Bruckner 交響曲第4番 変ホ長調
(上岡敏之/ヴッパータール交響楽団)


EXTON OVCL00546 Bruckner

交響曲第4番 変ホ長調(ハース版)

上岡敏之/ヴッパータール交響楽団

EXTON OVCL00546 2014年録音

 この作品はわかりやすい浪漫的な旋律を誇ってわかりやすく、人気は高いでしょう。二管編成?意外と小さいのですね。ホルンが大活躍するから、もっと大きいのかと思っておりました。出会いはブルーノ・ワルター/コロムビア交響楽団(1960年)中学生時代に聴き過ぎて後年、ちょいと苦手意識がありました。上岡 敏之さん(1960-東京)は独逸をベースに活躍しているそう。Wuppertal は西部独逸の工業地帯、36万人くらいの街らしい。このオーケストラは初耳、骨太なパワーに足りないけれど、予想外にしっかりとしたアンサンブル、繊細な集中力に不足はないと聴きました。録音は残響豊かにややオフ・マイクだけど上々でしょう。例の如し、版のことは詳細理解しておりません。

 第1楽章「Bewegt, nicht zu schnell」は慌てず走らずテンポは遅め、たっぷり間をとって金管が突出することがない。冒頭、遠いホルンの個性魅力はいまひとつ。緻密な集中力が続いて、低音や厚みに少々足りない線の細さ、ていねいにデリケート、クールな仕上げ。それでも鳴り渡るオーケストラの響きはバランスよろしく、渾身の力を込めて、清涼に爽快、淡彩に力みはありません。勢いづいて煽ったり、そんな表現とは無縁に悠々と締め括りました。(22:10)

 第2楽章「Andante, quasi allegretto」は寂しげな緩徐楽章。ここも音像が遠く静謐、弦も金管も繊細淡彩にデリケートなサウンド、表現が続きます。テンポはほぼ中庸、静かにリズムを刻んで、陰影豊かな表情付け。やがて浮き立つように徐々に淡々と情感は高まります。このオーケストラの各パートはほんまにジミですね。(14:53)

 第3楽章「Scherzo: Bewegt - Trio: Nicht zu schnell, keinesfalls schleppend」ここのテンポも中庸。細かい音形は正確に、爽やかに流れよろしくScherzoはBrucknerのキモ、かなり力強い熱を感じさました。トリオの間の取り方、情感の揺れも上出来。(11:15)

 第4楽章「Finale: Bewegt, doch nicht zu schnell」ここは全曲を締めくくるのがちょっと難物なところかと。冒頭第1楽章のホルンが切迫感を以て再現され、やがて朗々たる爆発がやってきました。テンポ設定はあくまで入念に慌てず、堂々たる威容。朗々とした詠嘆も重苦しくならず、さっぱりとした響きに優しい風情、陰影メリハリも充分、情感は立派に高揚してスケール大きく渾身の力込めて、最後まで走らず、充分な間も効果的なクライマックスに仕上げました。(22:33)・・・と、まあ、ぐずぐずと書いてきたけれど、正直なところ今一歩響きの艶、厚み、圧巻のパワーは欲しいところ。入魂の弦に金管炸裂! でもホルンの音色が素直過ぎ、ウキウキするような躍動感に足りぬかも。静謐ていねいな仕上げ、ひとつの立派な個性として受け止めたものです。

(2023年4月15日)

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written by wabisuke hayashi