Bruckner 交響曲第8番ハ短調(ノヴァーク版)
(オイゲン・ヨッフム/ベルリン・フィルハーモニー)


DG 429 079-2 9枚組 総経費込5,228円にてオークション入手 Bruckner

交響曲第8番ハ短調(ノヴァーク版)

オイゲン・ヨッフム/ベルリン・フィルハーモニー

DG 429 079-2 9枚組 1964年録音  総経費込5,228円にてオークション入手

 浪漫派の交響曲を苦手としているけれど、Bruckner/Mahler は例外的に日常聴きする作品であります。子供の頃、LP時代には贅沢品だった”全集”が安価にて入手できるようになった、という環境の変化、条件もあるでしょう。Mahler は順調に聴取の幅を広げているのに、Brucknerのほうはちょっと停滞気味〜あれほど入れ込んで聴いていたゲオルグ・ティントナー全集は2度購入し、評価揺れ動いて結局2度処分いたしました。オイゲン・ヨッフムのドレスデン全集も同様の過ち(2度購入そして処分)繰り返し、音質がどうしても気になった、ということです。罰当たりだね。エリアフ・インバル全集も既に棚中には存在しておりません。

 若い世代の新しい演奏も登場して、新鮮な感動を得たものです。久々、オイゲン・ヨッフムの旧全集をしっかり聴こう・・・終楽章盤面に傷が入ってちゃんと再生できない!入手4年、それに気づかなかったのか?それともうっかり取り落としたのかも。パソコンでデータ取り出したら、無事問題なく抽出できてCDRに焼き込み、一件落着。なにやってんだか。閑話休題(それはさておき)旧全集は第2/3/5/6番がバイエルン放送交響楽団の担当であり、ワタシはそちらの方がサウンドに暖かみがあって、オーケストラとの意思疎通は上手くいっていると感じます。相変わらず「版」の問題には疎いワタシ。

 1964年といえば、カラヤンがBeethoven 交響曲全集を意欲満々に録音していた頃。セクシー官能的緻密なアンサンブルを誇るベルリン・フィルとは、ずいぶんと印象が異なります。

ベルリン・フィルはあちこち美しい音色を響かせ(オーボエ、フルート、そしてホルン)、速めのテンポ、質実で飾り、要らぬスケールの膨らませも、貫禄も存在しない。これが”カラヤンのベルリン・フィル?”といった疑念が出るくらい、色気もありません。あちこち急いたアッチェランドも落ち着きが感じられず、録音も良好とは思えない・・・
これは先日第1/2楽章のみ(体調最悪にて/なんせ猛暑続きだったし)聴いた印象であります。

 オイゲン・ヨッフムって、けっこう煽ったり、盛り上げる場面では必ずテンポ・アップするようなイメージがあって、悠揚迫らざる巨魁なスケール演奏ではないと思います。第3楽章「アダージョ」を除き、どこも速めのテンポ、アンサンブルの仕上げは意外と粗野、テンポの変化、間の取り方は時に恣意的、落ち着きが感じられない・・・世評もそんな感じだし、自分もそのように聴いたけれど、数度繰り返し聴き、やがて・・・印象を変えました。音質にも問題なし。

 当時、オイゲン・ヨッフム62歳、まだまだ意気盛んな頃の録音。第1楽章「アレグロ」はものものしい荘厳さではなく、速めのテンポ、ぐいぐいとした前のめりの姿勢で壮絶な迫力有。つまり盤石落ち着き貫禄方面ではない。オーケストラの威力は充分ななんだけど、上記言及したように艶々の洗練サウンドではありません。第2楽章「スケルツォ」にも推進力+響きの厚みに不足はなく、筋肉質の躍動を感じさせて若々しい〜ま、Brucknerの白眉は「スケルツォ」だから、ここの迫力こそキモなんです。

 でも、個人的嗜好では華麗なる加齢を重ねたせいか、すっかり緩徐楽章がお気に入りに。第3楽章「アダージョ」はここでも26分以上掛かる長大なる静謐であります。生体験でも、ここが一番陶酔の至福だったなぁ。ここでのテンポ設定は他で聴くものとそう変わらず、前のめり云々といった感触はそうありません。ほとんど宗教的安寧を感じさせて、絶品。そして、生真面目。洗練されているが甘さ皆無。静謐部分で線が明確なのはオーケストラの力量が高いからでしょう。サビでちょっぴり煽る、走る、といったところはあるけれど、それはヴィヴィッドなテンションと理解しましょう。

 終楽章はカッコ良いリズムの爆発、金管の咆哮、弦はたっぷり、かつ緊張感溢れる歌を聴かせてベルリン・フィルは絶好調でしょう。フルトヴェングラーのBrucknerは賛否分かれると思うが、あれは魔術のような揺れ動きが天才的な効果を生み出していると聴きました。おそらくは既にあちこちで言及されていると思うが、ヨッフムのテンポの揺れが唐突で有機的ではない感じはあると思います。あちこち美しい部分を披瀝しつつ、テンポ設定の変化は聴き手の集中力を少々じゃまするかも・・・と勝手なことを思ったものです。ラスト、渾身の”煽り”はいかにも彼らしい。

 名曲。

(2010年9月25日)

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written by wabisuke hayashi