Holst 組曲「惑星」(ヨエル・レヴィ/アトランタ交響楽団)


 TELARC PHCT-5180 Holst

組曲「惑星」

ヨエル・レヴィ/アトランタ交響楽団/女声合唱団

TELARC PHCT-5180 1997年録音

 Yoel Levi(1950-羅馬尼亜→以色列)はまだまだ現役年齢、このオーケストラ在任は1988−2000年、その時の録音でしょう。血湧き肉躍る大好きなスペクタクル作品。四管編成+打楽器は種々多様に5名分、ハープ2台はもちろんオルガン、そしてラストには女声コーラスのヴォカリーズが入る大規模なもの。2020年に聴いて曰く

TELARCの優秀なる録音、亜米利加の明るく、パワフルなサウンドを期待して拝聴して、たしかにそのとおり。ところが・・・さっぱり”血湧き肉躍”らない
 さて4年経って印象はどうか。これが当時の記憶はエエ加減なもの、もちろんゴージャスな広がりを感じさせる録音は優秀そのもの。オーケストラは絶好調、期待通り亜米利加の明るく、後半に行くほどパワフルなサウンドが眼前に広がりました。但し、レヴィは手堅い表現の人、第1曲「火星、戦争をもたらす者/Allegro」は暴力的な推進力がアツい興奮を呼び覚まして欲しいところ。ゴージャスなサウンドだけど端正な抑制が感じられます。(6:32)第2曲「金星、平和をもたらす者/Adagio〜」は静謐な緩徐楽章。冒頭のホルン+木管の存在感はリアル、音楽は細部迄ていねいに仕上げられて幻想的でも、内面より滾(たぎ)るものがちょっぴり足りない。上手いオーケストラと思うけれど、弱音部分に音楽の流れは”弱い”と感じます。(8:36)

 第3曲「水星、翼のある使者/Vivace」はScherzo。ユーモラスな音型がヴィヴィッドに躍動して欲しいところ。ここも仕上げは丁重ていねいに緻密なアンサンブルだけど、ヴィヴィッドさが足りないように感じます。(3:53)そして一番人気デーハーな第4曲「木星、快楽をもたらす者/Allegro〜」ここは冒頭の弦の動き、管楽器の精気溢れる朗々たる勢いから素晴らしい。オーケストラのパワー、力量は充分でしょう。オーディオ効果は最大限、各パートは明快に効果を発揮しております。そして誰でも知っている第4主題は弦とホルンによって荘厳に歌われ、ここは文句なしの金管と打楽器乱舞! 輝かしいスケール。感極まりました。(754)

 第5曲「土星、老いをもたらす者/Adagio〜」ここが全曲のキモ。老成と衰え、嘆きの旋律はここでも端正に抑制され各パートはクリアに浮き立って、クライマックスの効果はTELARC録音の面目躍如でしょう。神秘静謐な諦観、安寧の収束もおみごと。(9:09)第6曲「天王星、魔術師/Allegro〜」もScherzo。「魔法使いの弟子」に影響を受けたとか?執拗にユーモラスなリズムの繰り返し、ティンパニの衝撃が繰り返され、金管の朗々たる爆発も聴きもの。そして力尽き静寂がやってきました。(6:11)

 第7曲「海王星、神秘主義者/Andante〜」は宇宙の果て、冷たい沈黙が支配する全編pp。ここもTELARCの明晰な音質が効果を発揮して、別世界より木霊する女声ヴォカリーズも文句なしのサウンド融合。そしてフェード・アウトはいかにもヤバい地点迄来てしまった感慨に溢れました。(7:16)アトランタ交響楽団はこの時点、充分な技量を備えて、TELARCの録音は刺激的な響き皆無に耳への佳きご褒美でした。

(2024年5月25日)

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written by wabisuke hayashi