Handel 組曲「水上の音楽」「王宮の花火の音楽」
(ジョージ・セル/ロンドン交響楽団)


BELART 450 001-2 Handel

組曲「水上の音楽」(ハミルトン・ハーティ/セル編曲)
Allegro-Air-Bouree-HornPipe-Andante espressivo -Allegro deciso

組曲「王宮の花火の音楽」(ハミルトン・ハーティ編)
Overture-Alla siciliana -Bourree-Minuet

メヌエット(歌劇「忠実な羊飼い」より/トマス・ビーチャム編)
ラルゴ(歌劇「クセルクセス」より/ラインハルト編)

ジョージ・セル/ロンドン交響楽団

BELART 450 001-2 1961年英DECCA録音

 Bach ほど数を聴いていないせいか、Handel はモダーンなスタイルで聴いても違和感ありません。古楽器系でもアーノンクールの粗野かつヴィヴィッドな「水上の音楽」に驚いたのが1978年録音、それ以来新しい切り口を賞賛されたものはありましたっけ、単なる不勉強故でしょうか。一昔前(1960年代?)はハミルトン・ハーティ編曲ばかり、そんな記憶だったけれど1982年ディジタル時代になってからもアンドレ・プレヴィンはこの版で録音しておりました。クリュザンダー版(全曲)というのもあったっけ。

 ジョージ・セルは録音印象で少々損をした人なのでしょう。英DECCAに残されたLP数枚分の録音はどれも仰け反るような迫力と大爆発!半生記を経た音質はほとんど現役、光り輝く金管は「ショルティのリング」を連想させ、あれは録音技術陣の成果でもあったことが類推されます。ピエール・モントゥー時代のロンドン交響楽団はみごとな技量、明晰歯切れのよいアンサンブルであります。全40分ほど、LP収納に似合った贅沢なる余裕。

 組曲「水上の音楽」冒頭のAllegroは着実、しっかりとした足取り、まだ抑制気味なのでしょう。ホルンの響きが深々とニュアンス豊か、当時の首席はタックウェルでしょうか。Airは悠々として繊細な歌は甘美なほど、Boureeに於ける強弱のメリハリ(やや強面)、Andante espressivoは指定通り「表情豊か」想いを込めて、これほど荘厳かつ遣る瀬ない風情はめったに味わえないもの。ほとんど「アルビノーニのアダージョ」風、Mahler の「アダジーエット」か。弦が涼やかに美しい。

 ラスト、Allegro decisoの晴れやかな表情、金管の絢爛豪華な饗宴(各々の旋律の表情、クレッシェンドの効果に舌を巻くほど)に、祝祭的な雰囲気は盛り上がります。セルの正確なコントロール、響きの明晰さ、意向の徹底が眼前に浮かぶほど。

 組曲「王宮の花火の音楽」はOvertureから堂々たるスケールぶちかましと、優しくていねいな味付けが対比されて、聴き手は大きく深呼吸して臨むしかない。これってもうバロックとは無縁のゴージャスさ!優雅に滔々と歌う弦、朗々と存在を主張するトランペット+ティンパニが華を添え、悠々と急がない。緩急(緩)のフランス風っぽい序曲なんですね。中間の”急”の湧き上がるエネルギー、管楽器の爆裂に圧倒されて賑々しい。(先程来大活躍な)ホルン+オーボエも色彩的に響いて、弦のヴィヴィッドな表情付けのワザ、お見事。

 Alla sicilianaはサラリと流して抑制的(この辺りメリハリ絶品/管楽器も入らない)剽軽なBourreeも同様、ラストMinuetに向け満を持して高揚がやってくる・・・豪勢なサウンドでっせ。お約束なルバートもダメ押し、ばっちり決まってますよ。

 メヌエット(歌劇「忠実な羊飼い」)ラルゴ(歌劇「クセルクセス」)は美しい旋律をたっぷり泣けるほど美しく豊かに、といったアンコールピースにぴったりの余韻でありました。

(2015年3月1日)


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written by wabisuke hayashi