香港の金田さんより「2015今年の総括」


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 今年も残り1日となりました。今年を振り返ってみることにいたします。

 私も8月で60歳になりました。香港には長者優恵という老人割引システムがあります、多くは65歳からですが60歳から享受できるものもあります。コンサートのチケットが半額になるのも60歳からでして、歳を取るのも悪いことばかりではありません。

 さて、今年は古い録音を聴いて感じることが多かったように思います。

1. レオニード・コーガン (Testament)

Testamentの録音が並んでいたので買い求めてみたもの。コーガンは45年くらい前になりますか、コンサートホールソサエティのLPでベートーヴェンのヴァイオリン協奏曲を聴いたのですが、これはあかんと思いそれっきり聴くことなく還暦を迎えたわけです。アレクサンダー・ガウク指揮のモスクワのオーケストラでしたが、まったくぱっとしない録音でした。Testamentの録音は1950年代中頃に仏EMIによって製作されたもので、オーケストラはフランスのもの。ベートーヴェンのコンチェルトもあって、目の覚めるようなうまさに仰天。

2. ジネット・ヌヴー

ヌブーの商業録音はCD4枚に収まる量しかないのですね。若くして亡くなったのだと実感されました。
ブラームスとシベリウスのコンチェルトはEMIのスタジオ録音を長いこと愛聴してきましたが、巷間評判の高いイッセル・シュテットととのライブのブラームスを聴いてその激しさにうたれました。

3. ウィーンコンツェルトハウス四重奏団 (Westminster)

ウェストミンスターにバリリ四重奏団とともに多くの録音を残した団体ですが、若い時の印象はモダンで切れがりかつエレガントなバリリに比べて古くさいという印象でその後聴くことはなかったのですが、中古CD店で紙ジャケのCDが出ていたので買ってみました。ボックスセットの中身がバラで売られているようです。シューベルトやベートーヴェンなど、いいじゃないですか、味があってね。歳をとったということでしょうか。餌箱からはアマデウスSQとかウラッハとか他にも食指をそそるものがありました。

4. カミーラ・ヴィックス (Music & Arts)

昔、小林秀雄がヴィックスのシベリウスのコンチェルトを褒めて、シベリウスは女に限るといっていたのですが、結婚して早々と引退してしまったので、聴く機会もなく今まできていたのですが、Music & Artsから出たライブ(引退後もたまにステージにあがっていたようですね)録音のセットを聴きました。90年代にラシライネンとのブーラームスのコンチェルトなど、立派なものだと感じました。

5. ラインスドルフのプロコフィエフ

ラインスドルフは私がアメリカにいた当時(88年から95年)はまだ現役でしたが、私は聴く機会がありませんでした。MCAのモーツァルトの録音は愛がないと言ったところ、林さんにお叱りをうけましたが、彼はモーツァルトには向いていないと思います。ケネディ大統領追悼のレクイエムは名演との誉高いですが私は聴いていません。プロコフィエフの録音をまとめたRCAのボックスセットを聴きましたが、プロコフィエフは向いていたんですね。シャープでだれたところが全くない。BSOも上手いし言うことのない録音だと思います。惜しむらくは、交響曲は4曲しか録音していなのですね。1番と4番がありません。

6. ライナーのバッハ

フリッツ・ライナーがバッハのブランデンブルグ協奏曲と管弦楽組曲を小編成のアンサンブルで1949年から53年にかけて録音しています。当時としては画期的なものだったのではないでしょうか。ピッコロトランペットの使用とか。この頃ライナーはメトの指揮者でしたので、ニューヨークのミュージシャンを使ってニューヨークで録音されてます。前者がコロンビアで後者はRCAの録音。当時のライナーはニューヨークのメトロポリタン歌劇場の指揮者でしたので、演奏家も録音場所もニューヨークです。

7. カラヤンのベートーヴェン (旧EMI、Warnerからのボックスセット)

カラヤンが50年代にフィルハーモニアと録音したベートーヴェンの交響曲。モノラル録音ですが第9はステレオ版もあるというもの。これはなかなか面白いものでした。後年の演奏よりもきびきびしています。私は彼のフィルハーモニア時代の録音が好きですが、なぜかベートーヴェンは聴いていませんでした。

8. ストコフスキーとニューヨークフィル (CALA)

ロジンスキーが辞めて、ミトロプーロスが常任になるまでの間、ストコフスキーはニューヨークフィルをよく振っていたようで、録音もいくつか残っています。CALAからでた1947年から1949年に録音されたものが復刻され第1集と2集を聞きました。演奏は極めてまとも、ニューヨークフィルの演奏水準も高く、録音も良いものです。シェーンベルク、メシアン、グリフィス、コープランドなど同時代の曲をとりあげるところはストーキーの本領発揮というところでしょうか。

 さて、新しい録音では、

1. シューベルト 美しい水車屋の娘 マウロ・ペーター(tn)、ヘルムート・ドイッチュ(pf) (Wigmore Hall)

ペーターの歌い方は飾り気のない率直なもので、かえって哀れな若者の気持ちが伝わってくるという感じがしました。これに比べると、ボストリッジは表情をつけすぎかな。

2. モーツァルト ヴァイオリン協奏曲第5番、ヴュータン ヴァイオリン協奏曲第4番 ヒラリー・ハーン(vn)、パーヴォ・ヤルヴィ指揮、カンマ―フィルハーモニー ブレーメン

ハーンはいつも少しひねった選曲をしますね。今回はヴュータンの4番をモーツァルトに組み合わせました。ヴュータンは最近あまり録音が無いように思いますが、堪能しました。

3. シテインベルク受難週 カペラ・ロマーナ 

シテインベルグはリムスキー・コルサコフの弟子で、ショスタコーヴィチの先生だそうです。カペラ・ロマーナはオレゴン州ポートランドの合唱団で、初めて聞きました。アカペラの男声合唱で深みのある素晴らしい演奏です。

4. ショパン マズルカ全曲 ヴァシリー・プリマコフ(pf) LP Classics

ラッセル・シャーマンのマズルカを買って失敗したので、口直しを探していて入手したのがこれです。

5. マルコム・ウィリアムソン ピアノ協奏曲全集 ピアース・レイン(pf)、ハワード・シェリー指揮タスマニア交響楽団 (Hyperion)

ウィリアムソンはオーストラリア出身ですがイギリスで活躍した作曲家。プロコフィエフに似ているような曲想ですね。タスマニアのオーケストラも技術的には全く問題ありません。最近のオーケストラは上手になりました。

本年はありがとうございました。来年もよろしくお願いいたします。良いお年を。

(2015年12月31日)

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written by wabisuke hayashi