第2回『真貝裕司カスタネットコンサート&レクチャー』 (2003年3月)


第1部  ピアノとカスタネット、歌による演奏

1 ワルトトイフェル作曲 ワルツ「女学生」
中山真理(p)

2 アルベニス作曲 スペイン組曲第1集より「アストゥリアス」
中山真理(p)

3 シャブリエ作曲 狂詩曲「スペイン」
中山真理(p)

4 ファリャ作曲 はかなき人生より「スペインダンスNo.1」
中山真理、平川元子(p)

5 ビゼー作曲 スペイン・セレナード
江上規子(s)、渚智佳(p)

6 ララ作曲 グラナダ
石塚幹信(t)、中山真理(p) 7 ドリーブ作曲 カディスの娘達
江上規子(s)、渚智佳(p)

8 キアーラ作曲 スペインの女
松江小PTAコーラス、渚智佳(p)

第2部 カスタネット実験工房、新曲コーナー

1 真貝裕司作曲 お祝いのカスタネットU
真貝裕司と江戸川支部全員によるカスタネット演奏

2 中村彩子作曲 子供のためのカスタネット・アンサンブル「スペインのカスタネット」
江戸川区立松江小児童(賛助出演)

3 中村彩子作曲 Castamaniacs(新作)
橋本純子、平川元子(カスタネット)

4 向山千晴作曲 Mix-KODAMA 「木霊」〜カスタネット・ピアノ・電子音響の為の(新作)
菊地恵一(カスタネット)、向山千晴(p)

第3部 会場全員で楽しく!カスタネット・レクチャー

真貝裕司(スーパー・カスタネット)

2003年3月30日(日)  江東区亀戸文化センター(カメリアプラザ)3F『カメリアホール』
主催:札幌カスタネット協会・江戸川支部


 札幌カスタネット協会・江戸川支部という(名前だけ見れば怪しい、ジョーダンのような)団体があって、ワタシはそこで「幻の支部員」となっております。「幻」=実体のないことであって、ワタシはカスタネットにさわったこともない・・・・当然、2003年3月30日も山口方面に仕事で出張していて、この演奏会は聴いておりません。170名入ったとか。たいしたもの。

 で、当日の模様を収録したCDいただきました。真貝さんとはメールやらBBSでのやりとりはあるが、面識なし。札響の打楽器名手ですよね。ワタシとは別世界のエラい方(らしい)だけれど、写真を拝見する限り「Mr.マリック」の親戚筋かと見まがうばかり。(失礼)カスタネット、という軽視されがちの楽器の真の魅力と普及に情熱を燃やし幾年月。何事も道を究める人いうのは美しい。

 ま、CDだけではナマの迫力のごく一部しか伝わらないのだろうが、拙感想文を。せっかくCDもいただいたし。まずMC(マスター・オブ・セレモニー)のウーロン亭ちゃ太郎 (下町のオペラ落語創始者) さん登場。この方も写真でしか拝見したことがなくて、関西落語系にしか馴染んでいないワタシは、「きっと桂小枝みたいな、剽軽でお茶らけて、甲高い声なんだろうな」と想像していたけれど、大違い。いわば「ちょっと話しが上手な大学教授」といった知的クール方面風情でした。全編そう。

 で、真貝さんのカスタネット演奏はなんのコメントも出来ません。だって、CDでも「カスタネット・ソロ」なんてそうそう聴けませんからね、比べようがない・・・・では、サイトが成り立ちませんので、以下蛇足。非常に精密かつ正確であること。ピアノは旋律・音色・リズム的にも主役を張るべき楽器だけれど、完全に「カスタネット主導」ですよね。(おしゃべりも優しい)曲によって、カスタネットの音色とか、音程が違うからいろいろ使い分けているのかな。

 プログラム全体では、真貝さんだけでなく、他の方のカスタネットも聴かれますが、その響きの深さ、切れ味、正鵠を射たリズム感の違いに驚きます。前半曲目では、有名なる交響詩「スペイン」は、ワルトトイフェル版ワルツのリズムになっていたこと、平川さんも連弾伴奏した「はかなき人生」は、ワタシ大好きな哀愁のメロディがお気に入り。

 ソプラノの江上さんも、写真でしかお会いしたことがなくて、いやはやその千変万化する表情は完璧なコントロール。澄み切ってノビノビとしたソプラノの魅力全開。やっぱプロだなぁ。しかも「スペイン・セレナード」では自分でカスタネットを演奏しながら、ですよ。そりゃ、真貝先生のソロみたいにいかないが、ナマでは絶対絵になるはず。舞台姿は美しいんだろうな。

 テナーの石塚さんとは飲んだことがある。「大島部屋所属ですか」と思わず失礼なことを口走ってしまったが、その堂々たる体躯と髭面からは想像できないほど、うぶで若々しい(実際若いが)声の雰囲気があって、こりゃアルフレート役だな、と。(失礼ですか?)だって、第1部アンコールで「乾杯の歌」のソロを取っていたし。いやはや、江上さんのヴィオレッタも見てみたいもの。

 松江小PTAコーラスは、いわゆるママさんコーラスですね。カスタネットを使いながらの合唱なんて素敵。女声合唱にありがちの「弱さ」みたいなことは全然なくて、溌剌とした勢いがあって、さすが江上さんの指導の成果か。(途中のカスタネット・ソロは支部長?)


 第2部です。「お祝いのカスタネットU」〜これ、途中のちょんぼで会場に笑いがハジけたり、ノリノリで繰り返しのフレーズが続くと思わず拍手が沸き上がったり、これがCDでは様子がわからない。〜小学生による「スペインのカスタネット」(世界初演)登場。写真だけ見ても、こどもたちが可愛い!

 この作品ね、「いかにもスペイン」といったほのくらい情熱の旋律とリズム!で、カスタネット、鍵盤ハーモニカ、トライアングル、ピアノのためのもの。ぜひ、小学校の教育現場での活用を。楽譜もあります。ラスト、こどもたちの「オレ!」の掛け声には涙出そう。いじらしくて。

 「Castamaniacs」は「キャスタマニアック」とお読みするするそう。真貝先生とアマチュア二人による、そうだなぁ、なんせ旋律がないでしょ?リズムの複雑なる組み合わせの連続だから、聴いていて「おおっ!」という驚き有。これ難曲だし、アマチュア勢お二人は知り合いだからなんだけど、真貝先生とのソロの違いはもうはっきりわかります。これ、なんとか演奏機会増えませんかね、カスタネットのナマの魅力が凄くわかりやすい。(でも、そうカンタンにソロを3人集められないか)

 向山千晴さんもメールのみのお知り合いだけれど、「作品が出来る前に”解題”が出来ていた」という「木霊」〜これは、電子音楽も駆使して、まったく幻想的。たしかに厳しい冬に北海道の森林の「木霊」が会場を飛び交います。「Castamaniacs」とこの作品は、まったく新鮮で「現代に生きる音楽」として一本立ちしておりますね。カスタネットを生かす切り口が180度違うのも素晴らしい。


 第3部は何人くらい会場にいらっしゃったんでしょう。聴き手も自らカスタネットを持って、真貝先生のレクチャーを受けます。その語り口に溢れる、カスタネットに対する愛情はCDでも伝わりました。会場のアツい雰囲気もね。事務局の方々ご苦労様でした。赤字も出ずにめでたい。(2003年5月11日) 


【♪ KechiKechi Classics ♪】

●愉しく、とことん味わって音楽を●
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written by wabisuke hayashi