Bruckner 交響曲第4/2番
(フィルハーモニア・スラヴォニカ)


PILZ	449261-2 Bruckner

交響曲第4番 変ホ長調

ヘンリー・アドルフ/フィルハーモニア・スラヴォニカ
(ホルヴァート/オーストリア放送交響楽団)

交響曲第2番ハ短調

リッツィオ/フィルハーモニア・スラヴォニカ(実体不明)

PILZ 449261-2 録音年不明 2枚組500円で購入(中古屋さんにて)

 2004年再確認。大きなキッカケはティントナー全集への評価の揺らぎであり、ショルツ/南ドイツ・フィルハーモニカ(名義)の第5番を再評価したことに続くものです。「いったい自分はなにを聴いていたんだろう?」というくらい、印象が変わっておりますね。いや恥ずかしい。

 まずリッツィオ名義の第2番ハ短調より。ザナテルリ/南ドイツ・フィル名義盤(Point)と同一音源ではないか?との説もありました。ハース版とのこと。ネット検索して、ほかの方のサイトを見ると「モノラル録音である」と。なるほど、イヤホンで確認するとそうみたい。音質そのものはワリと良好で、しかも若干の広がりを添付させているから正直気付きませんでした。こんな水準の録音はよくありますもの、左右の分離はともかく。音質の件は、曲が進行するに連れて少々気になってくるかも。

 数年前のワタシの評では「洗練されないドロ臭い響きながら、けっこう熱演」「静謐さと落ちつきには欠けるものの、素朴さは買えます。金管の響きに深さを欠くのはやや致命的」〜ウソ言え!そう、まったく見当違い。「ヴァイオリンが刺激的で全体に融け合わない」〜これもちゃいますね。おそらくモノラル録音に人工的な広がりを付加すると感じられる金属臭だと思います。木管も金管も達者で、それなりの技量が感じられます。

 第1楽章はスッキリとして見通しの良いものだし、第2楽章は、静謐でよく諄々とした説得力がある。ところがスケルツォに元気がない。ノリが足りない。響きが濁って薄い。Brucknerでは一番大切な楽章ですからね、ココ、残念でした。終楽章に向けて、聴き手(ワタシ)の集中力が続かない。なんか印象がバラバラで、期待すべきBrucknerの大団円がやってきません。いつのまにか終わった、という感じ。

 結論。どこの誰の演奏かは知らぬが、無理して求めるべき演奏ではありません。

**

 ホルヴァート(アドルフ名義)の「ロマンティック」は?これはもう音質が全然ちゃいます!豊かな残響と奥行き〜Brucknerに求められるべき条件が存在します。低音が弱いのは気にならんでもないが、このくらいならまず問題ないでしょ。演奏は以前の印象とまったく変わらず。「スッキリとしたアンサンブル、柔らかくてやや軽量、クセのないオーケストラの響きはまったくのホルヴァート節(+オーストリア放響)」〜その通り。

 威圧感やら迫力、重量感はないけれど、ていねいなるアンサンブルの仕上げは上々です。爽やかな草原の風景が広がります。第2楽章第3楽章と進んでもその印象は変わらない。終楽章迄来て考えたが、この完成度には文句はないし、金管もティンパニも頑張って燃えてもいるけれど、やや淡々とし過ぎでもっとハジけても・・・いえいえ、とても美しい演奏です。間違いない!ラストは深呼吸するような勇壮なスケールもありました。

 弦もホルンも素直で良く溶け合ってますよ。こんな駅売りホームセンター系廉価盤、しかも偽名まで使われなかったら、もっとちゃんと評価をされたかも知れません。そんなこんな考えつつ、楽しんだ第4番でした。(2004年9月24日)


 記憶によると1993年頃に一度購入して「ん、これはヘロヘロ」と判断、「アドルフはとんだ食わせものだぜ」と判断したワタシ。さっさと売り払いました。「演奏を名前で判断しない」とエラそうに云っておきながら、最近「この4番はじつはホルヴァート/オーストリア放響の演奏だよ」との情報におおいに動揺。

 「ワタシの耳は腐っておったのか」の疑念は日々膨らむばかり、とうとう中古屋さんで安く売っていたので、思い切って6年ぶりに買ってきました。ま、言い訳ですけど、CDプレーヤーも少々マシなのに変えてますし、アンプもいまや真空管(友人からプレゼントの小さいタダアンプ)。印象もだいぶ変わるかもしれない。

 え〜、まず第2番から。

 リッツィオも(このオーケストラも)もちろん変名。ショルツ/南ドイツ・フィルの第5番によく似た演奏です。どちらも真の演奏家はわからないけど(きっと同じ演奏家と思う。一度個人輸入でザナテルリ/南ドイツ・フィルのPOINT盤を買ったことがあるけれど、もう処分済。これも同じだったのかなぁ)、洗練されないドロ臭い響きながら、けっこう熱演。

 録音のせいもあるのでしょうか、ヴァイオリンが刺激的で全体に融け合わない。木管が意外と暖かい音色だけれど、内声部が聴こえにくいのは残念。スケルツォには力が入りますが、リズムの切れやや不足気味か。日本のオーケストラみたいに後半にいくほどスタミナが切れることはないけれど(あたりまえ?スタジオ録音だから)、構成感とかスケールは弱い。一生懸命な雰囲気は有。
 全体に静謐さと落ちつきには欠けるものの、素朴さは買えます。金管の響きに深さを欠くのはやや致命的ながら、CDを売り飛ばすようなクサレ演奏ではありません。

 録音は60年代くらいじゃないのかな。音の肌理はかなり粗くって、やや金属的、全体に濁りぎみ。

 問題のアドルフ(実体ホルヴァート)さんによる「ロマンティック」。

 適度な残響もあって、第2番に比べてずっと音の状態は良好。最新録音のような瑞々しさには欠けるけれど、細部までよく聴こえてバランスも悪くない。(いつものワタシ流録音の甘い評価)

 スッキリとしたアンサンブル、柔らかくてやや軽量、クセのないオーケストラの響きはまったくのホルヴァート節(+オーストリア放響)じゃないですか。(これはその後、たくさんホルヴァートさんを聴いたから云えるコメント)

 この曲のキモはもちろんホルンですよね。冒頭の(もしくは最終楽章冒頭の)息の長いソロ、スケルツォにおける広い草原の狩りの合図。フツウです。ベーム/ウィーン・フィルにおける名手ベルガーのウィンナ・ホルンみたいな、特別な個性じゃありません。でも、悪くありませんね。気持ちヨロシ。

 弦も、木管もよく歌って、細部までの仕上げもていねい。アンサンブルの水準も高い。練り上げられた、美しい響き。耳をつんざくような金管ではなくて、抑制された上品な強奏。
 「クセのない」というのは、じつは「コクのない」ことにも一脈通じていて、ホルンを例に挙げましたけど、どのパートもちょっと面白味に欠けるかも。ホルヴァート自身も、ライヴでの燃えるような指揮ぶりはここでは見られません。(それでも最終楽章の感興に実力をかいま見ることは可能)

 少々、個性不足だけど一流の演奏でした。・・・・・・・で、結論的には「ワタシの耳は腐」っておりました。かつての過ちを認めます。懺悔します。
 しかも、PILZ師匠の安田様には「ちゃんとホルヴァート/オーストリア放響表記のCDを買いなさい」と指導されたのに、わざわざインチキ表示のCDを買ってしまう罰当たり。

 この2枚組シリーズ、ここ一年くらい朝日新聞系出版物に通販の宣伝が出ていて、それなりに売ったはず。メール情報によると首都圏のレコード屋さんにも激安で出ていたそうで、そうなると当然中古が出回るはず・・・・・・・という、予想通りに大阪の中古屋さんで見かけました。
 ま、2枚@500なら博打してもいいでしょ。(1999年)


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