偉大なる序曲集(ロジェストヴェンスキー/スヴェトラーノフ)


YedangClassics YCC-0117
Tchaikovsky

大序曲「1812年」

ゲンナジ・ロジェストヴェンスキー/モスクワ音楽院管弦楽団(1990年)

Rossini

歌劇「ウィリアム・テル」序曲

エフゲニ・スヴェトラーノフ/ソヴィエット国立放送大交響楽団(1963年)

Bizet

歌劇「カルメン」序曲

スヴェトラーノフ/ソヴィエット国立交響楽団(1987年)

Glinka

スペイン序曲第1番「ホタ・アラゴネーザ」(1976年)
歌劇「ルスランとリュドミュラ」序曲(1983年)
歌劇「皇帝”イヴァン・スサーニン”に捧げし命」序曲(1977年)

スヴェトラーノフ/ソヴィエット国立交響楽団<P> Rimsky-Korsakov

歌劇「プスコフの娘」序曲

スヴェトラーノフ/ソヴィエット国立交響楽団(1984年)

Beethoven

「コリオラン」序曲

ユーリ・テミルカーノフ/ソヴィエット国立交響楽団(1982年)

YedangClassics YCC-0069  10枚組3,990円

 米PIPELINE原盤によるロシア秘蔵音源を集めた韓国「YedangClassics」は、数年前ラスト”投げ売り”をして消滅しました。(現在はBRILLIANTで徐々に音源復活している)その時、ほとんど”オトナ買い”をしてしまったが、一般にこのレーベルの編集方針(コンピレーション)は滅茶苦茶です。この一枚だって演目、演奏家もばらばらで、ほとんどなんの意味を為さない感じ。どーせならスヴェトラーノフのエネルギッシュな録音だけで揃えたらエエのに・・・全部ライヴ。

 「1812年」はロシア風序曲名曲集には欠かせぬ!ということでしょう。(じゃ、「コリオラン」はなんだ/「ウィリアム・テル」はどうしたっ!?)モスクワ音楽院管弦楽団って、意外と他(のレーベル)では聴けないものです。ロジェストヴェンスキーの骨太かつ推進力ある演奏を堪能できるが、少々大味ガサツというか大掴みな感じで、これは録音印象(オン・マイク/奥行きが足りない)もあるのでしょうか。デリカシーとかシミジミとした歌ではない・・・迫力と重みはそうとうあって(メリハリ陰影はない)、打楽器金管爆発して(ライヴだから大砲は入らない)聴衆は大喜びの拍手であります。好事家向け演奏。

 次、(意味合い深く考えず)Rossini行きましょう。スヴェトラーノフ35歳、若いでんなぁ。これもそうとうにオン・マイク(音質そのものは悪くない)。期待通りの暑苦しい、詠嘆の表情タップリであります。冒頭のチェロ・ソロが驚異的に雄弁!お馴染み”通俗”名曲「ウィリアム・テル」を真の名曲に!といった意欲溢れます。やがて遠慮会釈ない刺激的な弦+期待通りの金管ラッシュで、嵐がやって参りました。安らぎのオーボエもフルートも”金属的”であるという驚異。しかも高温。ラスト、著名なるトランペットからの疾走は、ド肝抜かれるド迫力(「ド」重ねました)。悦びの爆演主義者いっぱいいるだろうなぁ。

 ここで「カルメン」序曲というのが・・・どっしーんと重い重戦車の空中戦也。打楽器で音が割れます。もの凄いオン・マイク。クセのあるサウンド。2分某にて終了(良かった)。喝采有。アンコールじゃないのか。このあとのGlinkaがまともな選曲となります。

 荘厳なるヴィヴラートいっぱいの「ホタ・アラゴネーザ」序奏〜一転軽やかなるホタのリズムは繊細でスヴェトラーノフも熟練が進んでいるのでしょう。カスタネットが楽しいですね。(かなりまともな、フツウの音質)一転「ルスラン」は粗野なド迫力推進力に驚愕至極。ムラヴィンスキーの4:55に及ばぬものの銀メダル確実なる5:06やはり快速であり、暑苦しくも分厚い響きがその印象をいっそう助長するでしょう。好きな人は好きだろうな、ワタシはあきまへん。刺激的オン・マイク。

 歌劇「皇帝”イヴァン・スサーニン”に捧げし命」序曲は(前曲との比較に於いて)音質がずいぶんとおとなしい・・・きっとこちらがまともなんじゃないか。音質の著しいバラ付きは聴いていて疲れます。哀愁を含んだ旋律はなかなかの名曲であり、音質印象故か?まともな(ちょっと元気ない)演奏にも聞こえます。

 Rimsky-Korsakov歌劇「プスコフの娘」序曲は初耳。華やかな作品だし、録音もまともだし、演奏も(良い意味で)迫力タップリ、静謐な部分との対比も素晴らしい。このCD随一の聴きもの。

 ラスト、テミルカーノフの「コリオラン」収録。これはBRILLIANTの10枚組ボックスにも収録されます。露西亜爆演系なんだけど、集中力や知性に於いて世代の違いを感じさせます。つまり、まともな緊張感ある演奏ということです。それにしてもティンパニの迫力は尋常じゃない。

 結論的には”座右に置くべき”ではない・・・好みの人に分売する時期がやってきたかな、YedangClassics聴取数年の結論でありました。

(2008年4月18日)

【♪ KechiKechi Classics ♪】

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written by wabisuke hayashi