Franck ピアノ五重奏曲ヘ短調(アルフレッド・コルトー)
Chausson ヴァイオリンとピアノ、弦楽4重奏のためのコンセールニ長調(ヤッシャ・ハイフェッツ)


Franck  

ピアノ五重奏曲ヘ短調

アルフレッド・コルトー(p)/インターナショナル弦楽四重奏団(FM放送よりエア・チェック RR5282のLPとのこと)

Chausson

ヴァイオリンとピアノ、弦楽4重奏のためのコンセールニ長調 作品21

ヤッシャ・ハイフェッツ(v)/サンロマ(p)/ミュージカル・アート弦楽四重奏団(FM放送よりエア・チェック SRA7791のLPとのこと)

 「エア・チェック」といっても、貴重なライヴみたいなもんではありません。きっとCDも出ていることでしょう。別々の放送でしたが、この度MDにて組み合わせました。ワタシは1980年代当時、近所のヘンな店でSANYO製C60のカセットを@100でたくさん購入しており、それで録音したもの。

 MDってせいぜい200円くらいでしょ。品質のばらつきもない。便利な世の中になったものです。当時、歴史的録音はずいぶんとエア・チェックした記憶がある。針音もなつかしいが、音質はまぁまぁでした。

 フランクのほうは、LP時代リヒテル/ボリショイSQの演奏(1956年録音)で聴いておりました。リヒテルには新しい録音もあって、得意の曲らしい。ピアノと弦で男女の官能を表現しているそうで、初演当時は物議を醸したらしい。たしかに、もっと新しい録音、思い入れタップリの演奏で聴くと、そう聞こえてくる。ヴァイオリン・ソナタと並んで、彼の魅力噴出の名曲。

 ワタシはコルトーをよく知っているようなオールド・ファン世代ではないものの、線の太さというか、濃厚な味わいはしっかりと感じ取れる。先入観かも知れませんが、こういう音楽には一緒独特の「香気」が必要で、薄味過ぎても、辛すぎてもいけません。弦の団体はネーミング的に臨時編成っぽい(ほんとうにあったのかも)かんじですが、ときどき聴かれる上品なポルタメントがなんともいえない。

 ショーソンのほうは「レ・ミュジシャン」盤とは対極にあるもので、演奏時間で約10分短い超特急。(聴いた感じでは、そうとも思えない)いつもながら、ハイフェッツを中心とした本当の「協奏曲」(もちろん室内楽だけれど)となっていて、ソロ・ヴァイオリンばかり目立ちます。いつもどおりの天衣無縫の演奏ぶりで、夾雑物がいっさいないような、楽器そのものが自然に鳴っているような煌めくヴァイオリン。

 官能性は薄れていて、もっと純音楽的な〜というか、別な曲を聴くかのような〜演奏。おそらく、ハリウッド辺りの録音で、演奏家もアメリカで活躍した方々でしょう。「粋」とか「フランス特有の香り」(そんなのまやかしで、余計だ、という人もいるでしょう)とはほとんど無縁で、別な意味で完成度は高い。聴きどころ(ワタシ、最高のお気に入りのひとつ)の「シシリエンヌ」も、あっさりスッキリとして、これはこれで悪くない。終楽章のリズムのノリは超一流。

 ハイフェッツの演奏はいつも、あっという間に終わってしまう印象がある。ほとんどコメント不能な名人の世界。別格。「21世紀も近いのに、なにを好んでこんな古臭い音源を・・・」なんて自分でも思いますが、捨てがたい魅力。「捨てがたい」どころか、現代では失われてしまった大切な「何か」が発見できます。


 2曲収録しても、まだ9分ほどの余裕がありました。ギレリスの1960年モスクワ・ライヴから、スカルラッティのソナタを数曲。最晩年ロカルノ・サンフランチェスコ教会のライヴに比べると、ずいぶんとタッチが強靱で驚かされます。それでも、弱音における芯のある美しい音色はさすが。でも、硬質すぎる。

(2000年9月3日)


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written by wabisuke hayashi