Brahms 交響曲第4番ホ短調(ルドルフ・ケンペ/ロイヤル・フィル)


EMI(新星堂)SAN-4 Brahms

交響曲第4番ホ短調 作品98

ルドルフ・ケンペ/ロイヤル・フィルハーモニー

EMI(新星堂)SAN-4 1960年録音

 いろいろ感慨深い一枚は1990年に購入したもの、当時は貴重なる(1,000円でも)廉価盤でした。数回に渡る再録音を重ねているケンペのBrahms だけれど、このロイヤル・フィルとの第4番は単独です。テスタメント10枚組ボックスでしたっけ?その中にも収録されて入手可能な音源。全曲で39分ほどの収録だし、贅沢なものだけれど、聴き手(=ワシ)の集中力を考えたらこれで良いんでしょう。

 この素敵な作品との出会いは、ベイヌム/コンセルトヘボウ管の900円LP。あれから30数年経ちました。たくさん音楽を聴き、CDを山のように買い込んだけれど、果たしてBrahms 交響曲第4番に対する感動は、少しでも深まったんでしょうか。ケンペのバランスの良い、徒に煽らない表現を聴いていると、「嗚呼、多くの無駄を費やしてしまった。手許の同作品のCDは、ほかすべて処分しようか・・・」そんな思いも、ふと脳裏をかすめました。これ以上、ほかに何を聴くべきなんだろう・・・いえ、聴くべき集中力やら、感性が残っているんだろうか?

 このロイヤル・フィルはまだ、ビーチャム名残の時期でしょう。清涼で、淡泊な響きで鳴っております。もともとケンペは、隈取りのはっきりとした爆演系ではない(ウワサによるとライヴでは燃える!とのことだけれど)でしょうし、特別にあっと驚くような仕掛けはないんです。粛々淡々として中庸なテンポ、旋律の歌い回しに不足はないし、オーケストラの厚みやらメリハリ、チカラ強さにも不足はない。

 ”立派で勇壮な”音楽が苦手なんですよ。さらさらと儚かったり、剽軽でユーモラス、静かでキラキラ輝いている、そんな音楽が好き。だからBEETHOVENBRAHMS辺りの交響曲、いえいえ浪漫派付近の交響曲もほとんど「ちょっと勘弁してね」と感じちゃう罰当たり者!であることは、千度このサイトで書きました。(但し、MahlerBrucknerを除く)自分にとってのBrahms は、やっぱりベイヌム/コンセルトヘボウ管だったのか?

 寂寥と諦めが交差する第1楽章は、やがて詠嘆の昂揚としてクライマックスを迎えました。その切迫感にも抑制が感じられて激昂しない。無機質でシンプルなホルンで始まる第2楽章は、やがて微妙に情感の色付けがされるが、温厚なココロの平安が続いてあくまで静か。大騒ぎの第3楽章「スケルツォ」には含羞の抑制があり、最終楽章巨大なる「パッサカーリア変奏曲」も、柄を必要以上にふくらませない。絶叫しない。

 美しいオーケストラだけれど、艶やかな官能とか、中低音に厚みのある響きではない。しかし、清潔であり、威圧の薄い音楽は聴き手を集中へと誘います。ベルリン・フィルもミュンヘン・フィルも各々個性ある魅力を誇るけれど、やや淡彩で暖かいロイヤル・フィルの響きが楽しめる”地味な一枚”でした。

(2005年7月16日)


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written by wabisuke hayashi