Grieg「ホルベアの時代より」「スロッテル」作品20(アイナル・ステーン・ノックレベルグ)


NAXOS 8.550884 Grieg

組曲「ホルベアの時代より」 作品40
ノルウエイの旋律 EG108より第110番「私はあまりに早く身を横たえてしまった」
6つのノルウエイの山の旋律 EG 108A
「ペール・ギュント」より「朝」
スロッテル 作品72

アイナル・ステーン・ノックレベルグ(p)

NAXOS 8.550884  1993年録音 430円

 「ペール・ギュント」には少々食傷気味だけれど、Griegの旋律は寂しく、懐かしい風情が漂います。誰でも自分にしっくり来る旋律ってあるでしょ。たとえばジョール・ウェルドンの管弦楽作品は長い間(LP以来)の愛聴盤でもあります。ノックレベルグのGrieg大全集(14枚組 7,500円で売られたこともある)は、その存在は知っていたけれど、ちょっと自分には歯が立たないかも知れない、そんな不安もありました。でも、この作品情報をメールでいただき、数日後偶然にこのCDに出会いました。中古屋さんの片隅でじっと、ワタシに発見されるのを待ってくれていた愛しのCDよ。

 「ホルベアの時代より」は一般に弦楽合奏で聴かれますよね。ワタシもピアノ版(どちらが先かは知らない)は初めてでして、いや、もう、最初の和音が鳴り出した途端!打ちのめされました。リズム。躍動。希望。内面から湧き出るチカラ。青春。躊躇い。破顔一笑。訥々として、むしろ素朴。ノックレベルグって、エラい学者さんみたいだから、もっと学究的な堅苦しい演奏かと思ってました。艶やかで華やかな美音じゃなくて、味わいのあるしっとりとした音色。

 もちろん技術的に不満などあろうはずもない。例えばね、誰でも知っている「朝」〜わずか4分弱の可憐な世界を味わってください。ほんのちょっと、遠慮がちにテンポは揺れます。管弦楽の味付けがされていないから、素材の風合いがよく生かされて、ああこんな静かな、懐かしい旋律だったんだな、と初めて気付きました。

 「スロッテル」作品72は、「ハルダンゲル・フィドルのための民族舞曲をピアノ曲に移し換えるという、グリーグの最も思いきった試み」とのこと。「スロッテル」て民族舞曲だそうです。フィドルってヴァイオリンのことだけど、例えば日本の民謡が口伝えで伝承されたように、ノルウエイの民謡だって楽譜に残されることは、かつてなかったのでしょう。全17曲。38分に渡ります。

 「叙情小曲集」ってあるでしょ。(ワタシは短くて、可憐な旋律が連続するMendelssohnの「無言歌集」をいつも連想します)もうほとんどその世界と一緒だけど、民族舞曲だからもっと元気が良くて素朴な味わいはあります。でも、やっぱりどこか寂しい。懐かしい。演奏はとても充実して、立派だと思います。ココロの籠もらない旋律などありえない。空虚な世界などどこにも存在しない。

 でもね、ちょっとだけ言わせてもらうと、立派すぎ、時に雄弁すぎ、元気良過ぎですかね。もっともっと素朴で淡々と、遠慮がちに小さく弾いていただくと似合うような世界かも知れません。でも、ほかではなかなか聴けませんから。贅沢言ってごめんなさい。こんな楽しいピアノ作品を聴いたのは久々でした。(2004年7月4日)

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written by wabisuke hayashi