Franck ピアノ五重奏曲ヘ短調
(ホルヘ・ボレット(p)/ジュリアード弦楽四重奏団)


LP時代のデザイン Franck

ピアノ五重奏曲ヘ短調

Wolf

イタリアのセレナーデ

ホルヘ・ボレット(p)/ジュリアード弦楽四重奏団

CBS Masterworks M 36701 1978年録音

 Jorge Bolet(1914ー1990キューバ→亜米利加)は往年の名ピアニスト。見るからマッチョなピアニスト+亜米利加の腕利き弦楽四重奏団とこの官能的にデリケートな作品との相性やいかに。別にお仏蘭西本場を求めないけれど、偶然お気に入り作品はその辺りばかり聴いておりました。出会いはリヒテル/ボリショイ弦楽四重奏団の太古録音(コロムビア・ヒストリカル1000シリーズ)音質がよろしくなかった記憶が・・・(遠い目)。ジャクリーヌ・エマール(p)/レーヴェンクート弦楽四重奏団による往年の録音(1955年)はとても雰囲気があってお気に入りでした。

 第1楽章「Molto moderato quasi lento」(とても控えめに、ほとんどレントのように)。弦は男性、ピアノは女性を表現して、愛を呼び交わす官能的な楽章。例の如し魔法のような転調を繰り返す美しい旋律連続、上記フランス勢とはずいぶんと雰囲気が違って、男性(弦)の巧みな誘いに、控え目に応える女性(ピアノ)に非ず、ピアノ弦とも官能と疾走の対比がメリハリしっかり、かなり激高して盛り上がる”マッチョな”演奏です。テンポの動きも頻繁、デリケートな部分の描きこみは見事だけれど、疾走部分は体育会系に過ぎて(ド・シロウトがイメージする)お仏蘭西なイメージからは元気良過ぎ、急ぎ過ぎ、表情の変化は明快に過ぎる感じ。

 上手いけどね。(16:22)

 第2楽章「Lento,con molto sentimento」(とても遅く、情感を込めて)。シンプルなピアノの和音に乗って、ヴァイオリンが優しく、切なく、寂しく歌う開始。馴染みの第1楽章の主題が変形されたものは「循環主題」というのでしょうか。やがて少しずつ姿を変えて淡々と、そして妖しくも淡々と音楽は進んで・・・走りそうになるのを抑えている感じ。仕上げはていねい、ピアノの芯はしっかりとしてニュアンスに充ちておりました。(11:10)第3楽章「Allegro non troppo ma con fuoco」(速く、あまり熱烈ではなく)は不安げな第2ヴァイオリンの細かい音形(調性不明)が焦燥感を呼ぶ開始。やがてすべてのパートがリズム(3/4拍子)に乗って、勢いのある全貌が見えてまいりました。弦とピアノの呼応はかなり雄弁に力強いもの。聞き覚えのある前楽章の主題が幾度も繰り返され、情熱的に疾走するラストもみごとに決まっております。(9:13)

 Hugo Wolf(1860ー1903墺太利)の「イタリアのセレナーデ」は彼の珍しい声楽以外の作品。気まぐれに表情を刻々と変える剽軽な雰囲気は大好き。ジュリアード弦楽四重奏団って、巧くて細部明晰が過ぎる感じ。もっとエエ加減な、というか流したような演奏が似合う作品かと。(6:38)

(2018年12月24日)

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written by wabisuke hayashi