Beethoven ヴァイオリン協奏曲ニ長調1955年
Brahms ヴァイオリン協奏曲ニ長調1960年
(ナタン・ミルシティン(v))


EMI icon 6986672/8枚組 Beethoven

ヴァイオリン協奏曲ニ長調(ウィリアム・スタインバーグ/ピッツバーグ交響楽団1955年)

Brahms

ヴァイオリン協奏曲ニ長調(アナトール・フィストラーリ/フィルハーモニア管弦楽団1960年)

ナタン・ミルシテイン(v)

EMI icon 6986672/8枚組

 なんせ小学生以来のクラ・ヲタ道、20世紀中LPCDは高価贅沢品だったから、カタログやら雑誌熟読、FMを熱心に拝聴してカセットにエア・チェックしておりました。21世紀は廉価盤の時代に至ってCD価格下落、やがてネット時代がやってきたら・・・新しい録音、珍しい作品を気軽に聴けるようになって”往年の名盤名演奏”の有り難みも薄れる今日このごろ、音楽を愛する皆様いかがお過ごしでしょうか。

 BeethovenBrahmsのヴァイオリン協奏曲は名曲中の王道な名曲、Nathan Milstein (1903ー1992/烏克蘭→亜米利加)は往年の名ヴァイオリニスト、最晩年はメジャーレーベルであるDGに移籍して知名度は上がったけれど、米Capital時代モノラル〜ステレオ初期の録音は日本では人気薄だったと思います。この8枚組はかなり系統的にその時代の音源を集めてくださいました。Beethoven ヴァイオリン・ソナタ第5番ヘ長調「春」/第9番イ長調「クロイツェル」は廉価盤LP時代からの愛聴盤でした。

 上品に凛として背筋の伸びたヴァイオリン、同時代に絶大なる人気を誇ったヤッシャ・ハイフェッツ(Jascha Heifetzas、1901ー1987里都亜尼亜→亜米利加)より上品で好き、そんな方もいらっしゃいます。自分は各々の個性を愛して、この8枚組ボックスを入手した時、なぜBeeやんはモノラル旧録音収録なのか、COLUMBIA SAX 2508エーリヒ・ラインスドルフ/フィルハーモニア管弦楽団(1961年)じゃないのか不思議に感じておりました。

 Beethoven ヴァイオリン協奏曲ニ長調(1806年)はおそらくはヴァイオリン協奏曲の最高峰、そして売れ筋演目。1955年録音、うっかりするとモノラルとは気付かぬ鮮明な音質、バランスや解像度も良好。LP発売当時から話題になっていたそう。第1楽章「Allegro ma non troppo」の開始は密かなティンパニから始まる革新的な趣向、そしてBeeやんらしからぬ?優しく伸びやかな木管の主題が歌って、ティンパニが呼応します。第2主題も登場してスタインバーグのオケはカッチリと明るいサウンドに力強い。満を持して”上品に凛として背筋の伸びた”ミルシテイン登場。ヴィヴラートも有機的に洗練された美色、細部あいまいさのない余裕のテクニック、カデンツァは自作と伺いました。おそらくはスタインバーグに従った中庸なイン・テンポ、爽快さを感じさせるスケールもあります。しっかりソロが歌うところは微妙にテンポを落として効果的でした。(21:15) 

 第2楽章「Larghetto」は変奏曲。ここもBeeやんらしからぬ弱音器付きのヴァイオリンが優しく穏やかに主題を提示、ソロはそれをそっと、デリケートにオブリガートしてオケとの対話絶品!ここ最近華麗なる加齢に嗜好は緩徐楽章、瞑想するようにしっとり歌うヴァイオリンに聴き惚れました。ここは稀代の名旋律、傑作でしょう。スタインバーグとの息もぴたり、タイミングは短めだけどテンポは速く感じません。短いカデンツァを経てアタッカでそのまま終楽章へ・・・(9:16)

 第3楽章「Rondo, Allegro」はシンプル闊達なロンド主題提示はソロの担当。それを喜ばしく受け取るピッツバーグ交響楽団も好調でしょう。ソロはなかなかの技巧を要求されそうなパッセージ連続、ミルシティンは一貫して力みなく、余裕のテクニックと繊細な音色が連続しております。オケとのバランスも良好、カデンツァもラクラクとクリアして、この作品はラストまで優しい風情に充ちておりました。(8:39)

 Brahms ヴァイオリン協奏曲ニ長調(1878年)はBeeやんに負けぬ名曲、先人にインスパイアされつつ二世代超えて作品はフクザツ効果的に、ソロのテクニック要求も上がっております。二管編成なのに立派に響くのはいつものマジック。第1楽章「Allegro ma non troppo」はゆっくり夜が明けていくような爽快な開始、音の広がりはステレオであったことを思い出させました(たしかに前作品はモノラル!)。フィルハーモニア管弦楽団のやわらかい響きも上々。そしてカッコ良い!大見得を切ったようなソロ登場、音録りの思想が違うようでこちら、ソロにも残響は豊かであります。スタインバーグの硬派な集中力に比べて、包容するようなフィストラーリ(実演を拝聴すると)熱気溢れて汗水力演しがちなソロは、いつもどおりの上品な余裕を感じさせました。とくに弱音の惚れ惚れするほどの美音(最終盤)凛として表情豊かにデリケート、大見得を切らぬBrahms。(19:44)

 第2楽章「Adagio」冒頭延々とオーボエが美しく歌う開始。管楽器も参入してヴァイオリン・ソロが登場するまで2:16。シンプルな旋律を魅惑に育てるのがBrahmsの得意技、しっとりと表情豊かに変化する清潔なミルシティン最高、そこにオケも情感たっぷりに絡み合って、その哀愁の風情に感極まりました。ここはステレオ効果も発揮して、最高の見せ場でしょう。(8:54)  第3楽章「Allegro giocoso,ma non troppo vivace - Poco piu presto」はいきなりの激しい力強いジプシーのリズム。晴れやかにクリアな世界に響きは濁りません。優雅な余裕の風情が継続して、テクニックは十全だけど、それが前面に出ない稀有な美しいバランス演奏。フィストラーリも協奏曲の名人ですね。時に作品風情に押されて暑苦しい力演を見掛けるけれど、この人はいつも”上品に凛として背筋の伸びた”風情でした。(7:44)

(2022年1月8日)

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written by wabisuke hayashi