Haydn エステルハージ候のためのソナタ集 作品13


PILZ CANという怪しいCD

Haydn

ピアノ・ソナタ 作品13  H16の21〜26

ハンス・ルートヴィヒ・ヒルッシュ(fp)

PILZ ARTS ausentic 447124-2 中古250円にて購入

 これは珍しい。PILZは倒産してしまったが、元社長の息子がやっているARTSは現役の会社でしょう。(p)(c)とも1994で、ARTSは最初のウチ、PILZの一部分だったのかも知れません。しかも、これ「PILZ CAN」というシリーズで文字通り(日本語?)丸い缶でできたジャケットなんです。

 内容はともかく、缶だけでも価値有。初めて目撃して、即買ってきました。(2枚)缶の中にはスポンジは入っているが、例のごとしでいっさいの解説なし。録音情報もないが、怪しげな音源ではなさそうで、ちゃんとした新しい録音みたい。フォルテ・ピアノによる演奏で、良好な音質。

 通称「エステルハージ・ソナタ」(ランドン版では36〜41番)は1774年、Haydn初の公式に出版された楽譜である、とのこと。この辺り、なんとなく「音楽家の近代化」を感じさせるが、それが音楽的になにを意味するかは、ド・シロウトのワタシには理解できません。でも、きっと作曲者は自信があったんでしょ?

 だいたい10分ほどの作品が6曲セットで、69分ほどの収録。Mozart の陰影に富んだ世界や、Beethoven 以降の劇的浪漫的なピアノ曲に慣れた耳には、少々物足りないかも知れません。典雅な味わい深くて、細部まで工夫された旋律が味わえます。例えて言えば、Scarlattiの素朴な躍動感に加えて、色彩豊かな変化が加わった感じか。

 もともとが自分で弾いて楽しむ曲、という趣旨の作品でしょうか。一つひとつの作品の個性を綿密に味わう、というより、リラックスした気持ちでお茶の間に音楽が静かに流れている、午後の紅茶が似合う〜なんていうシチュエーションがぴったり。でも、各々の作品は珠玉の価値があって、刺激は足りないかもしれないが、ワン・パターンに飽きることもない。

 ヒルシュ(Hirsch)のフォルテ・ピアノは、ずいぶんと豊かな響きで、瑞々しいもの。現代楽器で演奏していただいても、この作品の魅力は失われないだろうと想像されます。Haydnのピアノ作品集は、Mozart に比べると雲泥の人気差があるけれど、全集が格安で出るようになった(BRILLIANT 99671 10枚組)し、もう少しの努力で、新しい楽しみが増えそうな予感もあります。(2002年6月20日)


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written by wabisuke hayashi