Grieg/Saint-Sae"ns ピアノ協奏曲(フィリップ・アントルモン(p)/
ユージン・オーマンディ/フィラデルフィア管弦楽団)


SONY CLASSICAL  MYK37805 Grieg

ピアノ協奏曲イ短調 作品16(1958年)

Saint-Sae"ns

ピアノ協奏曲第2番ト短調 作品22

フィリップ・アントルモン(p)/ユージン・オーマンディ/フィラデルフィア管弦楽団

SONY CLASSICAL MYK37805  333円(税抜)

 2004年、おそらく5年ぶりの再聴でしょうか。正直、当時のワタシは両曲ともピン!と来ていませんでした。やがてGriegの旋律の美しさに目覚め、ごく最近Saint-Sae"nsのピアノ協奏曲も、長い苦手トンネルを抜け出口の光が見えて参りました。フランスの名手・アントルモン(1934年〜現在は指揮者として活躍)若き日の録音はほんとうに気持ちのよい、爽やかな一枚と思います。録音も優秀。

 素晴らしい技巧ですね。技巧が技巧として無機的にならず、清潔感がある。Griegはしっとり瑞々しく粒が揃っているし、第2楽章は切々とした、しかも若々しい表情の清々しさ。終楽章は叩き付けるような表現も可能と思うが、むしろ軽快に、そして走りすぎない。大きく深呼吸するような静謐さもあって、バックはソロとピタリと寄り添う。

 Saint-Sae"nsも魅力的ですよ。劇的な作品だけど、明るく華やか、上品で素直なピアノが切ない。この曲って、こんなに泣ける旋律だっけ?オーマンディのバックが包み込むように味わい深い。(あの「ドン・ジョヴァンニ」序曲のようなオーケストラの大爆発にも品がある)第2楽章はユーモラスなタッチ。たいへんな技巧駆使にもリズムは崩れないで、流麗なる軽快さを失わない。

 最終楽章の驚くべき鮮やかな疾走にも、爽やかさが宿ります。デモーニッシュな切迫感ではなく、あくまで音色は清明で濁りが伴わない。全体としてテンポの揺れは最小限で、耳目を驚かせるような超・個性的な演奏ではないんです。軽快な、若々しい表現に、オーマンディは包み込むような美しいバックで支えておりました。

 ワタシはこの作品が好きになりました。(2004年10月27日)


 「悲愴」「ツァラ」と併せて3枚1,000円で買ったCD。例の紙パックのフランス製。Saint-Sae"nsの録音年は調べがつかなったけれど、Griegと同時期の録音でしょう。音の状態はきわめて良好。

 最近は、指揮者として有名になってしまったアントルモンは、録音時にはまだ20代中盤、LP時代からお気に入りでした。まともに聴いたことはありませんでした。このCDも「3枚1,000円」の数合わせで買ったものですが、拾いものの一枚となりました。

 Griegの名曲。パール盤は「霊感が足りない」と思って、まともなコメントさえ付けておりません。(反省。後、ちゃんとコメントも付けました)このアントルモン盤は、なんと爽やかでやすらぎに満ちた演奏でしょうか。聴き惚れてしまいました。

 力みがなくて、自然で繊細な歌い口が魅力です。ややゆったりめのテンポはオーマンディに従ったのでしょうか、粒の揃った肌理の細かい音色で恣意的な「揺れ」などどこにも見られません。激しさはないのですが、打鍵が濁ったり、空虚な走りがありません。

 フィラデルフィアのバックは豊かで、奥行きと暖かさがあり、若いアントルモンを包み込むようです。ミケランジェリ盤のように切れ味鋭く、聴いていて手に汗握るような興奮はありませんが、なんとも気持ちの良い演奏でしょう。

 久々に、Griegの一種ローカルな北欧の旋律を堪能しました。Griegって、どんな曲を聴いても懐かしく感じます。

 Saint-Sae"nsの第2番は、NAXOSのビレット盤で初めて聴いた曲。この演奏が私の気に食わず、以来ほとんど聴いていませんでした。(洗練さがたりない)

 第1楽章における、叙情的な旋律のしっとりとした感傷。ベタついたり、重くなったりせずにサラリと聴かせます。第2楽章スケルツォの軽快で、玉を転がすようなピアノの音色の輝き。バックは抑えた響きながら、配慮の行き届いた繊細さ。フィナーレは、しっかりとしたテクニックで早いパッセージをこなしています。いっきに走り抜ける熱気に充分満足。

 オーマンディのバックは、例の「ドン・ジョヴァンニ」みたいな冒頭も、もの凄く密度の濃い音を出してますね。

 アントルモンは「これぞ」という個性に欠けるのでしょう。重厚さも不足。彼がCBSに盛んに録音していた時期は、新旧取り混ぜた個性派がゴロゴロ活躍していたのも、比較するとかわいそう。ところがいま聴くと、この素直さと爽やかさは貴重に思えてくるから不思議です。

 いうまでもありませんが、オーマンディのバックは絶妙で、こんな美しくて豊かな響きは滅多に聴けません。


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written by wabisuke hayashi