Bruckner 交響曲第9番ニ短調
(若杉 弘/ザールブリュッケン放送交響楽団)


ARTENOVA 74321 340442 中古500円にて入手 Bruckner

交響曲第9番ニ短調 「愛する神に捧ぐ」(Dem lieben Gott)

若杉 弘/ザールブリュッケン放送交響楽団

ARTENOVA 74321 65414 2 1994年録音  中古500円にて入手

 若杉さん2009年逝去。享年74歳、もったいないなぁ。もっとエエ音楽を聴かせていただきたかった。

 彼はかなり早い時期から独逸で活躍していて、録音もけっこうたくさんありました。この音源は現役ですか?ARTENOVAがスクロヴァチェフスキのBrucknerを次々と発売したとき、何故か第2番と第9番は若杉さんの音源だったんです。後、スクロヴァチェフスキは全集となり、経緯はようわからんがOEHMSに発売は遷り、若杉さんの音源はどこにいったのやら?そもそもARTENOVAって現役なのか。最近、世情に疎いもので・・・閑話休題(それはさておき)

 先日、ギュンター・ヴァントによる2000年ライヴを(もちろんCDにて)拝聴いたしました。壮絶!という言葉が相応しい凄まじい感動有。それに対して若杉盤のなんという清涼でクール、すっきりとした響きなのでしょう。ザールブリュッケン放送交響楽団のサウンドそのものが素直で、強靭なる個性を主張しないオーケストラなのかも知れません。アンサンブルは精緻であり、テンションが低いわけでもない。

 まるで悟り、解脱したように脂っけがない。爽やかな涼風吹き抜けるような演奏といえばそうなんだけど、この繊細なる薄味を堪能するには聴き手の煩悩が多すぎました。第1楽章は平和な凪の浜辺であり、昇り来る朝日も日本風めでたい初日の出風情であります。緊張より安らぎが先に立つ感じ。第2楽章はしっかりとしたリズムを刻むんだけれど、あくまで抑制が利いていて熱狂しない、響きを濁すほどに絶叫しない。

 安らぎと安寧に充ちた第3楽章「アダージョ」は、ワーグナー・チューバのコラール風荘厳な爆発にて中断されるが、それさえ抑制が主眼でショッキングなものではない。若杉さんは慈しむように、ていねい緻密に音楽を仕上げていくが、やはり淡彩薄味なんです。ちゃんと力感もあってけっして悪い演奏じゃないが、今流行の”草食系Bruckner”と呼ぶべきか。Brucknerはオーケストラの技量がモロに出てしまうから、ザールブリュッケン放響の個性が作品に似合っていないということかも?

 とても美しく、デリカシーに富んだ演奏に間違いはないが、いまひとつ説得力を欠く感じ。いろいろな方々のご意見を拝聴したいものです。

(2010年2月5日)

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written by wabisuke hayashi