Gluck 6つのトリオ・ソナタ(DC4-1〜6)他
(シミチスコ(v)/プラスクローヴァ(v)/アレクサンダー(vc)/ドビアショヴァ(cem))


デアゴスティーニ 94 Gluck

歌劇「トーリードのイフィジェニー」序曲

アルベルト・リッツイオ/カメラータ・ロマーナ

2本のヴァイオリンと通奏低音のための6つのトリオ・ソナタ(DC4-1〜6/1746年出版)
第1番ハ長調/第2番ト短調/第3番イ長調/第4番 変ロ長調/第5番 変ホ長調/第6番ヘ長調
(第7番)トリオ・ソナタ ホ長調/(第8番)ヘ長調(1750年頃)

ヴィクトール・シミチスコ(Viktor Simcisko)(v)/アルツブタ・プラスクローヴァ(Alzbta Plaskurova)(v)/ユライ・アレクサンダー(Jurai Alexander)(vc)/マリア・ドビアショヴァ(Maria Dobiasova)(cem)

デアゴスティーニのCD付雑誌からの中古流出盤250円也(2005年4月出張先の山口にて入手との記録有)

 演奏者情報は片仮名しか印刷されず、特定に苦労いたしました。序曲の方は(例の如し)匿名演奏家、ゆったりまったりとした(非バロックな)演奏スタイル、10:36ウキウキするような愉しい作品であります。本編雑誌の趣旨は(入手していないから)わからないけど曰く「オペラの改革者」〜だったら「2本のヴァイオリンと通奏低音のためのソナタ」おもいっきりマニアックな選曲はなんだ。滅多に音源は見かけぬもの。MAKくらい?(これも入手難かも/ヘ長調は収録されず)瑞々しいモダーン楽器、たっぷりヴィヴラート、のびのび穏健派の表現、優雅に美しい旋律は延々纏綿と続きます。演奏者は名前的に東欧?ですか。全部で57分ほど、緩急緩の三楽章(ヘ長調のみ緩急のみ2楽章)は一曲平均7分てなところ。バロック〜古典派への移行期というんでしょうか、過激の欠片もない作品(演奏表現かも)にほっといたします。(2014年6月「音楽日誌」より)

 中古投げ売りCDにも、稀にこんな貴重な音源が紛れ込んでいるから油断できないもの。デアゴスティーニ(旧同朋舎出版)のCD付き名曲集は多くの音楽愛好家を育てたのでしょうか。個人的には最初の500円特売を入手以来、ガッカリしてあまり注目しませんでした。(怪しげ幽霊演奏家PILZ音源も多かった)もうCDを買わなくなって久しいけど、11年前に入手した一枚はちゃんと保存しておりました。思いっきりマニアック、かつ麗しいトリオ・ソナタが含まれておりますから。いったいどんな編集方針なんや・・・

 Gluckは歌劇「オルフェオとエウリディーチェ」から一歩も外に経験が広がっておりません。歌劇「トーリードのイフィジェニー」は(この)序曲以外聴いたこともなし。←リンク先の記事を読むと興味湧きますね、序曲の楽想(10分半ほど)にもその片鱗は伺えますよ。アルベルト・リッツイオ/カメラータ・ロマーナ(実在しない幽霊演奏家)はゆったり、まったりユルいアンサンブル、それはそれで味わいある、本編を期待させる愉悦に充ちた音楽であります。

 もしかして作品詳細は本編雑誌に解説があるのでしょうか。トリオ・ソナタは珍しい作品でして、ようやくネットから情報を得たもの。2楽章のみの第8番ヘ長調には言及あるけれど、第7番(?)ホ長調は不明です。MAK盤にも含まれません。閑話休題(それはさておき)

 6曲はどれも緩急緩の3楽章、長くても6分ほどのシンプルな可愛らしい作品ばかり、アンサンブルはモダーンなスタイルによるヴィヴラートたっぷりに美しいもの。似たような作品ばかりといえばそうかも。第1番ハ長調はゆったりと明るい表情が、一点の陰りもない晴れやかなもの。とくに第2楽章「Presto」の躍動に心奪われます。第2番ト短調は一転、暗鬱な表情が甘美な開始であり、第2楽章「Allegro」に哀しみが疾走します。終楽章「Menuetto」の三拍子のリズムもしっとり典雅でしょう。このまま編成を拡大したらそのまま交響曲になりそうな、日本人好みの短調作品也。第3番イ長調は第1番ハ長調に似て、朗々と清明な表情豊かであり、ちょっぴり控え目な風情。終楽章が典雅なMenuetto(三拍子)というのはパターンなんですね。

 第4番 変ロ長調も優雅ですね。ここの第2楽章「Allegro」の控え目な躍動が魅力的。そしていつもの三拍子で締め括り。第5番 変ホ長調は懐かしい想い出のような第1楽章「Andante」にちょっぴり陰りも垣間見え、切ない情感も湧きます。ゆったりと走るような第2楽章「Allegro」を経、ワン・パターンに落ち着いた「Menuetto」優雅な舞踏に、ここもやはりちょっぴり陰りが懐かしい。第6番ヘ長調第1楽章「Andante」は短調への暗転がくっきりして、落ち着いた深みがあるでしょう。第2楽章「Andante」は「歩く速さ」、緩急緩の「急」とはいえリズムを大きく取って走らない優雅さ有、終楽章「Menuetto」は頑固に、変わらぬパターンがほっとするような落ち着いた味わいです。

 第7番ホ長調は急緩急のイタリア風シンフォニアっぽいから、やはり前6曲とは別ものなのでしょう。ゆったりと躍動する第1楽章「Allegro」から第2楽章「Andante」は色濃く哀愁の対比を見せます。ところが第3楽章「Allegro」はいつもの三拍子、これがGluckのパターンか。第8番ヘ長調はさらに様子が変わって第1楽章「Moderato ed Espressivo」ここは6:15と最大の楽章であり、シンプル典雅な歌の範疇を超え、情感のこもった暗転もあり大きな音楽となります。ほとんど優雅なアリアを彷彿とさせ、第2楽章「Allegro」はいつもの三拍子なんです。但し、前半の作品と異なってちょいち複雑な声部の絡み合いがみられました。

 音質は上々です。

(2016年5月29日)

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written by wabisuke hayashi