Beethoven ピアノ、ヴァイオリン、チェロのための協奏曲ハ長調
(ボンドュリヤンスキ(v)ユトキン(vc)イワーノフ(p))


PILZ CD160179 Beethoven

ピアノ、ヴァイオリンとチェロのための協奏曲ハ長調 作品56

ヘルビッヒ(ルッツ)/リュブリャナ放送交響楽団/ボンドュリヤンスキ(v)ユトキン(vc)イワーノフ(p)

15の変奏曲とフーガ変ホ長調 「エロイカ変奏曲」

フーゴ・シュトイラー(p)

PILZ CD160179  録音年不明 たしか680円で購入

 最近PILZ音源はまともに聴いておりません。1990年前後、経済的に貧しいクラシック音楽ファンにとっての福音だった、廉価盤レーベルに対する敬意は失ってしまう罰当たり者め!(>自分のこと)時は移ろい、この作品の「極め付き」と評価されたカラヤン/リヒテル/オイストラフ/ロストロポーヴィチ盤(1969年)を、ワタシは昨年中古500円で入手しました。(+しかもBrahms ダブル・コンチェルト〜セル/オイストラフ/ロストロポーヴィチ付き)だからどうなの?ちゃんと手持ちのCDは聴いてあげないと、ね。

 ワタシのBeethoven お気に入りはヴァイオリン協奏曲、ロマンス、エリーゼのために、「春」くらいかな?ピアノ協奏曲は、先日アルゲリッチの第2番(1980年)で少々目覚めたが、やっぱり長年のお付き合いにも関わらず苦手方面でした。「トリプル・コンチェルト」は好きですよ。最近あまり聴いていなかったけど、もしかして大柄で勇壮、立派に仕上げるものじゃなくて、もっと親密に、こじんまり演っていただくべき作品じゃないのかな、と。

 これ、最近ブルーノ・ヴァイル/インマゼールらの古楽器演奏(1997年)を聴いた影響が大きいと思います。Lutz HerbigはPILZ音源にありがちな幽霊指揮者ではなく、ライプツィヒ生まれの音楽の先生らしい。ソロは「Moskauer Trio」(モスクワ・トリオ?ですか。読めん)と言う団体のメンバー。

 正直、オーケストラは伴奏域を出ない(それでもいいじゃない)が、ソロはあまり各々が出しゃばらず、息を合わせて演奏しております。ま、雄弁方面じゃなく淡々と、それなりにメリハリもあるし、ワタシはとても楽しめました。「おお!怒濤の熱狂感動」みたいなものとは無縁だし、ソロの驚くべき艶と技巧のワザ!とも違うけど、親密で勢いもある。第1楽章では「様子見」みたいな雰囲気だったが、終楽章のノリにはたしかな手応えを感じました。

 「エロイカ変奏曲」は(以下にも書いてあるが)リヒテル/ギレリスでLP時代楽しんでいたんです。正直、交響曲よりこちらの作品の方が好き。Hugo Steurerの様子はわからないけど、ネットで検索するとBeethoven の録音がありますね。オンマイクでそれなりに鮮明な録音、非常に生き生きとした演奏です。正直、かなりバリバリ弾いていて、陰影に少々欠けます。デリカシーとか、ニュアンスはもっと欲しいところ。

 ちょっと硬質な音色でピアノは、まるで古楽器風に色気が少々足りません。でも、この勢いと熱気は買えます。スケールだってちゃんと有。久々にこの作品を楽しんだけど、Bach が脳髄でこだましました。おそらくこのサイト開設初期に掲載して、あまりに杜撰なコメントだったので、いちおう加筆しました。いずれ、目くじら立てて云々するような録音じゃないでしょう。もうどこにも売っていないでしょうし。(2004年6月13日)昔のコメントは(恥ずかしながら)そのまま以下に。


 これもPILZらしい一枚。「Vienna Master Series」という、グレーのくすんだ(冴えない)ジャケットのシリーズ。

 まず、リュブリャナ放響。東欧の政治的・経済的崩壊と日本の円高、CDの台頭とデジタル録音の定着が同時にやってきた1980年代。その後旧ユーゴ紛争の勃発までの短い間に膨大な録音をこなしていたはずです。一部リュブリャナ響という表記のCDもありましたが、おそらく同じ団体でしょう。知りうる限り廉価盤にしか登場しないのも凄い。きっと安くこき使われていたんでしょうね。

 ルッツ・ヘルビッヒという、得体の知れない指揮者もなんとも云えませんね。ギュンター・ヘルビッヒじゃないですよ。いかにもロシア風な名前のソロも楽しみ。

   トリプル・コンチェルトといえば、カラヤンがロシアの巨匠を集めたり、若手を率いたりで有名にした曲ですよね。楽聖ベートーヴェンにしてはヘボい曲との評判ですが、ワタシ個人的にはわかりやすい、素直な旋律で好きですね。とくに第2楽章の親密な雰囲気は素敵。

 演奏はソロもオーケストラも小粒。これといった特別な個性は感じさせませんが、手堅く曲の味わいは表現しているでしょう。ま、輝くような個性的なソロを期待しちゃいけません。。

 リュブリャナのオーケストラは(録音の加減か)引っ込みがち。音の薄さはそう感じさせず、それなりのまとまりのよいアンサンブル。3人のソロはいかにも室内楽向けの誠実さ有。メリハリとか力強さ、個々のソリストの雄弁な歌には少々不足ながら、そんなへんな演奏じゃありません。どことなく洗練されず、雑然とした感じはあります。

 名前を伏せて聴いていれば、無名演奏者とは簡単には気づかないはず。

 「エロイカ変奏曲」はお気に入りの曲で、LP時代はギレリスとリヒテルのロシアの両巨匠の演奏で楽しんでいました。有名な主題の変容に、感情がじょじょに盛り上がっていって、吹き上げるような名曲。

 ピアノはよく鳴っていて、柔らかく味わいがある音色。熱血漢の演奏ぶりで聴いていて興奮します。スケールも大きく、骨太。これは拾いものの正真正銘の名演奏。

 ところで「CDをカッターで傷付けると音がよくなる」という話を聞いたことありませんか。じつは、このCDも「スパッ」とやってみたのですが(もともとすごく硬い音だったので)、久々に取り出したらなんとなく音が丸くなったような????ま、もともとくすんだような録音でしたが。


【♪ KechiKechi Classics ♪】

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written by wabisuke hayashi