Handel "The Grear Elopment Suite"(トーマス・ビーチャム1945年)
Tchaikovsky バレエ組曲「くるみ割り人形」(セルジウ・チェリビダッケ1948年)


Membran/DOCUMENTS LC12281  10枚組1,000円 Handel

"The Grear Elopment Suite"(12曲/ビーチャム編)

トーマス・ビーチャム/ロンドン・フィル(1945年)

Tchaikovsky

バレエ組曲「くるみ割り人形」(8曲)

セルジウ・チェリビダッケ/ロンドン・フィル(1948年)

Membran/DOCUMENTS  LC12281 10枚組1,000円(消費税込)

 歴史的音源はネットから気軽に入手できるようになったので、ほとんどCDは処分してしまいました。これはほんの少ない棚中生き残り。"The Grear Elopment Suite"って「偉大なる駆け落ち」?とでも訳すのか、Love in Bath」(温泉地の恋/こちら22曲)というのもあって(補筆追加版かも)Handelの音楽からビーチャムがバレエ音楽に仕上げたものらしい。以前所有していた10枚組にも収録されておりました(「おおいなる出奔」〜おそらく自訳)。久々にこのCDを取り出したら、そんな記憶もぼちぼち蘇ってきました。ネットでいろいろ調べてみたけど、詳細経緯やら出典はわかりません。

 勇壮な第1曲「Pump Room(温泉地の大社交広間)」から優雅な旋律+華やかな大編成サウンドになっていて、イメージとしては「水上の音楽」とか「メサイヤ」(ド派手なグーセンス版)とかそんなイメージ、素朴なバロックとは別世界。「The Linleys」〜この辺りになるとネット翻訳では手に負えぬ感じ(人名かも?)「Hunting Dance」これは元気溌剌な舞曲です。「Love Scene」辺りは中学生でもわかるでしょう。べつに甘美(隠微?)な風情でもない、落ち着いた味わいの佳曲です。驚きべきは音質の良好なこと+音の広がりを付加してとても聴きやすいものでした。

 「The Weary Flunkies」って「疲れた八方美人」(この訳も苦しいなぁ)、いかにも草臥れて落ち着いて哀しげ。「The Plot」って「粗筋」の意味だけど、快活なユーモア溢れました。あとは「Saraband」「Hornpipe」とか「Gigue」いかにも舞曲な題名連続、内容もその通りなのは当たり前。「Beau Nash」って洒落男ナッシュ(女性だったらオシャレなナッシュ)か。(まさか非アルコール性脂肪性肝炎じゃないだろうな。いくらビーチャムが薬屋の息子でも)そんなド・シロウト翻(迷)訳さておき、なんとも甘美なチェロのソロを伴って優雅なところ。

 ラストは「Second Love Scene」だけど、昔の映画音楽大団円風、めでたい締めくくりとなりました。この時期のロンドン・フィルも上手いもんですよ。ビーチャムが見捨てて自主運営団体になる直前でしょうか。「Love in Bath」全22曲聴いてみたい。

 チェリビダッケ(36歳の記録)のほうは記憶通りの音質、ビーチャムよりちょいと落ちるけどまずまず聴きやすいもの。Tchaikovskyのバレエ全曲聴くのは少々ツラいけど、このメルヘンな組曲版は大好きですよ。「ファンタジア」の刷り込みかな?

 冒頭「小さな序曲」から恐るべき神経質に整ったアンサンブル、集中力であります。馴染みの「行進曲」も、次々と繰り広げられる各種美しい舞踏も、いずれ緻密な描き込みを誇って神妙に、正確に演奏されて・・・ちょいと”う〜む”な、ユーモアの足らぬ演奏也。これって最晩年のBruckner辺りと変わらない、一生チェリはチェリやったんやな。この時期、戦後の混乱、自主運営団体に至ったロンドン・フィルは演奏技量的に厳しかった?(アンセルメの「展覧会の絵」など)そう記憶するけど、みごとなアンサンブルに仕上げたのはチェリビダッケのシゴキなのでしょう。

 ラスト、華やかな「花のワルツ」も、華やかさ、色気が足りぬ感じ。それでも歴史的音源って、大昔の個性を堪能すべきものですから。これでOK。

(2016年7月17日)

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written by wabisuke hayashi