Debussy 「こどもの領分」「ベルガマスク組曲」「版画」
(ペーター・レーゼル)


CCC edelclassics 0002822CCC  1981/80年録音 Debussy 

こどもの領分

ベルガマスク組曲

版画

ペーター・レーゼル(p)

CCC edelclassics 0002822CCC  1981/80年録音  14枚組2,000円弱にて購入したうちの一枚

 Debussyにはやや混迷を深めていて、管弦楽作品、声楽作品には(あくまで個人の嗜好として)違和感で馴染めないことも希にあります。が、室内楽、そしてピアノ作品だと、ほとんどその世界に素直に入り込んでたっぷり、文句なく愉しめました。世評はようワカラんが、LP時代はヴェルナー・ハースにて、CD時代にはベネデッティ・ミケランジェリにて〜いずれフランスの人ではありません。

 ペーター・レーゼルといえば現代独逸の代表的な現役ピアニストであり、Beethoven とかBrahms が似合う、地味ながらしっかりとした”芯”を感じさせるイメージ有。実際にはレパートリーが広いんでしょうね。”フランス音楽なら華やか軽妙なタッチで!”という先入観うち破る、しっとり味わい深い響きで 漆黒に鈍く輝くDebussyを実現して下さいました。

 細部を曖昧に流さないこと、雰囲気で聴かせないこと、安易に走らないこと、リズムが鈍重に陥らないこと、響きは濁らない〜生真面目すぎたり、タッチが無機的に陥らない、強音が威圧的にならないこと。そして、もちろん技術的に盤石なこと。このすべての条件が揃って、尚、「こどもの領分」はユーモラスで暖かく、こどもに対する無限の情愛を感じさせます。あくまで視点は大人側であって、繊細だけれど線は細くはない。テンポはゆらゆらとしないが、雪はちゃんとはかなく揺れるし、ゴリウォークは快活に踊って見せるんです。

 ベルガマスク組曲はワタシ好みの擬バロック的作品だけれど、実際はかなり手の込んだ、複雑なる音楽に仕上がっております。「前奏曲」から、いかにも重心が低いレーゼルだけれど、躍動とか華やぎに不足はない。「メヌエット」のとつとつした味わいは、正確な打鍵だけれどどこか巧まざるユーモア有。著名なる「月の光」は媚びることなく淡々としており、「パスピエ」もリキみなく、しかも陰影に富んだ表現であります。

 地味なんだけどなぁ、エエ感じの艶消しだ。

 「版画」は「塔(パゴダ)」(ガムラン音楽も含めたインドシナ民族音楽を模した、とのこと)から始まります。エキゾチックであり、かなり雄弁な音楽でもあります。レーゼルは深く沈殿するようにスケールが大きいですね。「グラナダの夕べ」は、誰が聴いてもわかるようにスペインのリズムと、アラビアの音階となります。四角四面なリズム感じゃないですよ。安定しているが、大きく、深く呼吸するような余裕のタッチ。

 「雨の庭」は、フランスを表現しているらしいが、どこが?慌ただしい、細かい音型が疾走(庭園に降りしきる雨だそう)して、レーゼルの技巧が光って躍動します。いや、ほんまに瑞々しい。金属的ヒステリックなサウンドとは無縁の、ハラにずしんと響くDebussy也。

(2008年8月29日)


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written by wabisuke hayashi