作品6(1988年)
この2曲のみ22分ほどピカイゼンの演奏。その前に
Brahms ハンガリー舞曲(12曲)〜キタエンコ/モスクワ・フィル(1982年)
という、まったく関連のない音源を含みます。だいたい「ピカイゼン」なんて名前しか知らなかったし、ましてや中途半端収録の「ハンガリー舞曲」に興味ありません。キタエンコにもご縁が少ない。

「オトナ買い」をしなければ絶対に出会えない、おそらくは自分の積極的な意思では、一生入手しないであろう一枚ですな。出会いでしょう。運命か。これがじつは凄い名演!・・・かどうかはわかりません。まだ、開封していないんです。もしかして、聴くに耐えない音質である可能性もないではない。これから聴きましょう、虚心に。そういった一枚にこそ興味が出ちゃう。

* 執筆後、更新までに聴きました。これはもの凄い超絶テクニックでして、しかもコクがあって、味わいが適度に濃厚で「ロボット的技巧」じゃないんです。たしか昨年も来日していたような・・・他の古典的な演奏も拝聴したいものですな。このCDはへんなコンピレーション(YedangClassicsには、けっこうある)でして、組み合わせ収録はBrahms ハンガリー舞曲集12曲(中途半端だ!)〜キタエンコ/モスクワ・フィルハーモニック(1982年)。悪くない味だけれど、中途半端な浪漫性というか余裕というか、欧州の田舎風演奏です。これだったら硬派露西亜風爆発風でいって欲しかった。云々騒ぐような作品でもないが。(音楽日誌より)

これが出会いなんです。ある日BOOK・OFFで@250処分されたCDに出会ったり、タワーレコードの在庫処分カゴから「値付け間違い」風価格が出てきたり・・・で、懐に影響ない範囲で買ってきます。すぐにはCDプレーヤーには乗せずに、手持ち関連CDを探して比較対象を楽しんじゃう。思わぬ視野の広がりが生まれることもあります。音楽の楽しみが増えることだってあります。わからんもんですな。

ところが、そのまま買ってきたCDを忘れちゃうこともあって、数年後(棚奥より)発見!ということしばしば。(ヒドい時にはダブり買いも!)これが「功罪」の「罪」ですか。ビンボー症なのにこんなムダ行為しちゃいけないな。胸が痛む。まだ聴いたことのない演奏、作品、そんなことに興味を失ってしまうと、そもそも音楽を聴く意欲が減退してしまう。だから、そういったムダ使いもしかたがないか。これは「功」かもね。

だから廉価盤漁りは、しばらく止められまへんなぁ。(2005年2月25日)


【♪ KechiKechi Classics ♪】

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written by wabisuke hayashi