Bruchkner 交響曲第7番ホ長調
(ジュゼッペ・シノーポリ/シュターツカペレ・ドレスデン)


DG Bruchkner

交響曲第7番ホ長調 (ノヴァーク版)

ジュゼッペ・シノーポリ/シュターツカペレ・ドレスデン

DG 435 786-2 1991年録音

 Giuseppe Sinopoli(1946-2001)残念やなぁ、年齢的には現在でも現役だったはずが、医者の不養生でした。ドレスデンとはBruckner主要6曲の録音が残っていて、Mahlerほど話題になっておりません。ワタシだって音源入手以来3年放置、ちょうどその頃(遅れ馳せ)チェリビダッケ微速前進演奏に痺れて、シノーポリにたどりつけなかったのが正直なところ。微妙に揺れ動いて歌うMahlerが念頭にあると、先入観として彼のBrucknerには違和感を予想したものです。

 日本のレコードCD拝聴に大きな影響を与えた某大物評論家U氏の影響により、かつてカール・シューリヒト/ハーグ・フィル(1964年)が称揚され、ミーハー+ド・シロウトなワタシも若い頃中古レコードを入手して、それが作品との出会い〜は、結果大失敗。やはり音質は大事ですよ、こちら”心眼で聴く”ような技量はありませんから。ワリと今でも好きなさっぱり演奏だけど、あまりにマニアック過ぎますよ。高音質CD化されたらしいけどオーディオ通の方、いかがでしょうか。閑話休題(それはさておき)

 重い腰を上げてようやく拝聴したシノーポリは、Mahlerのうねうねとした歌を想像したら拍子抜けするくらい素直、要らぬ飾り少なく、細部ニュアンスに充ちた美しくもデリカシー演奏でした。メリハリもある。テンポは中庸、心持ち早めに感じるのはチェリビダッケの余韻でしょう。(評判イマイチなベルリン・フィル1992年ライヴに打ちのめされた)聖ルカ教会の豊かな残響、録音にも不満はない。オーケストラは涼やかなサウンド、ブルー系のドレスデンですから。かなりボリュームを上げても、響きに濁りなし。対向配置採用して弦の旋律の解像度高く、ワーグナー・チューバの音色もしっかり聴き取れます。

 でもね

 それが胸に心底ずん!と響くかというと、必ずしもそうでもない。聴き手の琴線をたっぷり震わせるかどうかは微妙・・・かも。間違いなく美しいんだけどなぁ、どうしてかなぁ。硬質なヴァント辺りがノーミソに焼き付いているのか。第1楽章「Allegro Moderato」。冒頭、ゆったりとした穏健な主題は夢のように美しい。神経質なほど繊細な弦に柔らかい金管が控え目に絡んで、サウンドは常に澄んだ響きを維持して、金管の大爆発、その前のタメも抑制が効いて(大音響でも)おとなしく素直過ぎ。シノーポリだから(もっと歌を!)といった期待から外れて至極まともな完成度であります。悪くないんだけどなぁ。

 この作品はBrucknerの作品中屈指の美しさを誇って、第2楽章「Adagio」(Sehr feierlich und sehr langsam 非常に荘厳に、そして非常にゆっくりと)こそ白眉。息の長い旋律が延々と歌われて、冒頭遣る瀬なくも美しい主題は、弦+ワーグナーチューバですか?(違ったら教えて下さい。あちこち存在を主張してコラール風荘厳な深みを付加)ここでも弦の扱いはとても抑制気味、もともと金管をぱんぱかデーハーに目立たせるオーケストラじゃないから、全体バランスとしてとても穏健、そっと囁くような微妙にヤワな歌に充ちて、ここはかなり上出来。但し、情感次々と押し寄せるような、そんな演奏じゃない。基本姿勢はクールなものでしょう。個人的には盛大なる打楽器の入らぬ「ハース版」がシンプルで好き。シノーポリはクライマックスへの持って行き方は上手いもんでっせ。ラストの余韻もなんとも感慨深いもの。

 Brucknerのキモは「Scherzo」(ここでは第3楽章)。優しく柔らかいトランペットによる主題提示、それが決然と豪放に鳴り響くトゥッティへ、一気に持っていく語り口の上手さ、リズミカルなノリ、強弱メリハリ、ニュアンスにたっぷり充ちて、中間部の洗練され静かな曲想との対比も見事。足りないのは虚飾のない朴訥さ、ゴリゴリ粗野素朴なテイストか。

 第4楽章「Finale」(Bewegt, doch nicht schnell 運動的に、あまり速くなく)。ここけっこう難しい楽章と思うんです。第3楽章迄快く聴いていても、妙に雰囲気変わって、あっけらかんと緊張感が途切れたり、まとまりがつかなかったり。ここではシノーポリはバランスよく、みごとに締め括りました。どんなに音量が大きなところ、フクザツに声部が絡みあうところでも響きが濁らない。Brucknerはオーケストラの響きそのものを聴く作品、そう思えば、シュターツカペレ・ドレスデンは充分美しい(とくに木管)というべきでしょう。ちょいと”ヤワい”けど。

(2016年5月22日)

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written by wabisuke hayashi