Brahms /Mendelssohn ヴァイオリン協奏曲 (ヴァルター・シュナイダーハン)
Brahms
ヴァイオリン協奏曲ニ長調 作品77
Mendelssohn
ヴァイオリン協奏曲ホ短調 作品64
ヴァルター・シュナイダーハン/バンベルク交響楽団/ファン・ルムーテル
TUXEDO MUSIC MNCD-6(VOX原盤?) 1956年録音 550円(中古)で購入
これ、日本語ジャケットになっていて、ごていねいに「ヴァルフガング・シュナイダーハン」との表記。買ってしばらくは、そうだと思っていました。ところが、その道に詳しい方とメールのやりとりをしていたら、「それはヴァルター・シュナイダーハンです」とのこと。えぇ?!とばかり、原語表記を見たら「WALTHER」とのこと。そうか!その後の調査により、ヴォルフガングのお兄さんで、ウィーン響のコン・マスを務めたこともある、やはり名手とのこと。
別にネーム・ヴァリューで音楽は聴くつもりもないが、誤った情報は困りもの。言い訳だけれど、ごていねいに略歴まで載っていて、それはヴォルフガングのものなんです。このCDの日本側担当者も「ヴォルフガング」と信じて売ったことになる。ま、シュナイダーハンの特別なファンでもないが、音色が違いますわな、全然。こちらはもっと素直で、やや線も細い感じ。
これ1956年ながらステレオ録音で、奥行き・厚みには足りないが意外とちゃんとした音質でした。正直、Brahms はシゲティ(最晩年録音)とハイフェッツ、Mendelssohnはハイフェッツのが別格に気に入っていて、ほかいろいろ聴いてみようと食指が伸びない。(あ、それとクライスラーがあったか)エドゥアルド・ファン・ルムーテル(1926-77ベルギー出身)の指揮ぶり、当時のバンベルク響にも少々興味有。
この有名曲に、なにを求めますか?シゲティは掟破りかも知れないが、たどたどしくも衰えた技巧、まったく美しくない音色のなかから、ひたすら真摯で燃えるような情熱を感じます。考えてみれば、Brahms はこの演奏で覚えたはず。ハイフェッツは快速のテンポ、逆に夾雑物を一切感じさせない爽快さで、その存在を主張します。それ以外、古今東西の名手達の演奏は、あまりに平和で物足りなさ過ぎる。
この演奏は、Brahms にあるべき「厚み」に欠けます。もしかして、たんなる録音問題かも知れないが。「ドイツ・ローカル魂」のはずのバンベルク響は、ルムーテルの個性からか、いつになく洗練され、素直な響きになっていました。少々、融通の利かないドン臭さとか、アクを期待したのですが、バランスよい「フツウのそれなりのオーケストラ」になってしまって、ある意味不満でした。
ヴァルターのヴァイオリンもまったく安定していて、まとまりすぎている印象がある。いえいえ、なかなか立派な、ちゃんとした演奏なんですよ。技術的な問題なし、音色の濁りなどどこにもない、最初から最後までキズのない、やさしく、繊細な、威圧感のない美しい演奏。シゲティと目隠し比較をしたら、こちらのほうが支持が多いかも知れません。
Brahms の旋律が楽譜に残っていて、それをどう表現するのかが問題なんです。シゲティは、要所要所のタメ、リキみ、抜き、呼吸があまりに明快な個性で、「嗚呼、この旋律って、じつはこんな意味深さがあったんだなぁ」と発見があちこち。ハイフェッツは逆に、ヴァイオリンもなにも感じさせず、ひたすらそのままの、混じりっけない音楽が聴こえました。
Mendelssohnは、トロトロに甘く、遣る瀬なく演奏して欲しいもの。ヴァルターはここでもBrahms となんら変わりません。多くの音楽ファンは、この一枚で充分に音楽を楽しめるでしょう。こども達がこのCDに出会って、名曲に開眼する可能性も高い。ワタシの不満は、単に聴き手のほんのちょっとしたワガママに過ぎません。(2001年10月26日)
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