Bruch ヴァイオリン協奏曲第1番ト短調 作品26/
Goldmark ヴァイオリン協奏曲イ短調 作品28/
Sibelius ヴァイオリン協奏曲ニ短調 作品47
(ルッジェーロ・リッチ(v))


VOX CD5X3611 Bruch

ヴァイオリン協奏曲第1番ト短調 作品26

Goldmark

ヴァイオリン協奏曲イ短調 作品28*

Sibelius

ヴァイオリン協奏曲ニ短調 作品47

ルッジェーロ・リッチ(v)/マティアス・クンチュ/ボーフム交響楽団
*ルイ・ド・フロマン/ルクセンブルク放送管弦楽団

VOX CD5X3611(5枚組)

 英DECCAに残された一連の録音は概ね1960年前後、こちらオーケストラの名前や当時の指揮者との関係で1970年代の録音と類推されます。リンク先の5枚組は内容価格とも看過できぬ素晴らしき水準、しかし日本では話題になりません。人気ないっすねぇ、欧米ではずいぶんと尊敬されているみたいです。1958年録音のSibelius 録音を聴く機会があって、ま、馴染みの小味な縮緬ヴィヴラートに間違いはないけれど、妙にさっくりと演奏された印象があって、あまり知られていない再録音のほうがよかったんじゃないの?棚中より久々CDを引っ張り出しました。この一枚、収録が80分を超える大盛り収録盤也。

 Bruch 絶品!昔馴染みのオールド・ファン的嗜好にて申し訳ないが、ヤッシャ・ハイフェッツの鉄板演奏(1962年)が存在して、そちら音質も極上。タイプとしてはリッチは似ていて、快速、スムースな技巧前提として、こちらやや小味、節回しが少々クサい(クールに洗練されない)のが個性であります。前奏曲はたっぷりと浪漫に充ちて存分に歌われるが、細かいヴィヴラートと微妙にアクのある表現が決まっております。第2楽章「アダージョ」は染み渡るような哀切の表情絶品であり、終楽章は一気呵成に走り抜けて爽快。音質もオーケストラも意外なほど好演。

 Goldmarkはオーケストラも音質も少々ぼんやりとして、必ずしも絶好調とは言えませんね。浪漫と哀愁に充ちた美しい旋律連続!さらさら淡々と進めており、基本はやや前のめり、優れた技巧にて淡泊、線の細い表現でしょう。ま、相変わらず細部小味の効いた節回しは健在ながら、第1楽章「アレグロ・モデラート」は少々ダレ気味か。第2楽章「エア・アンダンテ」はBruch 同様微妙なクセがみごとに噛み合って絶品の小節であります。終楽章「モデラート」は妙に大人しく感じるのは、おそらく音質印象なのでしょう。全般にそんな感じですから。

 さて、問題のSibelius 。これはBruch と同じバックなのに、ぼわんと不思議な残響と広がりのあるクセのある音質。まるで疑似ステレオみたい。これは第1楽章からラプソディックなテイスト満開、情感に充ちて表情豊かであります。洗練とか怜悧とか、そんなものとは無縁に燃えております。第2楽章「アダージョ・ディ・モルト」・・・いずれルッジェーロ・リッチは緩徐楽章になると真価発揮して、しっかり、存分に歌うんです。ちょっとクサいがこれも絶品!終楽章も速めのテンポで細部迄しっかり描き込んで、もの凄いテクニック全開の披瀝、凄い緊張感推進力だけど、品がない、もっと清潔な美音を!(これも充分美しいと思うんだけれど)そんなふうに感じる方はいるでしょう、きっと。

 まだ、即断は禁物ながらやはり英DECCA録音よりこちらのほうがオモロい、そんな手応えに間違いなし。

(2012年8月5日)


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written by wabisuke hayashi