「交響曲の誕生」Handel/F.X.Richter/J.Stamitz/Mozart/Haydn
(リチャード・エガー/アカデミー・オブ・エンシェント・ミュージック)
「交響曲の誕生」
Handel
オラトリオ「サウル」からシンフォニア(1738)
F.X.Richter
グランド・シンフォニー 第7番ハ長調(1740頃)
J.Stamitz
シンフォニア 第4番ニ長調(1750頃)
Mozart
交響曲第1番 変ホ長調 K.16(1764)
Haydn
交響曲第49番ヘ短調「受難」(1768)
リチャード・エガー/アカデミー・オブ・エンシェント・ミュージック
AAM RECORD AAM001 2011年録音
Richard Egarr(1963-英国)は2006年よりThe Academy of Ancient Musicの音楽監督。このアルバムはおそらく音楽史的な意味合いのある企画ものなのでしょう。LP時代にヘルマン・シェルヘンが類似の趣旨録音をして、その選曲はまったく別だったとの記憶もおぼろ。基礎的素養のない聴手は、いつも通りシンプルな旋律サウンドを堪能するのみ。1970年辺りから、例えばアーノンクールの過激なリズムとデフォルメした表現の古楽器とは様子が違って、マイルド清潔洗練され落ち着いたサウンドが聴かれます。自主録音レーベルか。
Handelのシンフォニアは躍動する急緩急緩、4楽章は馴染みの交響曲の萌芽を感じさせる構成、編成は弦楽器+オーボエ2本か?「サウル」原曲ではトローンボーンとかティンパニが入ったはずだけど、ここではイメージとして馴染みの合奏協奏曲風でした。第1楽章「Allegro」は明るくも闊達(3:56)、第2楽章「Larghetto」はしっとりと暗く(2:08)、第3楽章は「Allegro」(2:43)は軽妙にオーボエ・ソロがノリノリ、第4楽章「Andante Larghetto」(2:04)は落ち着いた風情に堂々として、優雅な締め括りとなります。原曲をちゃんと聴いていないので、どの部分なのか、まとめて演奏されるものか、寄せ集めなのか理解しておりません。メヌエットももちろんスケルツォもない交響曲。
Franz Xaver Richter(フランツ・クサーヴァー・リヒター 1709-1789)はモラヴィア出身のマンハイム楽派の作曲家。Mozartもこの流れに位置するらしい。Wikiによると交響曲は70曲!なにが”Grande”なのかようワカラん、弦楽合奏による交響曲となります。しっかり地に足を付けて表情豊かに推進力のある第1楽章「Allegro」(6:46)ほの暗く、深刻な風情漂う第2楽章「Andante」(3:38)、そして晴れやかな舞曲である第3楽章「Allegro」(3:03)にて締め括り。すっかり古典的風情だけど、後の完成された交響曲イメージからすると”第4楽章が足りない”といった感想となります。
Johann Stamitz(ヨハン・シュターミッツ 1717-1757)はボヘミア出身、音楽一族みたいで息子のカール(1745-1801)も著名でした。この人もマンハイム宮廷楽団の楽長さん。弦楽のみの作品、第1楽章「Prest」は細かい快速音形が技巧的、わずか10年ほどですっかり音楽は”進んでいる”手応えもあります。(4:21)第2楽章「Andante」は淡々と歩む寂しげな緩徐楽章(4:46)第3楽章「Prest」は演奏個性か、おとなしい優雅な締め括りとなりました。(2:53)
LP時代はなかなか入手できず、CD時代に至って”マンハイム楽派”は随分聴いて、意外とお気に入り。色気の足りぬ端正なMozartみたいな印象でした。そして、いよいよ自分の縄張りの世界へ。Mozart 交響曲第1番 変ホ長調 K.16は14歳の作、編成は弦楽4部+オーボエ、ホルン各々2本(+通奏低音が入るらしい)初めての交響曲の印象は栴檀は双葉より芳し。第1楽章「Allegro molt」シンプルながら陰影ある旋律、躍動するリズムと色彩が天才の技でしょう。(4:39)第2楽章「Andante」には早くもジュピター音形が出現し、ホルンとオーボエの掛け合い繰り返しは効果的。ここではホルンに装飾音が付いております。(3:29)第3楽章「Prest」快活なフィナーレは舞曲、作品の流れとしてはマンハイム楽派の先輩(それとJ.C.Bach)に似ていても、作品の鮮やかな印象は既に図抜けております。(1:44)
Haydn 交響曲第49番ヘ短調「受難」はそのわずか4年後の作。シュトゥルム・ウント・ドラング期に書かれた短調の交響曲のひとつとのこと(Wikiより)編成はMozartに同じ、作品の規模は大きなって時代は更に進みます。第1楽章「Adagio」は敬虔に重々しく、そのデリケートな暗さ、深さ、シンプルながら管楽器の効果も極上な長大なる序奏でした。(9:16)第2楽章「Allegro di molt」がド・シロウトがイメージするところの通常第1楽章、劇的に躍動疾走する細かい音形は、陰影もたっぷりあって熟達した楽章でした。前楽章に続き、オーボエとホルンの掛け合いが美しいもの。(6:41)第3楽章「Minuet and Trio」これも典雅なメヌエットとは一線を画して、妙に寂しげ。トリオは優しく、安寧に充ちております。(5:49)第4楽章「Prest」(3:02)は決然とした疾走に、全曲をあっという間に締め括りました。
勝手な言い種だけど、Haydnも素晴らしいけれど、我らがヴォルフガングに比べるとちょっぴり退屈かな? (2020年7月11日)
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