Beethoven 交響曲第9番ニ短調 作品125
(ヘルベルト・カラヤン/フィルハーモニア管弦楽団)


Beethoven  交響曲第9番ニ短調 作品125(ヘルベルト・カラヤン/フィルハーモニア管弦楽団) Beethoven

交響曲第9番ニ短調 作品125

ヘルベルト・カラヤン/フィルハーモニア管弦楽団/ウィーン楽友協会合唱団
シュヴァルツコップ(s)ヘフゲン(a)ヘフリガー(t)エーデルマン(b)

海賊盤(EMI) ECC617 1956年モノラル録音 (もったいなくも)1,000円で購入

 苦しかった2004年のお仕事も終え、ほんわかぼんやりしております。「この作品の聴きどころは第1〜3楽章」「第4楽章には違和感がある」などという不遜な感想を持つワタシではあるが、日本の正しき年末風習=第九に従う心根迄は失っておりません。今回は(ヘルベルト・カラヤンが重用した)「ウィーン楽友協会合唱団はヘタクソ・アマチュア合唱団である」という評価を見掛けたので、はて?そうだったか、と確認を。

 ワタシは日本人らしく、第九をナマで数多く聴く機会も多かったが、全部アマチュア合唱団でした。それに「胸が空くような上手い合唱団」を聴いたことがないのか、意識できなかったのか。数年前のワタシは「楽友協会合唱団の充実しきって会場を揺るがすような劇唱」との評価でした・・・う〜む、こりゃ絶叫口調のかなり荒々しい演奏(とくにソプラノ)ですな。これは「充実しきった」と捉えることが可能なのか?どうもソロ声楽陣と合唱団をいっしょくたに評価しているみたい。

 引き締まって、前のめりの推進力に溢れたヘルベルト・カラヤンの表現に、やや余計な夾雑物が尾を引くようでしょうか。ワタシの合唱に対する感性は、Mahler 交響曲第8番を何度も聴いたり、Bach マタイ受難曲への傾倒によって変化したようです。もっと透明ですっきりとした、正確な合唱であって欲しい、と。第1楽章からのヘルベルト・カラヤンへの感想はかつてと変わらず。録音状態は、オーディオの状態を工夫するとそれなりに楽しめます。

 大枚千円札はたいて駅売海賊盤を買ってしまった、当時のワタシは愚か者だけれど、それはそれで楽しませていただきました。ちなみに、ジンマン盤のスイス室内合唱団には、現在まったく評価を変えました。まさに室内楽的正確で、ハズむような繊細な味わいをようやく理解できるように。(2004年12月30日)


 いちどホームページに取り上げたけれど、あまりの私の表現内容のなさに再挑戦。聴き直し。

 「小学生からのキャリアの私が今更Beeやん・・・」という思いありながら、最近その魅力に取り憑かれてしまったワタシ。どんな演奏を聴いても面白く、またツマラなくもある。CDはどんどん増えます。楽しく、嬉しい悩みも増える一方。

 「アンチ・カラヤン」と公言しておりましたが、ここ数年激安海賊盤、廉価盤に登場してくれて、ようやく身近に感じてきました。(DGはエライ。その点SONYは・・・・)「ドイツ・グラモフォン完全データブック」付録で聴いた、ハ短調交響曲第1楽章(1962年録音)の怒濤の迫力とオーケストラの輝かしさ。いままで何を聴いていたんだろう・・・・発見でした。

 この全集、エコーインダストリーが第2・7番を除いてCD化してくれたんですが、録音の状態が期待よりずっと落ちる。オリジナルはどうなんでしょうか。(しょうもない一般的な解説シート付)

 全曲で65分。これは新しいベーレンライター版準拠のジンマン盤(60分)に及ばないにせよ、かなり速いテンポでしょう。

 これはおもしろい演奏でした。オーケストラの音色が明るく、軽い。勢いが付きすぎて、細部の仕上げが甘い。アンサンブルやリズムが乱れるところもあって、それが逆に若々しい魅力を感じます。第1楽章も、第2楽章も軽快で、へんなものものしさはありません。演出臭は少なめ。

 第3楽章アダージョも、すっきり淡々としています。ホルンや木管は技術的に優秀で、美しいのもたしかだけれど、「深み」みたいなものが足りない。腰が据わっていない印象有。この楽章は録音で損してるかもしれません。

 第4楽章も同じ印象。(すくなくともヘルベルト・カラヤンのオーケストラは)「怒濤のトゥッティで冒頭ぶちかまし」も威圧感は薄い。それでも「喜びの歌」のテーマから力強い変奏に入ると、熱を帯びてきて良い感じ。

 ヘフリガーの立派なこと。録音の加減で少し遠いけれど、楽友協会合唱団の充実しきって会場を揺るがすような劇唱。4人のソロの完璧な歌。ここでも勢い余って声楽部とオーケストラがずれるところがなんとも言えない味わい。

 アラ・マルチアから後でリズムが前のめりになるのも、若さの証明。勢い重視でいいんです、これで。全合唱による「喜びの歌」は、一拍一拍たしかめるような力み。わざわざこの合唱団をウィーンから連れてきた理由も納得・・・・・「一生懸命歌ってます」雰囲気が、ひしひしと感じられます。(こんな合唱を聴き慣れているから、ジンマン盤のスイス室内合唱団が頼りなく思えるえる)

 最後は盛り上がります。録音がイマイチなのも忘れます。声の威力と、ヘルベルト・カラヤンの軽快なリズムが疾走しています。未完成の魅力です。

(2000年頃執筆)


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written by wabisuke hayashi