Beethoven 交響曲第4番 変ロ長調/第5番ハ短調
(クリストフ・フォン・ドホナーニ/クリーヴランド管弦楽団)


TELARC Beethoven

交響曲第4番 変ロ長調
交響曲第5番ハ短調

クリストフ・フォン・ドホナーニ/クリーヴランド管弦楽団

TELARC CD-80200 1985-88年録音

 Christoph von Dohnanyi(1929ー独逸)による、最近話題に上らなくなって久しい交響曲全曲録音より。クリーヴランド管弦楽団音楽監督在任は長期1984ー2002年、TELARCの音質云々は、もし納得できなかったら自らのオーディオ環境やチューニングを疑うべきでしょう。

 変ロ長調交響曲のフルートは一本なんですね。編成はほとんどHaydnやMozartの初期作品並みの小ささ、それでも充実した躍動と勢い溢れる名曲。第1楽章「Adagio-Allegro vivace」の神妙な序奏はクールのそのもの、テンポ・アップした主部はかっちりとしてやや堅苦しく素っ気ないほどのクールな縦線の合い方。メリハリ充分ノリノリに疾走して緊張感たっぷり、中庸のテンポにバランスのよろしく、贅肉のない引き締まったサウンドが堪能できます。(11:03)第2楽章「Adagio」も同様、淡々として飾りのない表現はオーケストラの技量しっかり、沸き立つ力感は生真面目に正確。(8:56)第3楽章「Allegro vivace〜」はスケルツォ、アンサンブルに過不足のない筋肉質な力感とテンション有。ここの木管の動きは交響曲第8番ヘ長調と並んでかなり先鋭な旋律と感じます。(5:32)第4楽章「Allegro ma non troppo」はアンサンブルの実力が問われるところ。テンポはやや速め、細かい音形旋律連続に一切の逡巡は見られぬ疾走はみごとに軽快なノリ、清潔なフレージングに、例のファゴットの難所も軽々とクリアして額に汗も感じさせないけど、熱気に不足はありません。(6:19)

 誰でも知っているハ短調交響曲は古典的二管編成。第1楽章「Allegro con brio」は例の冒頭「ジャジャジャ・ジャーン」ぶちかましから、ほとんど力みなくスムース。中庸のテンポに快速に畳み掛けるような勢いがあって、前曲よりクールな集中力表現がいっそう似合っていると感じました。提示部繰り返し。オーケストラはモウレツに上手いけど、金管の華やかな爆発や、大見栄切ったような詠嘆表現もなし、素っ気なくもジミな印象だけど、力強さは充分。(7:02)第2楽章「Andante con moto」緩徐楽章。しっかりとした足取りはリズミカルにアクセントも明快、淡々として特別な詠嘆や飾りのない表現に静謐を感じるほど。(9:11)第3楽章「Allegro」も不気味さを強調しない端正にリズミカルな表現。ホルンや木管は正確に雄弁、トリオの「象のダンス」に重量感はありません。(4:46)第4楽章「Allegro」最終楽章は繰り返しなし。アンサンブルの精度の維持しつつ、速めのテンポに冷静さを失わぬまま熱を徐々に上げていく風情はお見事でした。(8:12)全体にデーハーな金管爆発とか特異なリズムの強調を伴わないから、一見ジミに人気は出ないと思うけれど、じつはトンデモ集中演奏でした。

(2024年9月7日)

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written by wabisuke hayashi