Gershwin (リチャード・ヘイマン/セルビー(p))


NAXOS 8.550295 Gershwin

ピアノ協奏曲ヘ調
パリのアメリカ人(スロヴァキア・フィルハーモニー)
ラプソディ・イン・ブルー

リチャード・ヘイマン/スロヴァキア放送交響楽団/セルビー(p)

NAXOS 8.550295  500円  1989年録音


 2002年再聴です。Gershwinはお気に入りで、中学校の音楽室にあったバーンスタインのレコード(日本コロムビア)に一発で痺れたものです。「パリのアメリカ人」「ラプソディ・イン・ブルー」は聴いたことがない、なんて仰る方がいらしゃったら、「人生をもっと楽しまないと」とよけいなお節介を言いたくなっちゃう。

 ふだん「オーケストラに厚みが足りない」なんて文句ばかり付けているスロヴァキア放響(ブラティスラヴァ)だけれど、かなり豪華な響き。独墺ものとは基本的に違う世界のためでしょうか、それともハイマンがこの手の音楽のスペシャリストであるためでしょうか。しっとりして悪くない。

 でも「ピアノ協奏曲ヘ調」は、なかなかまとまった印象に仕上げるのは難しいもんなんです。あちこちでリズムのもたつき、ピアノ・ソロとの微妙なズレが気にならないこともない。ま、プレヴィンの猛烈に上手い(というか、なんというか〜3回録音有)ピアノがワタシの前提にあるから、セルビーさんには少々申し訳ない。

 やや生真面目で、リリカル(すぎる)ピアノでしょうか。技術的には文句ないが、Gershwinには特別な入れ込みとノリと熱が必要なんです。第2楽章辺りはもう少しスウィングしてほしいもの。「ラプソディ・イン・ブルー」の魅力的な旋律が、倍以上の時間に伸びたみたいなもんですから一度聴いてみてください。LP時代より収録が伸びたので、この曲も聴く機会が増えてありがたい。

 このCD、真ん中に「パリのアメリカ人」が挟まるんですが、スロヴァキア・フィルのほうが一日の長がある。いつもの音ではないような気もするが、アンサンブルの充実感が違うし、アメリカのオーケストラにはない上品さというか、暖かさもちゃんとあります。しかしながら「アメリカ人」じゃないなぁ。「軽快さがなく、野暮ったい」とは、数年前のワタシの評だけれど、現在のワタシならニヤニヤしながら楽しめます。

 ふだん真面目な人が、巧まざるユーモアで大受け、といったところかな。本格交響詩「パリのアメリカ人」みたいな、細部まできっちり演奏指示を守って、節度ある表現が奥ゆかしくも、やや重々しい演奏。その違和感も素晴らしい。

 天才的名曲「ラプソディ・イン・ブルー」は、カットがない(8:30頃)のが貴重なんです。ピアノ協奏曲ヘ調より、ずっとまとまりの良い演奏に仕上がっていて、オーケストラも快調。ピアノは繊細で、肌理細かい表現だけれど、この曲こそ「ノリ」が重要なんです。基本的なリズム感が「Jazz」じゃない〜これはプレヴィン盤(コステラネッツ)を聴けば、よ〜く理解できる。

 「仕事一筋のお父さんが派手な衣装着て、慣れない芸で冗談連発」風演奏で、このやや堅苦しさもたまらない魅力。Gershwinはどんな演奏でも楽しめそうですね。いちどベルリン・フィル/ポリーニ辺りで演奏していただけないものか。

 初期NAXOS中では出色の優秀録音で、細部の聴き慣れないパートまでしっかり聞こえるし、奥行きが気持ちヨロシ。では、口直しにプレヴィンでも聴きましょう。(2002年5月18日)以下のお恥ずかしい文書はそのまま。


 お気に入りの曲。中古レコード屋さんで500円だったので買ってしまいました。(あまり通常価と変わらない?600円で買っている人もいるらしいので)NAXOSとしては比較的初期の録音で、ハイマンもセルビーもその後の録音はないはず。感じるところの多い演奏でした。

  • 良いところ
 ジャケットの絵−ピアノの鍵盤にマンハッタンの風景がコラージュされている。カッコいい。
 録音−定位がはっきりとしていて、奥行き、分離、残響とも理想的。
 ハイマンのオーケストラ−解説によるとこのひとは長年ボストン・ポップスのチーフ・アレンジャーだったそうで、ゴージャスなオーケストラの響きは出色。

・・・・・・・で、初めてこの曲を聴く人にお勧めしても大丈夫です。

  • 苦しいところ
 オーケストラに軽快さがなく、野暮ったい。「パリのアメリカ人」における、クラクションを模した管楽器なんかも、リアル過ぎて単に外した音に聴こえます。ヴァイオリン・ソロもシリアスな雰囲気がなんとも不思議。最後までリズムに乗り切れない感じです。

 ピアノは繊細でていねい、リリカルな味わいが美しいけれど、大人しいのが難点か。オーケストラは真面目すぎて、リズム感が弱く、ピアノ協奏曲の最終楽章などは、加速するピアノ・ソロにバックは付いていっていません。

 初めて聴くような楽器のパートがたくさんあるのは貴重な体験。管楽器の音色が生真面目すぎて、ホルンの美しいヴィヴラートなどそうとうの違和感があって、逆にじゅうぶん楽しめます。

 それでも名曲は名曲。買ってから1週間けっこう何度も聴きました。この3曲は「黄金の組み合わせ」なんです。「Gershwinはアメリカの演奏でなくちゃ」なんていうのは、狭量な先入観。


 その後、メールをいただきまして、「キャサリン・セルビーはナクソスでマルティヌーのピアノ・トリオを、リチャード・ヘイマンはロシアもの中心のポピュラー管弦楽曲集を入れています。」とのこと。いい加減なことを書いて済みませんでした。(1998年)


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written by wabisuke hayashi