Elgar 交響曲第1番 変イ長調 作品55/
序奏とアレグロ 作品47
(尾高忠明/BBCウェールズ・ナショナル交響楽団)
Elgar
交響曲第1番 変イ長調 作品55
序奏とアレグロ 作品47(弦楽四重奏と弦楽合奏のための)
尾高忠明/BBCウェールズ・ナショナル交響楽団
BIS KKCC-2193 1995年録音
1987-1996首席指揮者時代の録音。このオーケストラをちゃんと拝聴したのは初めてかも。シノーポリの雄弁、ショルティの骨太筋肉隆々演奏に驚いた記憶(良し悪しに非ず、個性として)有、こちら対照的に英国の落ち着いた味わい+日本人らしい細部繊細な描き込み、磨き上げがみごとな完成度であります。とても地味であり、音量も小さいのは録音の加減でもないしょう。鳴らないオーケストラではなく、音量を抑制しても、見通しよろしく明晰、打楽器の低音もみごと。もとよりお気に入りの作品、新旧十数種の在庫有、最近聴く機会が減っておりました。(上記、色濃い演奏拝聴以来)日本では人気薄き英国音楽、Sibelius 並みの人気出ても不思議ではない、含羞と抑制に満ちた清涼サウンドを堪能いたしました。(「音楽日誌」2013年9月)
なぜ第2番の録音が実現しなかったのか、残念に思う立派な録音でしょう。ウェールズのBrangwyn Hallは残響たっぷり、豊かに瑞々しい優秀録音、やや音の芯をしっかり捉えるのに苦労するほど。第1楽章「Andante. Nobilmente e semplice − Allegro」序奏の悠然たる歩みは前編を支配して、いかにも英国紳士風泰然とした開始。主部に入るとガラリと風情を変えて疾走し、爆発するところ。日本の紳士はていねいな細部仕上げ、記憶ではいくつかパワフルぶりぶり金管を鳴らす演奏に記憶はあるけれど、あくまでバンランス重視に抑制が効いておりました。線が細いと評する人はいるかも知れないけれど、スケールやら力感に不足はありません。(20:45)
第2楽章「Allegro molto」は怪しく弦がうごめいて、やがてカッコ良い舞曲へ。勇壮な行進曲風でもあります。急がず、慌てず、歩みはしっかり着実に力強いもの。仕上げは細部迄ていねい、デリケートにニュアンスもたっぷり仕上げてオーケストラは美しい。(7:05 アタッカで)第3楽章「Adagio − Molto espressivo e sostenuto」へ。この作品の白眉、夢見るように美しいところ。優雅な冒頭主題は第2楽章”怪しく弦がうごめいて”いたものと同じ、テンポを変えただけらしい。これって「エニグマ」変奏曲の一番美しいところを寄せ集めた感じでっせ。表現は極上に繊細、脂っこい雄弁に非ず、そっと息を潜め、しっとりと床しい抑制を前提に自然な陶酔と高揚がいつかやってくる・・・ベルリン・フィルとかシカゴ交響楽団とか分厚いきらきらサウンドでは、この清涼さ、淡彩な美は実現できぬものでしょう。ほとんど消えゆくようなラストも名残惜しい。(13:02)
第4楽章「Lento − Allegro − Grandioso」。バスクラリネットが静かに不安な幕開けを告げ、やがて第1楽章冒頭の主題が回帰しつつ新しい動機が生まれました。最初は全楽章の静謐な陶酔風情をずっと引きずって、やがて風雲急を告げるテンポアップへ。弦の味わい深い渋い音色、絶品。やがて高らかに管楽器が参入してクライマックスを形成しても、サウンドに強烈な威圧感なく、歩みはいかにも着実に走らない。打楽器の低音はしっかり存在を主張して、この抑制は音質問題に非ず、尾高さんの指示なのでしょう。タメは最低限、常に適正なテンポを感じさせました。クライマックスへの導きにもムリがない。(13:02)
序奏とアレグロも大好き、弦楽四重奏と弦楽合奏が絡み合う凝った合奏協奏曲風。力感溢れる合奏に、楚々とソロが応える絶妙な掛け合い、BBCウェールズの弦はほんまもんでっせ。ほとんどため息のようなステキな作品、そしてデリケートな演奏でした。(14:12) (2019年11月23日)
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