Debussy 牧神の午後への前奏曲(マルケヴィッチ/フィルハーモニア管弦楽団)/
夜想曲(モントゥー/ボストン交響楽団)/小組曲(アンセルメ/パリ音楽院管弦楽団)


Membran 232867/CD2 Debussy

牧神の午後への前奏曲

イーゴリ・マルケヴィッチ/フィルハーモニア管弦楽団(1954年)

夜想曲(雲/祭/シレーヌ)

ピエール・モントゥー/ボストン交響楽団/バークシャー音楽祭女声合唱団(1955年ステレオ)

小組曲(Bu"sser編)

エルネスト・アンセルメ/パリ音楽院管弦楽団(1948年)

Membran 232867/CD2 10枚組970円也

 つい最近購入した、とばかり思っていた激安10枚組BOX、以下のコメントは8年前とは! 時の流れも残酷なもの。ここ最近ちょっぴり”温故知新”My ルネッサンスに至って、歴史的音源を見直しております。21世紀に歴史的音源がパブリックドメインに至って激安CDセット出現、相場暴落して大量入手、やがてネット時代到来に最初に大量処分始めたのも昔の音源でした。手持ちCD在庫は最盛期の9割程断舎離して、それでも日常聴く音楽に不足することはない時代となりました。これは懐かしいルイド・フロマン再会に感慨があって、その流れで思い出したもの。三者三様往年の巨匠たちの個性、寄せ集めを感慨深く拝聴いたしました。

 Igor Markevitch(1912ー1983烏克蘭)によるモノラル時代の「牧神」は、ほんわかとした気怠い半音階旋律・・・なんだけど、明晰な響きが個性的なもの。野太いヴィヴラート少なめなフルートは個性的な存在感、ガレス・モリスと類推しました。Gareth Morris(1920ー2007英国)は1949ー1972年迄フィルハーモニア管弦楽団の首席、ほとんど絶滅した英国スタイル、木製フルートなんだそう。仏蘭西風セクシーな表現から遠く、かなりかっちりとしたストレート明快な響きでした。(9:45)

 「夜想曲」はPierre Monteux(1875ー1964仏蘭西)担当、1955年にしてちゃんとしたステレオ録音。ルイ・ド・フロマンには雰囲気豊かな怪しいローカル色を堪能して、こちらシャルル・ミュンシュ時代のボストン交響楽団は強烈!サウンドの芯、力強さ、艶やかさはケタ違いの輝かしさでした。(ミュンシュは1962年「雲」「祭」のみ録音) どんよりとした空の流れを描写した「雲」(7:06)リズミカルな打楽器ノリノリに感興湧き上がる「祭」(6:03)海の安全な航海を脅かす「シレーヌ」は打楽器の代わりに女声ヴォカリーズが加わって、神秘的なサウンドでした。(9:46)おそらくはこの作品のヴェリ・ベスト。

 「小組曲」はErnest Ansermet(1883ー1969瑞西)の旧録音。先のボストン交響楽団とは対照的にコシのない、アンニュイな曖昧なオーケストラのサウンド。1948年でも音質は悪くない、メルヘンに充ちた懐かしい作品旋律に似合って、しっとり雰囲気たっぷりでした。表現方向としてはマルケヴィッチと好対照でしょう。(3:51-3:07-3:16-3:06)

 CD一枚で46:06。ちょいと盛りが足りないけれど、集中して聴くにはちょうどよろしいくらいでしょう。

(2020年5月16日)

 Membranの歴史的録音は安いし、珍しい音源をたっぷり堪能できます。ほとんどパブリック・ドメインにてネットより音源入手可能な時代となったので、ここ最近はCD購入はお休み状態。これは2010年4月入手とのメモが残っておりました。「寄せ集め」というのも悪くはない・・・というのは若い頃、カセット・テープに次々とエア・チェックしていった性癖からくる嗜好なのでしょう。

 マルケヴィッチの「牧神」には、こんな音源もあったのか・・・的感慨も深い珍しい音源也(おそらくEMI)、ちょうどステレオに切り替わる直前の時期、やがて忘れ去られたのでしょう。ベルグラード(ベオグラード)・フィルとのステレオ録音(←既に棚中に存在しない)はかつて出回っていたけれど、こちらオーケストラの技量は桁違い、明晰、雰囲気で聴かせる演奏ではありません。但し、逆に少々ほんわかとした雰囲気が足りない、と感じるほどのキレ味。モノラルながら音質も良好です。

 ピエール・モントゥーの「夜想曲」は1961年英DECCA録音(ロンドン交響楽団)が有名、それには「シレーヌ」が含まれません。前年の「海」(こちらはモノラル/どちらもRCA音源)と並んで意外と知られていない、というか、入手しにくかった音源であって、リズム感の良さ、明快だけれど粋な雰囲気、オーケストラの上手さ、明るい響き(とくに「祭」に顕著)〜三拍子揃った演奏であります。この人は、なにを演奏しても強面な力みがないのだな。「シレーヌ」に於ける爽やかな広がりも上々。音質はまぁまぁ、と言っちゃ罰が当たる、時代を勘案すればどこに文句がある?的立派な水準でしょう。

 アンセルメの「小組曲」といえば1961年録音が著名、こちらモノラル旧録音も音質的な不備をほとんど感じさせません。アンセルメの十八番かな?気怠い、生暖かい、湿度の高い風情、たっぷり。スイス・ロマンドよりこちらパリ音楽院のオーケストラのほうが名手揃ってますよ。木管の朗々とした音色も夢見るように美しい。例の怪しいセクシー・ヴィヴラート満載のホルンも遠くで鳴っております。マルケヴィッチとは対極と言うことですよ。細部曖昧っぽいが、これほどの雰囲気満載というのも現代に消えてしまったサウンドなのでしょう。

 三者三様、個性を堪能すべき一枚也。

(2012年6月24日)


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written by wabisuke hayashi