Hindemith 交響曲「画家マティス」/弦楽と金管のための協奏音楽
(ウィリアム・スタインバーグ/ボストン交響楽団)/
白鳥を焼く男(ダニエル・バレンボイム/パリ管弦楽団)
Hindemith
交響曲「画家マティス」
弦楽と金管のための協奏音楽
ウィリアム・スタインバーグ/ボストン交響楽団(1971年)
白鳥を焼く男
ダニエル・ベンヤミーニ(va)/ダニエル・バレンボイム/パリ管弦楽団(1979年)
DG MG2383
William Steinberg(1899ー1978独逸→亜米利加)はボストン交響楽団の音楽監督在任1969ー1972年(小澤征爾の前任)その時期の録音となります。Paul Hindemith(1895ー1963独逸)は独特の一種辛気臭い、華のない旋律に長く馴染めなかったけれど、幾度聴き込んでいくうちにその味わい深さを堪能できるようになりました。音質はまずまず、ボストン交響楽団のノーブルな響きを活かしてバランスを感じさせるもの。
おそらくは一番人気な交響曲「画家マティス」はもともとオペラからの再編成とのこと。ちょっとリリカルに落ち着いたバロック風情漂う「天使の合奏」はオペラの前奏曲なんだそう。(Engelskonzert/8:25 )ここの金管や木管には荘厳な風情に深みを感じさせます。落ち着いた静謐を感じさせる弦主体の「埋葬」に寂しいフルートが漂いました。(Grablegung/4:10 )激昂とか詠嘆とは縁のないクールな盛り上がりを見せる「聖アントニウスの誘惑」ここの中盤はかなり鬱陶しい暗鬱だけど、ラストは金管+打楽器中心に圧巻の堂々たる締め括りでした。(Versuchung des heiligen Antonius/13:14)の三楽章からなる二管編成+ティンパニ+6種必要な作品。甘さと情緒を廃した硬派な旋律はけっして難解晦渋に非ず、知的な旋律とハーモニーがカッコ良い!傑作中の傑作。ピッツバーグ交響楽団との旧録音(1957年)も良かったけれど、ボストン交響楽団の洗練された弦、木管のしっとりとした美しさ、金管炸裂のキレ味、どれも極上の響きと緊張感あふれる迫力最高。
「協奏音楽」は躍動するボストン交響楽団の金管は名人芸、怒涛の大爆発連続技! 初演は1930年クーセヴィツキー/このオーケストラでした。弦(第1第2ヴァイオリンの区別がないそう)+ホルン 4/トランペット 4/トロンボーン 3/チューバの編成。木管や打楽器はありません。第1部最初は金管と弦はほとんど別な動き、交代で音楽を奏でて緊張感たっぷり。やがて絡み合ってアツい世界に疾走が続きます。これも甘さとか情緒の欠片もない風情だけれど爽快でカッコよい。ラストは弦の詠嘆が続きました。(8:21)第2部は怪しくも軽快ノリノリ、細かい音形リズムのフーガに金管ソロが合いの手を入れます。静謐な夜を連想させる中間部は金管ソロがモウレツに上手い(トランペットはArmando Ghitallaか?)。やがてテンポは戻って絢爛豪華な響きのうちに終了しました。(8:00)
バレンボイムはパリ管弦楽団に長期1975-1989年音楽監督在任。その時の録音でしょう。Daniel Benyamini(1925-1993以色列)はたしかイスラエル・フィルの首席。「白鳥」はヴィオラ協奏曲、1935年作曲者自ら初演。二管編成だけれど、ヴァイオリンとヴィオラを欠く特異な編成となります。別訳によると「白鳥をひねる(回す)男」とか、ヴィオラ・ソロのモノローグが暗く、やや狂気を孕んで雄弁、延々と活躍してかなり鬱陶しいけど勇壮な美しい音楽。パリ管も上手いけれどややマイルドに軽い、ヤワい響き、ボストン交響楽団の金管とはかなり個性が違いました。しっかりとしたリズムに歩みを進める「山と深い峡谷の間で」はジミな響きやなぁ。(8:21)「いざその葉を落とせ、小さな菩提樹」は優しく語り掛けるようなヴィオラの歌から後半は上機嫌なフーガへ。(4:07-5:23)ラストは変奏曲「あなたは白鳥の肉を焼く人ではありませんね?」これが妙に軽妙に怪しくも牧歌的な出足から、やがて不気味な変容を続けて、ソロ・ヴィオラはかなりやっかいな技巧を要求されそうでした。(8:56) (2024年11月30日)
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