Dvora'k 交響曲第9番「新世界より」/第8番
(ズービン・メータ/ロサンゼルス・フィル)


DECCA UCCD-7111 中古500円 メータは若く、ハンサムですね Dvora'k

交響曲第9番ホ長調「新世界より」
交響曲第8番ト長調

ズービン・メータ/ロサンゼルス・フィルハーモニー

DECCA UCCD-7111(470 723-2) 1975年録音 中古500円にて購入

 

1962年〜78年の長期政権だったメータは、当時若手筆頭株として勢いを感じさせて下さったものです。明るい響き、やや粗削りな印象はいまいちか。(「新世界」)/ワタシはかつて、この時期のメータの録音をどれも快く感じていたはずだけれど、やはり、”味が足りない”、”表現が若い”、”細部が粗い”〜「新世界」と同印象となります。(2006年9月「音楽日誌」より)
これが数年前の感想となります。つまり久々の聴取、というか、イヤホンで集中して全曲聴いたのはほぼ初めてか。すっかり音楽に対する畏敬の念を失って反省するばかり。もっと大切に、ていねいに聴いてあげなくっちゃ。

 英DECCAの録音もよろしいですね。先のノイマン盤とは対極にある”効果最優先”のマルチマイク録音。金管はよく分離して聞こえるが、定位はいかにも(じつは)不自然なんです。ティンパニのキレが悪いのは音質云々とは別のことか。ま、オーディオ関係はワタシの縄張り範疇ではないが。(つい先日もメールにて叱られました)

 メータ39歳。時代が良かったのか、現在の若手にはこれほどの録音機会は与えられていないでしょう。Dvora'kはお気に入りの作曲家であって、懐かしい旋律を愛します。最近の演奏嗜好はノイマンでして、チェコ・フィルの都会的ではない懐かしい響き、穏健派表現にココロ癒されてります。月並みだけれど、故郷の望郷方向か。それに対してご当地「新世界」からのアプローチがあってもエエじゃないか。亜米利加のオーケストラは、優秀な録音をたくさん残しております。機能的であり、都会的であり、エネルギーに充ち溢れる演奏。

 当時のメータの人気ぶりを想像できる、熱気と勢い。「明るい響き、やや粗削り」「”味が足りない”、”表現が若い”、”細部が粗い”」のは、その通りで数年経ても同印象でした。CD一枚に2曲収録のせいか、もともとそうなのかは知らぬが、繰り返しがありません。テンポはいずれ中庸であって、陰影、郷愁の念、シミジミとした歌とは無縁だけれど、若さ、推進力、情熱がたっぷりあるんです。前向きの希望、パワーに溢れた、これも魅力ある「新世界」なんです。聴き手の体調がよろしければ、これはこれで個性であり、魅力と感じます。わかりやすさ、という点では(それこそ)若い人々に支持があるんじゃないか。

 ロサンゼルス・フィルはもともと馬力のあるオーケストラだったが、ウェットな弦、明るく良く鳴り響く金管が充実しております。細部神経質に整えたアンサンブルじゃないが、集中力推進力は凄いんです。豊満なるサウンド。旋律表現的には、ザッハリッヒに乾いてはいないけれど、詠嘆やら浪漫的な揺れとは無縁の、どちらかといえばストレート系(でもないかなぁ、悩ましい)で、細部微細な味付けを狙ったものではない。例えば「新世界」〜「ラルゴ」、第8番〜第3楽章(哀愁の旋律)いずれも”ウリ”の楽章だけれど、両作品終楽章とか、スケルツォとか少々喧しいところに真骨頂が現れております。

 けっこう楽しく、ウキウキして悪くないと思いますよ、世評は知らないが。実演での会場熱気、聴衆の熱狂が想像できる録音。堪能いたしました。但し、ワタシの華麗なる加齢(体力集中力の劣化?)のせいか、2曲続けは少々ツラい。愛する交響曲第8番ト長調、最終楽章まで辿り着くと、聴き疲れして細部の粗さが気になって参りました。それは聴き手責任なのでしょう。

(2008年5月30日)


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