Brahms (レジナルド・ケル)/Mozart (チャールズ・ドレーパー)クラリネット五重奏曲


JOY SOUND   KC1050 Brahms

クラリネット五重奏曲ロ短調 作品115

ブッシュ弦楽四重奏団/レジナルド・ケル(cl)(1937年録音)

Mozart

クラリネット五重奏曲イ長調K581

レナー弦楽四重奏団/チャールズ・ドレーパー(cl)(1928年録音)

JOYSOUND KC1050  1,000円(税抜)で購入

 1998年頃購入したと記憶しております。著作隣接権どころか、その遙か昔のSP復刻CDであって、楽曲・演奏者の詳細解説もていねいであって、どうやら国内生産らしい・・・閑話休題(それはさておき)、これは1,000円の価値(21世紀の現在にとっては少々お高い)は充分にあった、ということです。以下の文書はサイト開設当初のものだと思うが、表現ともかく思いとしても、その後変わらないどころか、加齢とともに、この方向でますます嗜好を深めている・・・ということです。

 Brahms の室内楽/ピアノ曲は、人生の苦みがつくづく染みるようになって、初めて目覚める・・・Mozart のこの作品は中学生の時から好きだったし、その世代世代の聴き方、楽しみ方があるのかも知れません。レジナルド・ケルは1981年までご存命だったし、たしか同曲でステレオ録音が存在したはず。(機会があれば入手したい)ほのかにヴィヴラートの掛かった夢見るような音色が魅力です。「ブッシュSQは燃える演奏です。熱くなって、テンポも上がります」・・・そう書いてありましたね。なるほど。

 第1楽章「アレグロ」には、たしかに交響曲を思わせるようなスケールもありました。しかし、第2楽章「アダージョ」は、息を潜めて緊密に絡み合うような、妖しい集中力は室内楽ならではの魅力でしょう。こんなセクシーで繊細に囁くような弦楽器(とくにブッシュのヴァイオリン)って、あまり聴いたことはないな。ケルのクラリネットは時に雄弁だけれど、詠嘆の節回しは少々クサいくらいでして、これほど表情豊かなBrahms も珍しいかも知れません。ここ、白眉。

 第3楽章のくつろいだ表情にも余裕があり、最終楽章に詠嘆と寂寥の念深まります。この楽章も入念であって、チカラ強い。

 録音は充分なんじゃないでしょうか。演奏者の息遣いか感じられるような、雰囲気豊かな〜むしろSPからの復刻であることが、いっそうノスタルジックな雰囲気を高めて〜立派な音質と感じました。

 Mozart の録音は、じつはCD最初のダブり買いでして、1991年に出た新星堂「モーツァルト室内楽の巨匠たち」(SGR-2008〜11  7,600円!税込)に「ハイドン・ドレーパー」表記で収録されます。(単純表記ミスですか?それともそんな慣用が存在するのか。音質はJOYSOUND盤のほうがよろしい感じ)これはレナー弦楽四重奏団の甘く、優しいポルタメントの魅力圧倒的でした。ドレパーのオーボエは素直でやや明るく、すっきりとした表情・・・ケルのとろけるようなヴィヴラートは存在しなくて、こちらのスタイルの方が淡々とオーソドックスか。

 第2楽章「アダージョ」は、薄もや霞が漂うようなバックにクラリネットが静かに呟きます。音質上の誤解もあるんだろうが、幻想的な甘美であります。続く「メヌエット」は、清潔でややそっけないソロに、微細なニュアンス(ポルタメントも!)を付けていって、この曖昧な、揺れるようなリズム感は現代では失われた味わい。

 聴き進むウチに、聴き手のココロは浄化されますね。Brahms では、切なくも遣る瀬ない感情に(感動しつつ)気分も滅入りちだけれど、Mozart には、すべてを突き抜けた天上の安寧が広がりました。音質云々はどこかに消え去りました。

(2005年11月11日)


 この辺りの録音になると、多分に海賊っぽいCDが格安で手に入ってしまいます。「何を好んでこんな旧い録音を・・・」と、自分でも思いますが、こういう歴史録音は「別腹」ならぬ「別耳」なのです。音の悪さは、まったく苦になりません。

 この2曲は至高のカップリングと思いますね。名曲横綱揃い踏み。オールド・ファン垂涎のブッシュとレナーの演奏。クラリネット・ソロも往年の名手。曲・演奏とも最高です。

 ブラームスのこの曲は、若いうちは好きになれませんでした。(LPでは、たしかランスロの演奏で所有していたはず)人生の黄昏を感じさせる甘く悲しい名曲は、やはりこどもができて、やがて大きくなっていって・・・・という経験をしないと理解できないのでしょう。

 ケルはステレオでもこの曲を録音していたと思うけど、ヴィヴラートのかかったちょっとセクシーな音色がたまりませんね。ブッシュSQは燃える演奏です。熱くなって、テンポも上がります。
 ところどころのルバートもいまでは聴けない貴重なもの。劇的な演奏は、そうスタイル的に古さを感じさせません。音も思いの外、聴きやすい。

 モーツァルトは、若ければ若いなりに、年齢を重ねれば重ねたなりに、様々に感動できる天才の業。虚飾を取り去ったシンプルで、完璧な旋律がひたひたと心の襞に染み込みます。

 ドレーパーは、クラリネット王国イギリスの演奏者だったはず。ケルとはまた違って、明快でまっすぐな音色が暖かい。レナーSQは、ブッシュどころではないトロトロのポルタメントが何とも云えず、聴いていて融けるような快感を感じます。

 もちろん昔風のスタイルなのですが、逆にとても新鮮。はかなげにテンポも揺れる。メヌエットの楽しげなリズムも出色です。フィナーレでテンポを落として、じっくり噛みしめるような名残惜しさも最高です。
 1920年代の録音とは思えない、けっこう状態の良い録音もありがたい。

 たしか、ブラームスはCBS、モーツァルトはEMIのオリジナル録音。これだけ旧い録音だと「著作隣接権」外ですから、きっと状態の良いSPから復刻したんだと思います。ま、海賊盤です。このシリーズは3枚ほどしか買っていません。


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