Elgar オリジナル・テーマによる変奏曲集「エニグマ」作品36
(アンドレ・プレヴィン/ロイヤル・フィル)
Elgar
オリジナル・テーマによる変奏曲集「エニグマ」作品36(1985年)
行進曲「威風堂々」作品39(全5曲/1986年)
アンドレ・プレヴィン/ロイヤル・フィル
愛の挨拶
ピンカス・ズカーマン(v)/マルク・ナイクルグ(p)(1984年)
PHILIPS GCP-1046 中古500円
これぞ英国!極めつきの逸品でございます。棚中にはエイドリアン・ボウルト、ジョン・バルビローリ、ピエール・モントゥー、アレクサンダー・ギブソン、ノーマン・デル・マー、チャールズ・マッケラス、ベルナルト・ハイティンク、アンドルー・デイヴィス、レナード・スラットキン・・・まだあるかも(作曲者自演とか)、つまりお気に入り中のお気に入り作品ということ。演奏の良し悪しなどとてもだけれど云々出来ぬ、というのはどれも各々魅力溢れる個性を持っているからなのでしょう。このCDは2006年3月入手とのレシートが入っておりました。オリジナル(PHCP-1695)はもう廃盤でしょう。日本では人気ないからなぁ、英国音楽は。音質は極めて鮮明、奥行き空間自然、オーケストラのサウンドが素直に捉えられたもの。
1929年生まれ、この録音時点56歳、知力体力経験充実、穏健派としてムリのないバランス個性表現全開の時期だったのでしょう。ロイヤル・フィルって時に荒々しい金管爆発!イメージあるけれど、ビーチャム以来のグラマラス+上品なサウンドは健在。演奏云々のことは言及不可。
「主題」アンダンテ ト短調。開始〜前半部分は音量小さくて音量水準低過ぎ?かと思ったら、後半凄いからほんまに抑制された哀愁の旋律にて開始。わずか1:16、プレヴィンの味付けは入念を極め、そして粘着質に非ず。第1変奏L'istesso tempo 「 "C.A.E."」愛妻キャロライン・アリス・エルガー(Caroline Alice Elgar)の頭文字。この憂鬱優雅なる旋律こそ英国の幽愁であります。金管がみごとに盛り上げ、静かに次へ。第2変奏 Allegro 「"H.D.S-P."」ヒュー・デイヴィッド・ステュアート=パウエル(Hew David Stuart-Powell)ピアニストらしい。ちょっと不安げ、落ち着きなく走り抜けました。
第3変奏 Allegretto 「"R.B.T."」リチャード・バクスター・タウンゼンド(Richard Baxter Townsend)アマチュアの俳優・パントマイマーなんだそう。ユーモラス、明るく愉しげな表情が思い浮かびます。第4変奏 Allegro di molto「 "W.M.B."」ウィリアム・ミース・ベイカー(William Meath Baker)地主?かなり迫力と厚みのある、快活な音楽。第5変奏 Moderato 「"R.P.A."」リチャード・P・アーノルド(Richard P. Arnold)この人もピアニスト。優しい微笑みと哀切が交互します。
第6変奏 Andantino「"Ysobel"」イザベル・フィットン(Isabel Fitton)ヴィオリスト。ヴィオラが活躍してますね。平易穏健なる旋律。第7変奏 Presto 「"Troyte"」建築家アーサー・トロイト・グリフィス(Arthur Troyte Griffiths)。ティンパニが滅茶苦茶カッコ良く大活躍、金管の咆哮はめざましい大迫力、第4変奏 「 "W.M.B."」よりいっそう快活、華やか。第8変奏 Allegretto 「"W.N."」ウィニフレッド・ノーベリー(Winifred Norbury)。お友達?くつろいだ、安寧の雰囲気に充ちております。
そして、ここ白眉。第9変奏 Adagio「"Nimrod"」。アウグスト・イェーガー(August Jaeger/楽譜出版社ノヴェロの人)にエルガーが付けた愛称。万感迫る黄昏風景眼前!きっとこんな素敵な音楽にて表現された友人は立派な人格者だったのでしょう。4:12で終曲に次ぐ長さ。アンコールにもよく使われるけれど、こればかり20分ほど延長してくださらぬか。静々と始まり、やがて金管のクライマックスがやってきます。第10変奏「間奏曲」 Allegretto 「"Dorabella"」ドラベッラ(綺麗なドラ)、ドーラ・ペニー(Dora Penny)の愛称。ようわからんがこの変奏曲に登場する友人の親戚筋のお嬢さんらしい。木管の可憐なフレーズは彼女の声や笑い方の模写とのこと。
第11変奏 Allegro di molto「"G.R.S."」。 ジョージ・ロバートソン・シンクレア(George Robertson Sinclair)はオルガニスト、しかし、この元気の良い疾走は飼い犬Dan(ブルドッグ)の描写らしい。愛犬家ですね。第12変奏 Andante「"B.G.N."」ベイジル・G・ネヴィンソン(Basil G. Nevinson)チェリストだから、チェロ大活躍。これがチェロ協奏曲へ至る、切々と美しくも深い旋律であります。第13変奏「ロマンツァ」 Moderato「 "* * *" 」昔の彼女?だから奥様の手前明示できんかったのでは、と類推。静かに内に秘めた情熱と甘美な想い出を連想させます。
第14変奏「終曲」 Allegro Presto 「"E.D.U."」。アリス夫人がエルガーを呼ぶときの愛称「エドゥー」(Edu)。まるで戴冠式のような荘厳さがあり、打楽器大活躍、自信を以て金管が勇壮に鳴り響き、第9変奏「"Nimrod"」が懐かしく再現されます。ロイヤル・フィルの金管って、露西亜風強烈でもなく、独墺系深々としたものでもなく、一種爽快な切れの良さを感じさせました。
最高。満足。
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「威風堂々」(Pomp and Circumstance)って誰が訳したの?これは凄い名訳でっせ。プレヴィンの表現は抑制が利いて上品爽快、それでも華やかさに欠けておりません。金管爆発の魅力を手っ取り早く堪能するにはこちら、お勧め。音質も良いですね。本日はこんなもんで。 (2012年8月12日)
【♪ KechiKechi Classics ♪】 ●愉しく、とことん味わって音楽を●
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