Haydn 交響曲第95番ハ短調/第99番 変ホ長調/第104番ニ長調「ロンドン」
(オイゲン・ヨッフム/ロンドン・フィル)


 DG 437 201-2 Haydn

交響曲第95番ハ短調(1972年)
交響曲第99番 変ホ長調(1972年)
交響曲第104番ニ長調「ロンドン」(1971年)

オイゲン・ヨッフム/ロンドン・フィル

DG 437 201-2

 日々できるだけ現役、若い世代の新しい録音やら、耳馴染みの薄い音楽に見聞を広げるように心掛けているつもり。それでも昔馴染み、こどもの頃、若い日々に刷り込まれた音源を聴くとほっとして、一方で世評高い有名な作品、演奏をずっと聴き逃していることにも忸怩たる思いはあるもの・・・これが代表例のひとつ。LP時代は鉄板の評価だったんじゃないか、やがて古楽器の時代がやってきて、半世紀前の録音、往年の巨匠Eugen Jochum(1902-1987独逸)も亡くなって既に30年以上経ちました。ラスト交響曲第104番ニ長調「ロンドン」はその颯爽としたスケールにかなり以前より馴染んでお気に入り作品、やがてアダム・フィッシャー全集を入手しても第95番ハ短調、第99番 変ホ長調には旋律の記憶もないのが情けない。

 音質良好、例の如しテンション高く、溌溂ヴィヴィッド、かっちり楷書な演奏連続。ロンドン・フィルはベルナルト・ハイティンク時代でしょうか。Haydn最晩年を飾る傑作揃いな「ロンドン交響曲」より。

 交響曲第95番ハ短調は珍しい短調作品、ティンパニが入ります。第1楽章「Allegro moderato」序奏なし、劇的な主題から始まって(これが執拗に繰り返される)やがて明るい風情が支配的になる陰影深い名曲。端正に清潔なフレージングは全曲に感じるところ。(6:35)第2楽章「Andante cantabile」は優雅な歩み。チェロのソロが活躍する弦主体の変奏曲であります。ここも暗転が印象深い楽章。(5:29)第3楽章「Menuetto」はMozartのト短調交響曲を連想させる深みのある劇的舞曲、ここも中間部ノンビリとしたチェロ・ソロが大活躍!(4:42)第4楽章「Finale. Vivace」はハ長調、快活愉快な表情にシンプルに盛り上がりました。ここもちょっぴり暗転が印象深いアクセント。(3:40)傑作です。

 交響曲第99番 変ホ長調には上記第95番の編成に加えて、クラリネットも入るのですね。第1楽章「AdagioーVivace assai」は堂々たる序奏にて開始(約2分)やがて笑顔を浮かべた余裕の疾走が始まりました。カッコよい魅惑の主題ですよ。(8:44)第2楽章「Adagio」はしっとり優雅、ロココと云うか、おそらくヨッフムは纏綿と歌いたいところ。木管のみの絡み合いはHaydnのもっとも美しい音楽でしょう。(8:46)第3楽章「Menuet. Allegretto-Trio-Menuet」なんとも牧歌的な3/4拍子(変ホ長調)ヨッフムはここをけっこうリズムを強調して力強い。トリオはハ長調に転調して、柔らかい軽さを対比しております。(5:35) 第4楽章「Finale. Vivace 」は細かい音形がそっと囁くように開始、快走するユーモラスなフィナーレでした。(4:21)名曲連続でっせ。

 交響曲第104番ニ長調「ロンドン」は自分も馴染みな”大きな”傑作。編成は上記に同じ。第1楽章「Adagio-Allegro」序奏は予想通り堂々たるスケールとテンションを誇って、そこがヨッフムらしさ。やがて主部に入って晴れやかな表情にテンポはやや抑えめに、快活かつ優雅な表現に力みはありません。モダーン楽器演奏だったらほとんど理想的な完成度。(8:56)第2楽章「Andante」はなんとも静かに淡々とした変奏曲、ていねいにしっとり描き込んで美しい演奏ですよ。途中木管による暗転、それを受ける弦も劇的に、ほのかに浪漫も香ります。(8:28)第3楽章「Menuett.Allegro-Trio-Menuet」いかにもオーソドックス、典型的なメヌエットは堂々とした舞曲、やがて次世代の交響曲はスケルツォへ置き換わります。ヨッフムの表現は”大きな”もの。トリオはデリケートですね。(5:11) 第4楽章「Finale.sospiritoso」持続低音(ファゴットですか?)が印象的な主題から始まって、躍動するフィナーレ。ヨッフムは抑制とバランスを感じさせて、盛り上げ方にムリムリはないもの。(6:41)Mozart同様Haydnも、技術的には後年のフクザツな作品より簡単かも知れないけれど、オーケストラの技量がモロに出てしまう難曲なのでしょう。素晴らしい作品です。

(2021年6月5日)

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written by wabisuke hayashi