Mendelssohn 交響曲第3番イ短調作品56「スコットランド」
(ワルター・ゲール/オランダ・フィル)


Mendelssohn

交響曲第3番イ短調作品56「スコットランド」

Stravinsky

バレエ組曲「火の鳥」

ワルター・ゲール/オランダ・フィルハーモニー

コンサートホール・ソサエティのLPからMDに落として、プレゼントしていただいたもの

 ワルター・ゲールはたしか1960年頃に亡くなっているし、録音はコンサートホール・ソサエティでしか見かけたことはありません。でも、録音量は多かった記憶があります。ワタシのHPにメールをいただくような方々は、結構いまでも話題になさいます。ドイツ系の指揮者でしょうか。おそらく1950年代中盤の録音。

 このレーベル、録音の劣悪さで有名だったし、ここでもモヤのかかったような水準。でも、これ時に針音も聞かれるLPのせいか、暖かみがあって聴きやすい。ワタシがこども時代から長く馴染んだ、アナログの音が回想できます。オランダ・フィルはデジタル時代になってから大曲の録音が多い、ヘンヒェン率いるオーケストラのことかな?

 メンデルスゾーンは嫌いな作曲家じゃないが、どれも耳あたりが良くて、正直、特別な感想は持てません。とういか、いままで真剣に聴いていなかったのかも。ヴァイオリン協奏曲でも、「イタリア」でも、ひととおり気持ちヨロシ。だからこのHPにも滅多に登場しない。(ワルベルク/フィルハーモニア・プロムナード管の「イタリア」〜このいい加減な文章を見よ)反省します。人生、いつも後悔と反省の連続なんです。ちゃんと聴きましょうね。

 「スコットランド」の第1楽章は、物憂く荒涼とした旋律が切々と哀しい。親しみやすく、わかりやすい。時に決然とした全奏はあるが、重くなりません。第2楽章は、ちょうど「真夏の夜の夢」序曲のような、細かい音型が囁きながら弾むように楽しい。クラリネットを始めとして木管がなかなかの好演。アンサンブルは、やや粗めだけれど勢いがあって良いじゃないですか。

 第3楽章アダージョが優雅で美しい。時代的にもっと濃厚な音楽が書けるはずなのに、上品で節度を失いません。終楽章は、いかにもメンデルスゾーンらしく明るい、軽快なリズムに乗った躍動感が素晴らしい。最後は雄壮な旋律が堂々と全体を締めくくります。わかりやすい。快い。35・6分かかるが、あっと言う間に終わります。

 この曲に、重量感や切れ味が必要なのかはわかりませんが、ま、それはありません。でも、まとめ上手で耳あたりが良い演奏でしょう。オーケストラは軽量級だけれど薄さを感じさせず、溌剌としています。終盤に至ると音質が少々気になるが、ソフトな響きには好感が持てました。(でも正直、この曲をもの凄く好きにはなれそうにありません)

 「火の鳥」は組曲版。オーケストラの力量も安定しているし、バランスよい演奏でしょう。ドキドキするような鋭さは期待できないが、この曲特有のメルヘン方向の穏健さがあって悪くない。音質は「スコットランド」と似たようなものだけれど、こちらのほうがややマシで、奥行きもあります。

 音は悪いし、特別な個性でもない。無名指揮者に無名オーケストラ。それでも虚心になって音楽は楽しみたいもの。ワタシはそういう音源に、とても興味があります。これをキッカケに、メンデルゾーンの在庫はキチンと棚卸ししましょう。


付録

この2曲ではMD74分収録に余りが出ますから、とうぜん穴埋めをしてくれております。

Prokofiev 交響曲第1番ニ長調 作品25〜チェリビダッケ/交響楽団(出典不明のライヴ)

 オーケストラもわからんし、直接音が多くて残響に不足するが、それだけにチェリビダッケの集中力が手に取るようにわかります。当然海賊盤でしょうが、音の状態はそれほど悪くない。細部まで明快で、非常に楽しげな演奏です。気に入りました。(2001年2月2日)


早速、メールにて情報追加有。ありがたい。

ワルター・ゲールは、コンサートホールソサエティの会員だった人には懐かしい名 前でしょうね。しかし、今では作曲家アレクサンダー・ゲールの父親として知られ ているのかもしれません。息子のアレクサンダーはマクスウェル・デイヴィスとな らぶイギリス作曲界の重鎮ですからね。

ゲールは1903年5月28日ベルリン生まれ。1960年12月4日シェフィールドにて没。ベ ルリンでシェーンベルクに作曲を学び、1925年から31年まではベルリンのラジオ局 で指揮者をしたとあります。1933年にイギリスに渡っていますが、これはナチスを 嫌ってのことでしょう。政治的な理由なのか人種的な理由なのかは判りません。イ ギリスに帰化しています。

イギリスに渡った後は、1939年までコロムビアグラモ フォン(後のEMI)のディレクターを努め、また1945年から48年にはBBC Theatre Orchestra (今でもあるのでしょうか?)の指揮者をしています。また、1943年から 亡くなるまで、モリーカレッジ(音楽学科でもあったのか、それとも音楽祭をやって いたのでしょうか?)で指揮をしたとありますが、指揮以外に、映画や演劇の音楽を 作曲していたようです。

コンサートホール以外にも、SP時代に自らディレクターをしていたコロムビアにか なりの録音をしています。


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written by wabisuke hayashi