Brahms チェロ・ソナタ第1番ホ短調 作品38/第2番ヘ長調 作品99
(グレゴール・ピアティゴルスキー(vc)/アルトゥール・ルービンシュタイン(p))


RCA 88697760992/5 Brahms

チェロ・ソナタ第1番ホ短調 作品38
チェロ・ソナタ第2番ヘ長調 作品99

グレゴール・ピアティゴルスキー(vc)/アルトゥール・ルービンシュタイン(p)

RCA 88697760992/5  1966年録音

 たった今、6月に入って梅雨時だけど、こんな内省的な作品は秋冬、人生だって晩秋が相応しそうな渋い作品でしょう。Brahmsの室内楽に名曲ズラリ揃って、例えばクラリネット・ソナタ、ヴィオラ・ソナタ(同じ作品)はずいぶんと以前から聴いていたのに、チェロ・ソナタはあまり聴いていない・・・サイト内検索を掛けると「ヘレ・ヤン・ステゲンガ(vc)/フィリップ・アントルモン(p)(2000年)」拝聴の記録は出現しても記憶雲散霧消・・・(しばらく呻吟してBrilliant60枚ボックスより発掘)。ヴァイオリン・ソナタは作品的にあまり好きじゃないから、もう10年以上聴いていないんです。そろそろ再聴時期かな?

 グレゴール・ピアティゴルスキー(Gregor "Grisha" Piatigorsky/1903-1976)はウクライナ〜ドイツ(戦前のベルリン・フィルの首席)〜アメリカで活躍したチェリスト。RCAにかなりの録音があるけど、最近はちょいと忘れられているかも。ロストロポーヴィチに負けぬスケールと技巧、色気より剛直さが際立つ名手であります。Brahmsに味わい深い録音を多く残したルービンシュタイン、おそらくは当時レーベル所属の縛りが厳しい故の組み合わせと類推するけど、ハイフェッツとの「百万ドル・トリオ」は一世を風靡した由。チェロが主役ということもなく、ピアノと完全に対等平等な作品、そして演奏です。音質は上々。

 Brahmsの交響曲のキモはチェロとホルン、勝手にそう考えていて、彼(か)の荘厳と鬱蒼としたサウンドはそこが基調なのでしょう。

 第1番ホ短調は第1楽章「Allegro ma non troppo」いきなり草臥れ中年オトコの苦々しい想い出、嘆き旋律炸裂!わずかに遠くを見つめる視線も弱々しいけど、足取りはしっかりと力強いもの。第2楽章「Allegretto quasi menuetto」のワルツは重苦しい風情を残しつつ、ここは軽快なリズムに乗って甘美につぶやいて欲しいところ。憂愁はいや増すばかり。中間部の癒やしも、まるで過去の行状に他する愚痴のように寂しげ。第3楽章「Allegro」は、それでもしっかり前を睨みつつ進んでいく、といった風情の開始。主題はBach「フーガの技法」〜コントラプンクトゥス]V引用とのこと(そう云われてようやく気付いた)。悠々としたスケール+(草臥れ中年の)哀愁、ピアティゴルスキーのチェロは渋く質実な音色であります。

 第2番ヘ長調。第1楽章「Allegro vivace」はぐっと晴れやかに、大きな開始。長調の交響曲を思わせる陰影深いスケールで歌います。第2楽章「Adagio Affettuoso」はちょっぴり妖しい骨太ピチカートから、高音を多用した繊細な旋律が素敵です。第3楽章「 Allegro passionato 」はいかにも劇的なスケルツォ、ここでの主役は力強いピアノかも。第4楽章「Allegro Molt」の表情も晴れやか、堂々とした足取りに憂愁な風情も散りばめて多彩でした。

 かなり暗鬱とした風情が勝る第1番ホ短調より、第2番ヘ長調の明るい表情、多彩な変化に好感を持ちました。聴き手も人生の秋を迎えつつあって、Brahmsの室内楽が相応しい頃でしょうか。

(2016年6月12日)

【♪ KechiKechi Classics ♪】

●愉しく、とことん味わって音楽を●
▲To Top Page.▲
written by wabisuke hayashi