Bruckner 交響曲第7番ホ長調
(ワルター/コロムビア交響楽団)
Bruckner
交響曲第7番ホ長調
ワルター/コロムビア交響楽団
SONY RET 001 1961年録音 中古500円にて購入
著名なる音源のはずだけれど、ワタシは初耳でした。我らがSONYはんは”思い切った廉価盤”を系統的に出して下さらないから、なかなか聴けない著名録音もけっこうあります。もしかしたら、ここ最近やや忘れ去られ気味の音源かも知れません。Mahler ともかく、彼のBrucknerは世間の話題から外れているような・・・?ワルター85歳亡くなる前年の録音であり、音質は驚くべき程良好であります。
音質ばかりではなく、コロムビア交響楽団(ロサンジェルスの音楽家を集めた録音用オーケストラ、らしい)が素晴らしい技量で、たっぷりと甘美なサウンドがよく鳴って驚き。時に弦がややポルタメント風のひきずりを見せ、金管も思い切って歌ってワルターの意向に応えております。いわゆる”アメリカの音”的抵抗違和感はありませんね。低音がよく響くのはワルターの好みであって、録音技量の成果かも知れません。版のことはようワカらんが、第2楽章「アダージョ」のピークには派手派手しい打楽器が入らない。ハース版ですか?
日本で大人気の朝比奈はごつごつした無骨なる、荒削りなスケールを誇り、ヴァントは厳しい集中力と構築感でBrucknerを聴かせます。ゲオルグ・ティントナーは一見ヘロヘロのアンサンブルから生まれる、癒し系素朴な味わいが日本のBrucknerファンに愛されたものです。このBrucknerはワルター晩年の豊満で優しい表情に充ちたもので、優雅でシミジミと歌って、他では味わえない個性的な(弱すぎるくらいの)演奏だと思います。耳あたりはとてもやわらか。繊細。
第1楽章は、物足りなさを感じさせるくらい、ていねいに、しっとり奥床しい優しさを湛えて始まりました。テンポあくまで中庸であり、オーケストラの響きはシミジミと繊細で、勇壮スケールを感じさせるものではないが、得難い美しさ。そのままの味わいで第2楽章「アダージョ」は、短い吐息が延々と続くような、微細なニュアンスで味付けてされております。コロムビア響の弦にはこんなワザがあったのか。薄味ではないが、濃厚雄弁ともいえない。もちろん強靱さとは無縁。ワーグナー・チューバの響きは官能的ですね。
第3楽章「スケルツォ」・・・金管はよく鳴っているが、豪放大爆発ではありません。威圧感がない。(トロンボーンの異様な激甘サウンドは聴きもの)中間部は、思い切ってテンポも落として纏綿と、シミジミ、そっと歌ってまさに浪漫的。これほど優雅な対比には滅多に出会えないでしょう。まとまりを付けるのが少々難しい最終楽章は、ムリヤリなテンポ変化や煽りではなく、じわじわ粛々と優雅な姿勢を崩さずにクライマックスを形作りました。
やはり、最晩年の録音は全体に枯れ気味でしょうか。しかし、瑞々しさは存分に存在して、世評別にして、ワタシは作品の個性と、優雅な演奏スタイルは相性よろしいと思います。時に、ココロ優しい音楽が欲しくなったときに、そっと聴きたい演奏でした。
(2006年8月4日)