Berg ヴァイオリン協奏曲(ルイス・クラスナー(v)/アントン・ウェーベルン/BBC交響楽団)/
叙情組曲(ガリミール弦楽四重奏団1936年)


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ヴァイオリン協奏曲

ルイス・クラスナー(v)/アントン・ウェーベルン/BBC交響楽団(1936年5月1日ライヴ)
叙情組曲(弦楽四重奏版)

ガリミール弦楽四重奏団(1936年)

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 曰く付きの音源であり、1995年PHILIPSよりCD化された歴史的録音。記憶では個人所有のアセテート盤よりの復刻とのことだけれど、想像よりずっと状態はよろしい(.mp3音源より.wavファイル変換自主CDでも/もちろんノイズはかなりあるけれど、奥行き、会場の空気がよくわかる)。このヴァイオリン協奏曲は異様な緊張感に充ち、甘美な退廃と静謐が同居したような作品であって、若い頃からお気に入り作品でした。(たしか出会いはLP時代、ヨゼフ・スーク1963年録音)アントン・ウェーベルンの録音も珍しくて、初演翌年、ほっかほかの現代音楽は恐るべき緻密なアンサンブルで表現されます。BBC響って当時(戦前)からこんなに優秀だったのか、同時代の音楽に熱心だったのか、その成果に驚かされます。

 1990年前後、世間より遅れてCDを購入し始めました。(LPを見捨てるのはその4年後)当時は贅沢品だったし、厳選してぼちぼち集めていった最初のCDがこの作品だったはず。それはグリュミオー/マルケヴィッチ/コンセルトヘボウ(1967年)であり、これが違和感甚だしい洗練と気品に溢れておりました。現在の耳ならわからぬが、あまりに官能の方向が違うのじゃないか、そんな印象を持った記憶有。(幸い、まだ棚中現役なので比較可能、ちゃんと再聴いたしましょう)こちら、ライヴ故、クラスナーのソロは突出せず、全体サウンドに溶け込んで苦渋苦悶の表情が伝わるような切迫感有。音質加減だけではないと思うが、さほどに流麗な美音に非ず、しかし怪しげなヴィヴラートに溢れ、異様な入れ込みと情熱に溢れてアツい!聴き応え有。

 おそらくはギドン・クレーメル辺りから、もっとクール怜悧かつ正確な表現が主流になったんじゃないでしょうか。ノイズにまみれた歴史的録音の毒気に当てられたのか?聴き手を別世界に誘う凄演であります。うかつに日常聴きすべきではない。

 叙情組曲には曰く所以があるらしいが、ド・シロウトは複雑かつ緻密な旋律の絡み合いを堪能すればよろしいでしょう。フェリックス・ガリミールって、ウィーン・フィル〜イスラエル・フィル〜NBC交響楽団(コンマス)といった凄い経歴らしい。若い頃ジュリアード弦楽四重奏団の演奏に歯が立たず、CDは棚中放置したまま作品との再会はずいぶんと久々(管弦楽版は聴いていたけれど)、こちらの演奏は上記ウェーベルンのオーケストラに負けず劣らず緻密で正確、余情を一切付け加えぬ緊張感有。

 時に「20世紀の音楽って、どうしてこんなにひりひり悲痛で苦渋に充ちているのか」と感じることがあります。それは時代が閉塞して、貧困、悲惨な戦争やら虐殺が横行している反映なのでしょう。叙情組曲の苦甘い旋律を聴きながら、そんなことを考えました。こちらも年代を考えれば、充分作品を堪能できる音質水準でした。

(2010年12月24日)

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written by wabisuke hayashi