R.Strauss 交響詩「英雄の生涯」
(カール・ベーム/ウィーン・フィル)


AV JAPAN/CLASSIC COLLECTION(DGの海賊盤)  AC-3008
R.Strauss

交響詩「英雄の生涯」作品40

カール・ベーム/ウィーン・フィルハーモニー/ゲルハルト・ヘッツェル(v)

AV JAPAN/CLASSIC COLLECTION(DGの海賊盤)AC-3008 1976年録音 (たしか)1,000円で購入

 常々「R.Straussはようわからん」と感じております。しかし、CDは貯まっていく。このCDは、LPを処分しつつある頃に買ったはず(1990年代はじめ)で、この価格、いまでは笑い話ででしょう。定価2,000円と印刷してある。世評高い作品を理解できないのは、おそらく、いえ間違いなく自分が誤っていて、お勉強が足らんのです。ここ数日「英雄の生涯」は、ライナー、小澤、作曲者自身、ジンマン、メンゲルベルクと確認してきて、ああベームがあったな、と。

 かつてワタシはこの演奏を「引退した英雄」と評しました。なんかギラギラした、やる気満々〜「英雄、色を好む」的ではない、ずいぶんと抑制の利いた、包み込むような優しさと、暖かさあふれる演奏だと思います。全体としてテンポはゆったりめ、ベームって生真面目で色気ある人ではないが、誠実なる美しさがありました。

 そう、数年ぶりに確認してみると「緩い」といった印象は消えて、急いたところのない、堂々とした貫禄と、黄昏のような輝きを痛感しました。「英雄の戦場二部」でのチカラ強さにも余裕があって、老衰しているわけではない。これはウィーン・フィルの良いところが出ていて、ウィンナ・ホルンの厚みはなんということでしょうか。それを包み込む弦の深々とした響きも。

 「英雄の業績」〜この辺りはしみじみ人生を振り返っているようでもあり、奥行き深い弦が、柔らかな金管が幾重にも折り重なって、人生は茜色に黄昏ます。噛みしめるような「間」に深い意味を感じますね。録音が自然な奥行きと広がりがあって、人工的に付加されたような艶もなくて、地味ながらかなりの水準。

 やはり、R.Straussは録音の条件は重要でしょう。「英雄の引退と完成」〜82歳のベームに相応しい平静なる心情が、そのまま表現されていますね。ラストの印象が強いせいか、全体としてとても静かな、息の長い味わい系演奏の極北。ウィーン・フィル最良の瞬間が記録されております。わずか44分の収録。最近、この手のゆるゆる演奏にぐっと来ちゃってね・・・年齢(とし)か?ウワサによるとドレスデンとの録音(1957年)はずいぶんと違うらしい。

(2003年11月21日)


 さっそく「児島の体操服屋の若旦那」からメールをいただきました。

 ベームの英雄の生涯は、全く同じCDを持っています。購入した時期も価格も同じです。ドレスデン盤も持っていますので 聴き比べてみました。結果として ドレスデンとの演奏があまりにも素晴らしいので 新盤は分が悪いようです。まず細身のオーケストラが美しい そして集中力のあるベームの指揮 オペラのような華やかさ モノラル録音ですが こんなに良い演奏だとは思いませんでした。
(2003年11月22日)


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written by wabisuke hayashi