Glie're 交響曲第3番ロ短調 作品42「イリヤ・ムロメッツ」
(ドナルド・ジョハノス /スロヴァキア放送交響楽団)


Glie're 交響曲第3番 Glie're

交響曲第3番ロ短調 作品42「イリヤ・ムロメッツ」

第1楽章「さまよえる巡礼者、イリヤ・ムロメッツとスヴャトゴール」
第2楽章「山賊ソロヴェイ」
第3楽章「ウラディミール公の美しき太陽宮殿」
第4楽章「イリヤ・ムロメッツの武勇と石化」

ドナルド・ジョハノス /スロヴァキア放送交響楽団

NAXOS 8.550858 1991年録音  880円(くらい)で購入

 ストコフスキーが1957年にヒューストン響とこの曲を録音しておりまして、このたび購入してみたら、なんとこのジョハノス盤の半分ほどの演奏時間で驚き。(ストコ版とのこと)たしかに、全曲75分は長大ですが、多彩で飽きさせない名曲と思うので、ぜひオリジナルで聴きたいものです。
 真剣に解説を読んでいないけど、どこかの英雄伝説を交響曲化したものらしい。

 ジョハノスはダラス響の指揮者もつとめたアメリカのひとですが、ここではスロヴァキア放響を磨き上げて、ちょっと信じられないくらいの立派さでしょう。アンサンブルの水準といい、奥行きのある暖かい響きといい、もう出色の名演奏。名録音。

 この曲を粗っぽく説明。→ 「端正な旋律のシュエラザード」といった趣に、スクリャービン風の味わいを添加し、ラヴェルの輝きをブレンド、さらに初期ストラヴィンスキーのエッセンスを振りかけた印象。そして全体に俗っぽさをまぶして完成。いかにもありがちな中央アジア系の旋律ながら、ハチャトゥリアンほどクサくなくて、じつに素直でわかりやすい音楽。(社会主義政策?)もしかしてジョハノスの語り上手の力かも。

 ナクソス・レーベルにおいて、80年代には大活躍だったスロヴァキア放響(CSR響、とかチェコスロヴァキア放響、ブラティスラヴァ放響とかいろいろ表記が存在する)ですが、指揮者によって驚くほど印象が変わるオーケストラと思います。ヘロヘロのアンサンブルのときも有。
 この録音でも、あまり頑なな個性(アク)を感じさせる響きではなく、素直といえば素直、ややおとなしく、力強く充実した大爆発に少々欠けるのも事実。でも、ホルンの朗々とした響きをはじめとして、金管はマイルドで、薄っぺらい鋭さは感じさせない。弦楽器の暖かいアンサンブルも悪くないと思うのですが。

 ジョハノスはダラス響と、いかにも馬力たっぷりながら、少々繊細さに欠ける剛直な録音を残してくれましたが、構成力があって音楽はわかりやすい。(ホリデイ・シンフォニーが好例)ここでも、その力量は遺憾なく発揮されているようで、最後まで一気に聴かせてくれました。一歩間違えば、ごちゃごちゃの曲に仕上げてしまいそうな曲なのに、ずいぶん見通しの良い、すっきりとして整理された響き。(ストコ盤と比べても一目瞭然)
 録音がしっとりとしていて、聴きやすいのも特徴。

 グリエールの自作自演は交響曲第1・2番を持っていて、それなりに楽しめますが、やはり新しい録音はありがたいものです。


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written by wabisuke hayashi