Schubert 交響曲第8番ロ短調D759「未完成」
(ヴァント/ベルリン放響1993年ライヴ)


Schubert

交響曲第8番ロ短調D759「未完成」

ギュンター・ヴァント/ベルリン放送交響楽団(旧西)
1993年11月7日のシャウシュピール・ハウス・ライヴ(DAT)

アーノンクール/ロイヤル・コンセルトヘボウ管弦楽団
1992年6月26日 フェルトキルヒ・モントホルハウス・ライヴ(TAPE)

以上 FM放送より録音

 「未完成」ってネーミング的に最高で、LP時代は「運命」+「未完成」なんて絵に描いたようなカップリングが人気を呼んでいたみたいです。まだ、日本がそんなに豊じゃなくて、若者がみんな眉間にしわを寄せて哲学的に悩んでいた頃の、時代の要請だったのでしょうか。(1960年代!?ワタシの世代じゃないですよ。ずっと先輩)

 音楽的に見ても、激しいリズムが衝撃的な「運命」と、叙情的で浪漫的な「未完成」の相性は良かったと思います。でも、いまは続けて聴くにはあまりも暗い。
 「未完成」は凄い人気曲で、手持ちのカタログを見ても、信じられないくらいのCDが出ていますね。ワタシの手元にも相当あるはずで、あらためて調べないと、どんなCDが揃っているかわからないくらい。嫌いな曲じゃないけれど、わざわざ意識して取り出すことは希。

 小学生時代に聴いた、バーンスタイン/NYPのLPがこの曲の初体験。これはあくまで「新世界」のおまけに付いていた、といった印象で、まだ子どもだったから旋律は即覚えたけど、これといった感想はありませんでした。
 で、ヴァント/ベルリン放響(旧西)のライヴFM放送を聴いて、ガ然開眼(いったい何年かかるんだ?)。これは並の深さではない・・・なんて、じつはこのあとのBrucknerの9番が目的でタイマーセットしたもんだから、頭が切れているDAT。(なさけない)

 冒頭のコントラバスのゆったりとした旋律から、澄んだ深海の奥底に連れていってくれるような陶酔。木管の官能的な響き、全奏で音が濁らず上滑りしない。どんな細部もていねいに緻密に表現され、意味深い。テンポは中庸で、まったくオーソドックスだけどなんという説得力。

(だけど、現在ヴァントは超メジャー人気なのでCDには手を出さない。うんと廉価盤が出れば別)

 アーノンクールは、エキセントリックで過激な表現のまま、現在では大家になってしまいましたね。個人的に、1980年代くらいまではFMで追っかけたりしたんですけど(南西ドイツ放響との「プラハ」とか)、いまやほとんど興味なし。ブラームスの交響曲全集も、なんかざわついて腰が落ちつかない演奏で、つまらなかった。

 おそらくCDへの録音と並行して行われた(と想像される)、このシューベルト・チクルスもほとんどすべてテープに録音しましたが、なんか本当につまらない。カセットという媒体の音質水準のせい?
 コンセルヘボウという優秀なオーケストラを相手にしながら、どうも表面をなぞっただけの演奏に聴こえてしょうがない。例のアクセントもときどき聴かれて、せっかくの美しいオーケストラの音色をわざと濁らせているようでもある。「衝撃」が力みに聴こえ、細部の仕上げも甘い。それと、大きな意味でのリズムが感じられない。(でも、凄い拍手。ライヴでは感動するのかも)

 CDでの印象はまた違うのでしょうか。聴いたことはないので・・・・・・。


おまけ

カセットの余白にこんなん入ってました。

Wagner 歌劇「タンホイザー」(冒頭30分ほど)

ラニクルズ/バイロイト音楽祭管弦楽団/シュミット(t)プリエフ(s)キーベルク(s)ほか
1992年7月25日ライヴ

 オペラ方面にはめっきり弱いワタシ。でも、タンホイザーって「序曲とヴェーヌスベルクの音楽」くらいは馴染んでるじゃないですか。で、このテープは(あたりまえだけど)序曲から始まって、根性が続かなくなる前にテープが終わってしまうので、ちょうどいいんですよ。

 ラニクルズ、なんて知りませんね。バイロイトは特別な音楽祭だから、名の知れた指揮者ばかり出てくるのかな、と思っていたけど、そうでもないんですね。日本では知られない、実力派のオペラ指揮者がたくさんいるんでしょう。
 冒頭の弦の静かな響きも、いかにもドイツしていて最高。管楽器が加わって賑やかになっていくところも、先入観(会場?録音?)でしょうか、抑えぎみで派手にならない響きで素敵です。アンサンブルは細部までていねい。時代でしょうかねぇ、バイロイトでもさっそうとして、爽やかな演奏。

 で、遠くからの女性コーラスが始まって本編が始まっても、ほとんど序曲の旋律の流れなので、そのまま楽しめます。
在ベルリンの今野さんに「オペラのつぼ」(みたいなもの)をご教授いただいたのですが、

1.音が良い。モノラルでオペラを聴くのはかなり辛い。
2.安い。これは言わずもがな。
3.テンポが速い。胃もたれしないですね。
4.所謂評論家先生が言っていることは余り当てに出来ない。
5.カラヤンは避ける。これが私がアンチカラヤンなだけかもしれませんが・・・

だそうで、なんとなく納得しております。この演奏も、だいたい当てはまる感じ。


今野さんから更に情報。

ドナルド・ランニクルズは最近、欧米のWagner指揮者として、 認可されているそうです。日本でも、そういえば、 フンパーディンクの「ヘンデルとグレーテル」の録音が 発売されたと思います。
彼は、Wienでは数年前まで、何シーズンにもわたって、 Wagnerの「指環」の指揮を担当していたはずです。 彼の後、ハンス・ヴァーラト。今年(2000年)は女流指揮者、 シモーヌ・ヤングが振っているそうです。

聖地バイロイトではタンホイザーがパリ版で上演されます。

パリ版とドレスデン版との大きな違いは、第一幕の序曲の 後のバレエの有無です。パリ版では序曲の後、引き続いて、 ヴェーヌスブルクの音楽が演奏されます。
 Wagner自身は パリ版の方を支持していて、それ故にバイロイトでは この版が使用されますが、他の劇場では数は少ないものの、 ドレスデン版も使用されることもあります。


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written by wabisuke hayashi