Schubert 交響曲第8番ロ短調「未完成」/
Bruckner 交響曲第9番ニ短調
(ギュンター・ヴァント/ベルリン放送交響楽団/1993年ライヴ)


Profil PH09061 Schubert

交響曲第8番ロ短調「未完成」

Bruckner

交響曲第9番ニ短調

ギュンター・ヴァント/ベルリン放送交響楽団

Profil PH09061 1993年ライヴ

 2018年来の再聴。

 このコンサートの少々あと、FM放送からの拝聴には心より感動した記憶も鮮明、エア・チェックして愛聴しておりました。現ベルリン・ドイツ交響楽団はウラディミール・アシュケナージ時代(在任1989-1999年)重心の低い渋いサウンドは驚くほどに深みと落ち着きある洗練でした。ライヴ音源の音質は上々。

 サウンドにしっかり芯を感じさせて馴染の「未完成」は、古典的二管編成+ティンパニ。誰でも知っている名曲を新鮮に、意味深い神秘、感動的に受け止めたのも滅多にない経験でした。おそらくいままで聴いた中でヴェリ・ベストでしょう。
 第1楽章「Allegro moderato」神妙な第1主題はGu"nther Passin(1937ー2014独逸)のオーボエ、クラリネットはだれかわからないけど絶品の音色。地の底から響き渡る低弦の明瞭な響き、充実した金管、むせ返るような硬質な浪漫。ティンパニのアクセントが、これほど的確と感じさせる演奏にもめったに出会えません。(15:29)
 第2楽章「Andante con moto」スムースな静謐さえ痺れるような弦は洗練された響き。静謐と激情のみごとな対比。ここでもギュンター・パッシンのの透明なオーボエは絶品、もちろん遠いホルン、フルートも。基本入念なイン・テンポだけれど、ラスト名残惜しい、わずかなテンポ・ダウンの効果も絶大でした。(12:39/拍手はカット)

 このコンサートは「未完」連続。Gu"nter Wand(1912-2002独逸)Bruckner 交響曲第9番ニ短調をいったい幾度録音したのでしょうか。これが最初に聴いた彼の演奏、その巨大な静謐さに打たれました。三管編成、8本のホルンのうち4本はワーグナー・チューバ持ち替え+ティンパニ。
 第1楽章「Feierlich, Misterioso(荘重に、神秘的に)」寄せては返す遠浅の浜辺のさざなみ、そこに強烈な朝日が!そんな始まりにホルンは荘重、神秘な深淵サウンドは前曲同様、夢見るように美しいオーボエはここでも際立った存在でした。弦の弱音は練り上げられた洗練、荘厳に厚みのある金管の爆発対比は余裕、響きは濁らず慌てず、しっかり地に足につけて走らぬ怒涛の巨大なる音楽。現ベルリン・ドイツ交響楽団の充実ぶりに痺れました。(26:37)
 第2楽章「Scherzo. Bewegt, lebhaft - Trio. Schnell(スケルツォ。軽く、快活に - トリオ、急速に)」そっと速めのテンポから、重量級にアツいティンパニの激打はまるで法華の太鼓の熱狂。乱舞する分厚い金管の躍動、トリオはそっと優しく抜いた息抜きでした。(10:47)
 第3楽章「Adagio. Langsam, feierlich(アダージョ。遅く、荘重に)」緩徐楽章迄の未完成作品なのに、妙に人生の達観を感じさせて、感極まるフィナーレ。天井に登るように高揚する弦に、金管が荘厳に最後の審判風ダメ押し。抑制されたワーグナー・チューバのコラールは「生への決別」を表現しているんだそう。やがて精神的に鎮静した弦が深々と歌い、木管が天空を駆け、それをワグナー・チューバが受ける・・・静謐とゴリゴリとした骨太怒涛の金管大爆発(不協和音)の対比は完璧なコントロール。弦もホルンもほんまに美しく、ラスト消えるようなホルンは天国への入口でした。(26:40)

(2025年9月13日)

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written by wabisuke hayashi