Elgar チェロ協奏曲ホ短調
(コリン・カー(vc)/ヤン・パスカル・トルトゥリエ/BBCフィルハーモニック)


BBCmusicmagazine vol.1 No.11 Elgar

チェロ協奏曲ホ短調

コリン・カー(vc)/ヤン・パスカル・トルトゥリエ/BBCフィルハーモニック(1992年ライヴ)

GEORG LLOYD

交響曲第9番

作曲者/BBCフィルハーモニック(1984年)

BBC MUSIC MAGAZINE BBC MM111 購入価格失念(個人輸入)

 Elgarはお気に入りだけれど、(おそらくは日本では著名なる)チェロ協奏曲の暗鬱なる雰囲気は少々苦手としております。ジャクリーヌ・デュ・プレ入魂の演奏(1965年)の価値に些かの疑念もないけれど、あまりに痛切胸に刺さるようであって日常、安易に聴けません。パブロ・カザルス往年の名録音(1945年)の苦渋に満ちた重苦しさも同様。ロストロポーヴィチ(1958年)だと、骨太で色気あり過ぎ〜と言いたい放題。

 コリン・カー(COLIN CARR)は知名度低いが、英国王立アカデミーの先生らしい。柔らかく、優しいチェロ。第1楽章「アダージョ−モデラート」は雄弁方向ではなく、抑制が利いて落ち着いた詠嘆+しっかりスムースなる技巧(ラストの拍手までライヴとは気付かない)。つまり、ジミでしっとり淡々と静謐、ということです。第2楽章「レント」は、非常に細かい音型旋律(スピッカート?)が完璧にコントロールされて見事であります。あくまで叫ばない表現、とても静かなんです。

 第3楽章「アダージョ」も、旋律の歌い口はあくまで囁くように穏やか。ここでは安寧のテイストが支配して、ほっとする安らぎ有。終楽章「アレグロ」に悲劇は再開するけれど、地味なモノローグは続きます。劇的に全曲を締め括ろうとせず、粛々と音楽は進みました。でも、やっぱり暗いよね、この音楽。

 相変わらずBBCフィル(マンチェスター)は上手いですよ。英国ものを演らせればピカイチ。ヤン・パスカル・トルトゥリエは繊細な味付けで、アンサンブルも極上。ややオフ・マイクだけれど、会場の奥行き残響充分で瑞々しいライヴ。

 GEORG LLOYD(ジョージ・ロイド1913-98年)の交響曲第9番(調性不明)は、3楽章28分ほど。親しみやすく、明るく、ユーモラスな味わい溢れました。典型的な穏健派英国音楽でして、作風は平易軽妙でわかりやすい。忘れ去られるには惜しい作品でしょう。

 剽軽で軽快繊細なるリズムの第1楽章、現代音楽に付き物の不協和音やら激しい騒音とは無縁。第2楽章(ラルゴ?)には不安の影が・・・御詠歌風な、うだうだした旋律が続いて厭きるか?という辺りで変化や、(ちょっぴり)盛り上がって頑張っております。最終盤、悲劇的な爆発が来て終楽章へなだれ込み。

 きらきら(打楽器?)+金管のファンファーレが典型的旋律であって、すっかり牧歌的な明るい世界が舞い戻っております。そして劇的な幕切れは・・・最後まで起こらない。楽しげに、安穏に締め括られて、これが英国音楽だ。

(2009年6月5日)

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written by wabisuke hayashi