Dvora'k チェロ協奏曲ロ短調(ヤーノシュ・シュタルケル(vc)/
ウォルター・ススキンド/フィルハーモニア管弦楽団)


EMI 5 68745 2 Dvora'k

チェロ協奏曲ロ短調

Ernst von Dohnanyi(1877-1960洪牙利)

チェロと管弦楽のためのコンチェルトシュトゥック ニ長調

ヤーノシュ・シュタルケル(vc)/ウォルター・ススキンド(Walter Susskind, 1913ー1980捷克)/フィルハーモニア管弦楽団

写真はEMI 5 68745 2 1956年録音

 

後、数回録音しているが、コレちゃんとしたステレオ録音なんですよ。いやはや巧いね、このチェロ。けっこう楽々・すいすいと演奏したみたいで、難曲を難曲と感じさせない。こだわりなく、けっこう素直に表現したみたいで、聴いていて気持ちがよい。なんか「燃えるようなパッションを!」「一演入魂!」的入れ込みじゃなくて、「このくらいはいつでも弾けるけんね」みたいな味わい有。ススキンドのバックは出しゃばらず、不足せず状態で、オーケストラも上手い。録音も予想外に上々。
・・・とは2003年のちょろコメント。Janos Starker(1924ー2013洪牙利→亜米利加)はブダペスト歌劇場、ブダペスト・フィル、ダラス交響楽団、メトロポリタン歌劇場、シカゴ交響楽団の首席を歴任。SP時代より超絶技巧を知られていた名人。

 おそらくはDohnanyiとの組み合わせがオリジナルなのでしょう。チェロ独奏の最高峰作品は久々の拝聴、1956年ステレオ初期とは思えぬかなり鮮度ある音質。十数年前の自分は”けっこう楽々・すいすい”と聴いたけれど、当時43歳壮年、気力体力充実した鮮やかな技巧と、朗々とした歌にあふれて爽快な演奏でしょう。熱気も充分、ススキンドのオーケストラも充分深みを感じさせる魅惑のサウンドであります。

 第1楽章「Allegro」ロ短調。冒頭暗くシンプルなクラリネット旋律(第1主題)が劇的な大音響に成長していく様子はDvora’kのワザ、フィルハーモニア管弦楽団の清潔清冽な響きも好ましいもの。とくに木管が美しい。やがて決然としたソロは同じ旋律で参入、力みのない余裕の開始を(当時)”けっこう楽々・すいすい”と聴いたのでしょう。懐かしい第2主題は例の如く郷愁に充ちた深い呼吸、こみ上げるような名旋律表現は力みなく、美しい弱音、微妙な陰影と表情の変化、細かいパッセージのテクニックはスムースに完璧、そしてオーケストラはピタリと息が合う。巧まざる熱気、ノリは緊張と緩和のバランスから生まれました。粗さのない、緻密な完成度でしょう。(14:19)

 第2楽章「Adagio ma non troppo」ト長調。メロディ・メーカーとしての実力が遺憾なく発揮された最高の緩徐楽章。ここもクリネット中心の木管より開始、そっと優しくチェロが参入いたします。木管とソロの掛け合い絡み合い最高、やがて弦が静かに幻想的に寄り添って、フィルハーモニア管弦楽団は弦も美しい。やがてト短調の慟哭絶叫に入って、チェロの嘆きは切々として、その表現は濃厚に過ぎない抑制を感じさせました。いかにも難しそうなアルペジオも楽勝、木管とのバランスはススキンドのワザなのでしょう。ホルンも上手いなぁ。難所であろうチェロのカデンツァも”けっこう楽々・すいすい”な感じ。木管は天空を飛び交う小鳥の歌のよう、ここのソロも弱音の抑制がお見事。(10:37)

 第3楽章「Allegro moderato」ロ短調〜ロ長調。ずんずんと力強く歩むリズムが印象的な開始、主題は「黒人霊歌風」なんだそう(Wikiによる)記憶ではトライアングルがデーハーに鳴り響くはずが、ここではあまり存在を感じないのは録音のせいなのでしょう。いかにも難儀そうな技巧を駆使するソロとオーケストラは渾身の爆発に掛け合い、この辺りカラヤン/ロストロポーヴィチの記憶だったらオーケストラの威力と色気、ソロの剛力ががっちり戦っていたはず。こちらややバランス重視の抑制表現でしょう。チェロの詠嘆の美しさに不足はありません。木管は色気より清潔を感じさせるもの。民謡風の第2楽章(Wikiによる)は懐かしいやすらぎでしょう。7:30辺り、ヴィオリン・ソロと掛けうところは白眉!やがて第1主題も回帰して大団円を迎えました。ラスト、ニュアンスと魂のこもったチェロ最高。燃えるようなパッション、一演入魂!ですよ。(12:27)

 Ernst von Dohnanyiの作品は初耳。夢見るような甘いメルヘン旋律連続、これは隠れた名曲でしょう。時代を考えるとずいぶんと浪漫な旋律、R.Strauss+Barber+メープルシロップを加えたみたい。シュタルケルは延々と余裕の歌心に、オーケストラの響きはちょっぴり濁って、これは録音のせいでしょう。(22:23)

(2021年10月23日)

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written by wabisuke hayashi