ENGLISH MASTERS
(Vaughan Williams管弦楽曲集〜クリストファー・シーマン/ロイヤル・フィル)


ENGLISH MASTERS(Vaughan Williams管弦楽曲集〜クリストファー・シーマン/ロイヤル・フィル) Vaughan Williams

「すずめ蜂」(アリストファネス喜劇のための組曲)〜序曲、第1間奏曲、台所用品の行進曲
グリーンスリーヴスによる幻想曲
トマス・タリスの主題による幻想曲
「舞い上がるひばり」(ジョナサン・カーニー(v))
イギリス民謡組曲

クリストファー・シーマン/ロイヤル・フィルハーモニー(1994年)

古いキャロルの旋律による前奏曲

ボストック/ミュンヘン交響楽団(1998年)

QUADROMANIA(membran) 222195-444 4枚組970円のウチの一枚

 ボウルト盤ジャッド盤は既にサイトに掲載しているが、この辺りの音楽はたいへんなお気に入りでして、たっくさんCDは買っているんです。ふだんあまり聴く機会の少ないバレンボイム(イギリス室内管/1973/74/75年DG)も意外なる清楚な美しさを誇るし、ボウルトの新しいほうの録音は盤石の貫禄であり、バルビローリも何曲かあったなぁ、ボートン/イギリス・ストリング管(NIMBUS)も・・・嗚呼、キリがない。

 クリストファー・シーマンって誰だか知らんが、真っ当だけれど大人しい演奏でしたね。・・・全体として陰影も色彩も足りない、気が抜けたような、精気なく小さくまとまっているような印象で、面白くない演奏に間違いない、けど、妙に気になる〜そんな感想を「音楽日誌」にも書きました。だいたいイギリス音楽を「大柄に、色彩豊かに・・・」というのも困りものだけれど、これはちょっと影が薄いんじゃないですか。

 「すずめ蜂」は、古代ギリシア劇に付けた音楽らしい(なんのことやらさっぱり要を得ない)が、快活でユーモラス、序曲は「熊蜂の飛行」ならぬ「すずめ蜂の飛行」描写なんでしょうね。一昔前の洋物アニメ伴奏音楽みたいでもあり、「元祖・スターウォーズ的」大衆的なテイストもあって、楽しく優雅なものです。「間奏曲」「行進」も然り〜人なつこい旋律は、RVWの特長のひとつでしょう。しっとりして生真面目なるアンサンブルだけれど、ハメを外すとかえって楽しめない作品かもね。

 問題は「グリーンスリーヴス」「タリス」幻想曲〜なんせ、古今東西名演奏犇(ひし)めいて、その序列に加わるには少々個性薄すぎ、おとなし過ぎか。いえいえ、虚心なる音楽愛好家であれば、淡彩な味付けから神髄を味わい尽くすのでしょう。響きが濁るわけでもない、余計なるテンポの動きやらタメ、詠嘆、涙・・・など、どこにも存在しない・・・さらさらと、涼しげな風が吹き抜ける・・・ただそれだけのことか。美しくないわけでは(おそらく)ない。ぼんやりしていると、いつの間にか音楽が過ぎ去っている、そんな儚い演奏です。

 「舞い上がるひばり」(The Lark Acending/誰だ?「揚げひばり」=唐揚げにした奴は。じつは春の季語)は、ヴァイオリン協奏曲的作品だけれど、ジョナサン・カーニーは「RPOレーベル」辺りでは指揮も(Sibelius など)しておりますね。このヴァイオリン・ソロの旋律が妙に遠く、落ち着いて、懐かしい。ひばりの視点から田園風景が広がって、空気がそよそよと揺れます。こんな作品は、ソロの個性が色濃く出ないほうが良いに決まってます。あまり、有名なヴァイオリニストの録音は存在しないでしょ?(ズッカーマンくらいか。ナイジェル・ケネディのがあったか)

 「イギリス民謡組曲」〜コレ、吹奏楽で作曲されたみたいですね。(あとで管弦楽に編曲したのかな?)以前ワタシは「初めて聴いても初耳とは思えない」作品とコメントしました。第1楽章 マーチ(行進曲) "Seventeen Come Sunday(日曜日には17歳)"/第2楽章 インテルメッツォ(間奏曲) "My Bonny Boy(マイ・ボニー・ボーイ)"+「グリーン・ブッシュズ」/第3楽章 行進曲 "Folk Songs from Somerset(サマーセットの民謡)"「朝霧を吹き払え」「高地ドイツ人」 「とっても高い木」 「ジョン・バーリーコーン」の旋律が引用される、もう抜群に楽しい作品。(ここの情報ネット検索より)演奏云々問題なし。以上、録音良好。

  CLASSCD 244。仮面劇のための音楽「ヨブ」などが含まれる ラスト、珍しい作品録音に傾注するボストック+ミュンヘン交響楽団(旧グラウンケ交響楽団)による「古いキャロルの旋律による前奏曲」〜存在さえ初耳。オリジナルはデンマークCLASICOのCDらしいが、ちょっと中途半端な収録かな?わずか6分ほどの作品。悲劇的な旋律であり、シーマンより主張が明快だけれど、オーケストラ技量は少々落ちます。

(2005年9月9日)

 

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written by wabisuke hayashi