Khachaturian ヴァイオリン協奏曲ニ短調(ダヴィッド・オイストラフ(v)/
ハチャトゥリアン/ソヴィエット国立フィル)/
組曲「仮面舞踏会」(レオポルド・ストコフスキー/ニューヨーク・フィルハーモニック)


* Khachaturian

ヴァイオリン協奏曲ニ短調

ダヴィッド・オイストラフ(v)/ハチャトゥリアン/ソヴィエット国立フィル((c)1955)

組曲「仮面舞踏会」(5曲)
「円舞曲」「夜想曲」*「マズルカ」「ロマンス」「ギャロップ」

レオポルド・ストコフスキー/ニューヨーク・フィルハーモニック/ジョン・コリリアーノ(v)*(1947年)

MEISTERKONZERTE100枚組 36/100枚

   100枚組は既に廃盤でして、52枚に縮小再発売されているみたいです。そこには収録されぬ一枚。Khachaturianのヴァイオリン協奏曲は初演(1940年)も含めオイストラフの十八番であって、1954年1965年数種の音源が存在するけれど、ここでの収録はどーも怪しい・・・State Philharmonic of the Soviet Union?HMVの和訳では勝手にソヴィエット国立交響楽団になっていたけれど、あくまで「Philhrmonic」表記ですから。いろいろ調べてみたけれど、1950年代の録音はEMI以外見当たらず、1946年アレクサンドル・ガウク盤とも誤差とは言いかねるタイミングの違いが存在します・・・閑話休題(それはさておき)

 小学校の音楽の時間に聴いた「剣の舞」の激しいリズムに痺れて、17cmLPを買ってもらった(550円当時消費税なし=現在の貨幣価値なら1,500円ほど?)ら、子守歌/バラを持つ娘たちの踊り/レズギンカも収録され、土俗的洗練されぬオリエンタルな旋律リズムにすっかり心奪われました。爾来幾星霜華麗なる加齢を重ね、交響曲(第3番非常識なる金管編成大爆発!)やら種々協奏曲を聴く機会はあって「どれもワン・パターン!」(褒め言葉のつもり)な魅力は筆舌に尽くし難いもの。ヴァイオリン協奏曲との出会いはLP時代、ミシャ・エルマン(ゴルシュマン/ウィーン国立歌劇場管弦楽団)の大カンチガイ演奏であって、往年の名手も晩年衰えきったゆるゆるテクニック、浪漫甘美にムリヤリ寄せて作品個性風情ぶちこわし超個性演奏・・・とは当時気付かず「こんな作品かいな」と諦めていたのも懐かしい想い出です。

 時代相応、ワリと聴き易い音質。ソロは美しく収録され、管弦楽伴奏はちょっと音はつぶれる(そして遠い)ものの、奥行き空間有。第1楽章「Allegro con fermezza 」。冒頭の騒々しい管弦楽導入から馴染みの、懐かしい「ガイーヌ」の旋律そのまま、類似の土俗的ぷんぷんオリエンタルな世界。オイストラフは余裕のテクニック、豊満たっぷりとした美音駆使して、土俗的旋律=泥臭い世界に非ず、まるでオトナのお伽噺風情、妖艶なる世界を導きます。これは独墺系伝統の音楽とも、ちょっとクサい露西亜+西欧の合体たるTchaikovskyとも異なる、新しい異国の東方民族個性的魅力であります。

 第2楽章「Andante sostenuto」物憂いファゴットから始まって、木管〜弦と受け継がれる、昔語り風落ち着いた、わかりやすい緩徐楽章。これも「ガイーヌ」の世界と寸分違わない。もの悲しいヴァイオリン・ソロは纏綿と語って、そのニュアンスに充ちたオイストラフの音色は洗練され、陰影のある表情豊かであります。中間部の弱音にて囁くような旋律(ハ短調)は、絶品。破壊的とかアクロバティックとは無縁、初めて聴いても懐かしいバラード。作曲者によるオーケストラは、こんなものかな?水準であって、ソロ中心の昔風収録もあって、ソロとは息は合っているものの、水際だったアンサンブルやらサウンドということでもなし。

 第3楽章 「Allegro vivace」フィナーレは待ってました!的「剣の舞」「レズギンガ」風シンプル激しいリズムにて開始、ハズむような明るいヴァイオリンは、まるで祭りの踊りであります。オイストラフは絶好調であって、旋律リズムがどれだけ土俗的であろうとも、豊かで洗練された風情を崩しません。低音域のセクシーなこと、表情豊かに移りゆく表現の多彩なこと、気品に溢れます。管弦楽団伴奏の時に激しい炸裂も、ヴァイオリンの甘美な音色に中和され、バランスへと至ります。ラスト迄一糸乱れぬソロの妙技を官能。全34分、なかなか愉しめる演奏也。1954年フィルハーモニア管弦楽団との録音を確認しなくては。

 バレエ組曲「仮面舞踏会」は最近、Khachaturianの一番人気かも。CBS録音は驚くべき鮮明な音質也。「円舞曲」はテレビCMでも使われているし、美輪明宏さんの舞台に使われて人気に拍車が掛かりました。上記、ヴァイオリン協奏曲は「ガイーヌ」同様オリエンタル土俗雰囲気満載!と書いたけれど、こちら鹿鳴館時代の舞踏会を彷彿とさせる(ウソ)、いかにも!的わかりやすい、甘美優雅なる旋律連続ワザ+ストコフスキーのグラマラスな表現+ニューヨーク・フィルも絶好調。「夜想曲」に於けるソロはコンマス(1943 - 1966在任)であったジョン・コリリアーノ(著名なる作曲家の父)担当、これはオイストラフを念頭に置くと甘さ控え目、但し、「ノクターン」辺りの弦は絶品でっせ。

ラスト「ギャロップ」って、幼稚園の運動会に使われそうな愉しい、躍動する溌剌音楽であります。変拍子有。

(2012年10月21日)


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written by wabisuke hayashi